最近GAPのことばをよく耳にする。食の安全は食品に関わるあらゆる産業界に求められる必須条件。農業界でも農産物の安全基準というべき「GAP認証」へ向けた動きが活発だ。今回の取材先は札幌の農地所有適格法人「株式会社アド・ワン・ファーム」(宮本有也社長)で、異業種から新規参入した法人だ。記者は「株式会社ゆめ・きた・さぽーと」の大滝昇社労士(ASIAGAP指導員)と共に丘珠農場を訪ねた。
文/山田 勝芳
設立10年余りで全国にネットワーク構築
親会社は農業関連施設の設計・施工を主な業務とする『株式会社ホッコウ』で、農業はいわば異業種からの新規参入だ。2008年に札幌市による農地特区制度の利用で農地賃借を受けて農業に本格的に新規参入した、これが第一歩だ。その後2010年に札幌市から認定農業者として承認を受け、農業生産法人として豊浦に約9万㎡の農地を取得した。
現在は農業生産・加工部門を『㈱アド・ワン・ファーム』が担い、流通・販売部門を『㈲アド・ワン』が担っている。店頭ではnanaブランドで販売されているが、今では全国に生産者のネットワークが拡がっている。そして、今回記事として扱うのはアド・ワン・ファームで、グループ会社から独立して法人化になったのは2010年だから、設立から11年と若い企業ながら事業展開の速度は極めて早い。
道内農場は札幌丘珠、長沼、豊浦に農場を有する。2013年にはJFEエンジニアリングと共同出資により「Jファーム苫小牧」を設立し、高糖度トマトやベビーリーフを通年栽培し、同じく「Jファーム札幌」では高糖度トマトを栽培している。2018年には石屋製菓と共同出資で丘珠農場の中に「北海道150年ファーム」を設立、ここでバニラの試験栽培をスタートさせている。このように道内はもちろんのこと、本州でも協力会社との連携のもとで商品を年間通じてむらなく確保し、安定供給につなげている。
2018年には「ASIAGAP Ver・1・0認証」を取得、2020年には「ASIAGAP Ver・2・2認証」を取得した。本紙でこれまでに紹介した農業法人やJAとは成り立ちがかなり異なっている分、同ファームの説明にかなりの行数をあてた。
写真左に農場の専務取締役(農場長)の山口敏樹さん、右に社労士の大滝昇さん。温度、湿度ともコンピュータ管理されたハウス内で小ねぎを水耕栽培で生産している。
収穫から出荷まで一貫した管理システム
GAP認証の取得のきっかけは流通からの要請だった。これまで取材した先々も動機はこれ一番多かった。GAPを目指した結果として作業の効率化を図れて、かつ従業員の意識にも大きな変化がみられるようになった。衛生管理のうち、特に商品への異物混入には細心の注意を払っている。
同ファームの次なる挑戦は、世界基準の「GLOVALGAP」に挑戦すること。特に環境部門はチェック項目が多く、難関だ。世界基準の安全性、労働しやすい職場、行き届いた環境配慮を目指す。
2021_03_19 | 2021年 3・4月号 GAP認証農場を訪ねて イーハトーブ 連載 | GAP認証, ゆめさぽ, 育てる