根室市からどんなイメージが浮かびますか? そう、北方領土返還要求運動の原点の街、水産の街、酪農の街。今の季節はサンマ漁たけなわだ。昭和50年の約4万5千人台をピークに人口は減り続け現在は約2万4千人台。若者で活気づくまちづくりをしようと、人数を増やして協力隊員を大募集している。
ピークの1975年から45年間で2万人減少
かつて北海道は3つの県(札幌・函館・根室)に分かれ、根室県は釧路、紋別、北千島の占守島までの広い地域を行政エリアとしていた。道東における根室は千島航路の要所にあり〝重要都市”と位置付けられていた。また、太平洋とオホーツク海という豊かな漁場に囲まれ、国内有数の水産都市として栄えていた。
戦後、北方四島はソ連(現在はロシア)に占領され、住民も島を追われた。その時から「北方領土返還要求運動」が根室発で始まった。根室市は返還運動を牽引してきたが、戦後77年経っても領土問題は未解決であり、この間の経済的逸失も莫大なものになる。こうして徐々に地域経済が減速し、人口流出も少しずつ始まっていった。
戦前のピークは昭和15年の35,554人で戦後のピークは昭和40年から同50(1975)年の4万5千人台。これ以降は減少傾向にある。直近としては、令和2(2020)年で24,636人、ピーク時から45年間で約2万人減少したことになる。人口減少による市中経済への影響や市民生活に及ぼす影響は大きい。根室市は人口減少に歯止めをと必死に対策を講じている。
ふるさと納税全国3位は食の宝庫の証
人口の減少対策は急務ではあることは、どこの自治体関係者であっても認識していること。しかし、すぐに効果が出る特効薬もあるわけではない。
サンマ漁から帰港した漁船、これからサンマの荷下ろしが始まる。
(2019年に撮影)
地方自治体の政策というより、本来は国がやり遂げる強い意志を持って恒久政策として、人口対策を講じなければならないはず。
所得格差是正、子育て支援策や福祉政策、教育費補助など広範囲に及ぶ。国が本腰を入れなかった分、地方は人口減少で重大危機に直面している。どんな政策であれ、財源がなければ一歩も進まない。
幸い根室市は水産都市らしく豊富な海産物の返礼品に人気が集まり、ふるさと納税の総額は全国1724自治体中(北方領土6村含む)で第3位だ。まさに天の恵みだ。
昨年度は全国各地の77万4千人あまりから約146億円の寄付があった。目には見えないが「北方領土6村」のパワーも根室市の背中を押したのかもしれない。
地域おこし協力隊 人数枠を拡大して大募集
根室市の地域おこし協力隊はこれまで7名だったが、自治体の中でもこの数字は決して多い方ではない。それでも隊員時代の活動や経験を活かして観光業の仕事に就いたり、起業してオンラインショップで菓子販売業を営む元隊員もいた。
観光分野もまだまだ 発展の余地を残しているし、人気の返礼品においても商品開発の可能性は十分残されていると思われる。水産業と酪農が根室市の基幹産業だが、伸びしろの余地はある。
イベントの発想も、かつては「新根室プロレス」が一世を風靡したように発案し発展させることは絶対不可能なことではない(代表者が病でリタイアし解散した)。会社員、漁師、酪農者などアマチュア集団だったが町に賑わいを創出した。
花咲港のサンマ漁船
「無理しない、怪我しない、明日も仕事」がモットーだったといわれる。根室の若者たちが十分楽しめたのではないか。着ぐるみのレスラー、アンドレザ・ジャイアントパンダが出現して、知名度は全国に知れ渡った。
きっとある。きっと実現できる。「根室でしかできないもの、根室だからできることを一緒に見つけていきたい」と、市の担当者は呼びかけている。根室市は新しい発想を活かせる街だ。
納沙布岬の日の出