GAPって何だろう? 食の安全は食品に関わるあらゆる産業界に求められている必須条件。農業界でも、農産物の安全基準というべき「GAP認証」へ向けた動きが活発だ。今回の取材先は富良野青果センターの直営農場「北幸農園」(村上洋巨社長)で、認証取得は2011年だから道内でも比較的早い取得だ。記者は「㈱ゆめ・きた・さぽーと」の大滝昇社労士(JGAP指導員)とともに同農園を訪ねた。
文/山田勝芳
青果物販売会社が直接農場の経営に参入
1990年に前社長の馬場保行さんは直接農場経営に乗り出した。きっかけは青果物を予定通り調達できない歯がゆさをいつも感じていたからだ。そうであるならば、「自分らで直接農産物を作ろう」と考えたのはむしろ自然な流れだった。
現社長の村上洋巨さんは前社長の娘さんと結婚。30歳で前職(JR貨物の運転手)をやめて入社し、今年で14年目になる。「札幌・富良野間の貨物列車も運転、実はこの時この会社の青果物も貨物として運んでいました」と、エピソードを語る。
北幸農園の耕作面積は現在220ha、ハウス130棟の経営規模だ。徐々に耕作地を増やしていったから、農地は富良野市、中富良野町、南富良野町の三地区に分散して所在する。農地の標高差(気温3~4℃の差がある)を上手に利用して生産時期を少しずつずらして長期間収穫する独創的な「リレー栽培」に特徴がある。
村上 洋巨 社長
20年目に農業賞を受賞9年前にJGAP取得
農場を興して20年目の2010年、HAL財団(北海道農業企業化研究所)の第6回農業賞のうち最高賞の「神内大賞」を受賞した。節目の年に大賞を受賞できたことは幸運だった。
2011年にはJGAP認証を取得、当時としては農業界でも早い時期の取得だ。JGAPを取ろうとした動機が冒頭のタイトルにあるように「効率的農業をするために取得した」。村上社長が現場に出ていたころ、道具を探してあちこち探し、それでも見つからず結局ホームセンターで新しく購入してしまう。そのうちに探していた道具がひょっこり出てくる。最初から道具の収納場所が決められていたら、こんな無駄はしないで済む。GAPの管理行程が極めて合理的に見えた。
消費者に安全安心な農産物を提供したいとの思いから従前から栽培履歴はやっていた。さらに、GAPの管理行程を利用することで従業員の意思統一や農場ルールが周知され、効率的な農場経営に繋がっていくと考えた。
整理整頓された農場は誰が見ても「美しい」風景を作る。それは生産する側ばかりではなく、消費者がきっと農場に求める要素に違いない。畑から見える十勝連峰、美しい圃場があって初めて映えるものだ。
村上社長は「JGAP認証の取得による特別な代価は求めない。あくまでも社内規範作りに活用している」と語る。従業員もそれにこたえる形で「そうやらなければならない」とルールに基づく行動を考えるようになる。
大手の流通や外食産業はGAP認証の野菜を求める傾向がある。時代の要請は確実に変わってきている。
2020_09_09 | 2020年 9・10月号 GAP認証農場を訪ねて イーハトーブ 連載 | GAP認証, ゆめさぽ, 農業