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特集記事

2022_05_02 | 2022年 5・6月号 特集 | , , | 編集部イーハトーブ

家具からKAGUへ
東川町では新たな家具づくりの挑戦が始まっています!

旭川家具の産地、東川町

北海道の良質な木材を使用し、優れたデザインで知られる旭川家具は、日本五大家具産地のひとつとして海外でも有名です。実はその約30%は東川町で制作されていて、町内には木工を志す若者からこの道数十年のベテランまで、幅広い世代の職人が集結しています。1980年代から大規模な生産工場が姿を消していく一方で、少しずつ小規模な工房が創業し、現在、40近くの家具事業者が点在しています。
東川町には、家具を作るための部品や刃物を扱う業者もいて創業しやすく、また、四季折々美しい自然環境が創作意欲を掻き立てています。

 

これまでの家具産地としての取り組み

東川町では、家具産地ならではの取り組みが長く行われてきました。町に生まれた子供たちを見守り、その居場所をつくる「君の椅子プロジェクト」は広く知られています。このプロジェクトは、旭川大学大学院ゼミのふとした会話から始まりました。東川町は、2006年からこのプロジェクトに参加し、まちに生まれたすべての新しい生命に木の椅子を贈っています。「ようこそ。君の居場所はここにあるよ」
君の椅子には、東川の手作りの椅子を通じて子供の成長を温かく見守りたい、そんな願いが込められています。贈られる椅子は、毎年選定されるデザインを家具職人の手で制作しています。なおこのプロジェクトには、東川町の他に、剣淵町、愛別町、東神楽町、中川町、長野県売木村、福島県葛尾村が参加しています。

 

君の椅子

 

また、町内に4つある小学校では、木製の学童家具に囲まれて学び、唯一の中学校では、入学した生徒に一つひとつ手作りされた名前入り椅子が渡され、卒業式の日に「学びの椅子」としてプレゼントされます。
これ以外にも家具のまち東川町を感じるものが町内にはたくさんあります。

北欧家具の貴重なコレクションである「織田コレクション」。椅子研究家の織田憲嗣氏による、北欧モダンデザイン黄金期といわれる1950~1960年代中心の椅子やテーブル、日用品群のコレクションが展示され、国内外で評価されています。

 

織田コレクション

また、メインストリートの店先に、個性あふれるユニークな「木彫り看板」が多くみられるのも、東川町ならではの景色です。

さらに、東川町で活躍する職人の家具が、町内の公共施設に使われ、テーブルや椅子などが町民に親しまれています。 そして、今後の取り組みは家具から「KAGU」へと進化していきます。「KAGU」とは、人間と世界の間をつなぐものの総称で、従来の家具という概念を拡張したものになります。

 

今年、第2回『「隈研吾 & 東川町」KAGUデザインコンペ』を開催

東川町では、次の時代を担う若者に対して、新しい丁寧な暮らしの提案につながる「KAGU」のデザインを求めるために、建築家の隈研吾氏と共に、『「隈研吾&東川町」KAGUデザインコンペ』を昨年開催しました。昨年の募集テーマは「椅子」。41の国地域から1876件がエントリーし、最終的には36の国地域から834件の作品が提出され、大きな反響を呼びました。
第2回目となる今年の募集テーマは「自由なテーブル」です。参加資格は国内外を問わず学生で30歳以下の方。

今回のテーマに対して、審査委員長の隈研吾氏は、「コロナになって、生活のスタイルが大きく変わりました。東川町からもそんな新しい生活が始まりつつあります。そのような新しい暮らしに対応する自由なテーブルを提案してください」と話し、松岡市郎町長は、「北海道は森林資源に恵まれ、私たちの地域は家具製造の中心的な役割を担っています。今までに培われてきた高い技術力に加え、皆様のデザイン力によって高級な家具づくりを目指しています」と話します。

 

隈研吾氏デザインの椅子

 

隈研吾氏デザインの椅子

 

3月末で募集は締め切りましたが、今後、応募作品の中から入選10作品を選定し、6月に東川町にて公開プレゼンテーションを開催の上、受賞作品を選定する予定です。

 

新しいライフスタイルへの模索

今、コロナ禍にあって、過密な大都市の課題が明らかになると共に、新しいライフスタイルへの模索が始まっています。そのような中で、建築を通して地域の魅力を早くから訴え、地域資源の利用拡大や次世代を担う若者たちの教育への強い関心など、建築の世界から地域デザインを考えようとする建築家隈研吾氏と、豊かで美しい環境に恵まれ家具づくりの盛んな適疎な町、東川町が共に組んで新しい暮らしを考えていきます。

 

家具は町内の公共施設で使用

 

●東川スタイル課 東川スタイル推進室

上川郡東川町北町1丁目1番2号複合交流施設せんとぴゅあⅡ

TEL: 0166-73-4666

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