IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー

IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー
  • 紙面版を見る

特集記事

2022_05_02 | 2022年 5・6月号 特集 道森連 | , , , , , | 編集部イーハトーブ

北海道森林組合連合会(道森連)有末道弘会長にお聞きしました
林業や木材産業の大きな転換期を迎えて

全道にある79の森林組合を束ねる北海道森林組合連合会(道森連)。
昨年6月に新しく就任した有末道弘会長に林業や木材産業のこれからについてお聞きしました。

林業や木材産業に立ちはだかる三重苦

 

―会長になられて1年ほどが経ちました。この間を振り返っていかがでしたか。

有末 昨年6月に阿部徹前会長に代わり就任しました。コロナ禍の中、3月よりワクチン接種も始まり終息の期待が高まっていましたが効果が見えず、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置など国民の命を守る対策が相次いで出されました。
行動や時間の制約によるライフスタイルやワークスタイルも変わり、世界的にも国内においても経済が落ち込んでいた時期での就任となりました。

 

北海道森林組合連合会 有末 道弘 会長

 

その後、北米や欧州の自国内の木材需要が旺盛になった影響から一変して輸入材が急減し価格も高騰する、いわゆる「ウッドショック」により道産材に注目が集まりました。しかし、急増する需要により全道的に原木不足から原木価格も上がり、需要に供給が追いつかない状況にあります。

また、先般のロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けて、ロシアからの単板輸入減少による国内・道産ラミナ及び道産合板移出原木の集荷増や価格上昇が一層激しく、素材・製材の価格が上がることが今後も予想されます。

「コロナショック」「ウッドショック」「ロシアショック」という3重苦により、林業や木材産業にも大きな転換期を迎えている気がします。

 

北森カレッジの果たす役割

 

―林業従事者の育成を目的に開校した「北森カレッジ」の第1期卒業生の多くは、道内の森林組合に就職されました。彼らに期待することをお聞かせください。

有末 道内の森林組合に数多くの卒業生を迎えることができ、うれしく思っています。千歳市森林組合、はこだて広域森林組合、美瑛町森林組合、西十勝森林組合などに就職し、芦別市役所の林業関係の部署にも就職しています。

地域林業の担い手のリーダーとして、2年間で習得したスキルを思う存分発揮していただきたいと思いますし、大いに期待をしています。

また、林業も機械化が進んで来ましたが、まだ植え付け、下草刈りなどの作業が人の手による労働が多く、学んだ事や実践した経験を活かし、若い人の発想による機械化の促進にも期待をしています。

 

道森連の行う重点的な取り組み

 

―最後にこれからの道森連のあるべき姿をお聞かせください。

有末 2022年、道から「北海道森林づくり基本計画」の概要が発表され、それをベースに事業展開をしていきます。そこには長期指標として、2041年度の道産木材の利用量540万㎥(2019年度比+94万㎥)、木育に関心がある道民の割合80%(2021年度比+44%)に増やすことを目指しており、さらに7つの重点的な取り組みが記されています。

一つ目が「ゼロカーボン北海道の実現に向けた活力ある森林づくり」です。コンテナ苗などを活用した低コストな植林を目指し、成長の早いクリーンラーチ苗木の増産を図ります。

二つ目が「広葉樹資源の育成と有効活用」です。人工林の針広混交林化や広葉樹天然林の育成をし、日用品・家具など様々な用途での使用事例の効果的なPRをしていきます。

三つ目が「道産トドマツ建築材の安定供給体制の強化」です。道産材の使用は、これまではカラマツが主流でしたが、これからはトドマツへと移行していきます。原木の安定供給や乾燥施設などの整備支援、プレカット工場などと製材工場の需給マッチング支援をしていきます。

四つ目が「森林づくりを担う人材の確保」です。先述した北の森カレッジでの実践的な教育に始まり、造林作業の軽労化やSNSなどを活用した林業の魅力を発信していきます。
五つ目が「スマート林業による効率的な施業の推進」です。ドローンによる苗木の運搬やマンパワーに頼っている下刈りなどの機械化の実証や普及、ICTハーベスタによる効率的な原木供給体制の実証や普及です。

六つ目が「HOKKAIDO WOODブランドの浸透などによる道産木材の需要拡大」です。多様なツールを活用した魅力発信によるブランド力の強化を行い、建築物や土木など様々な分野での需要拡大を行います。

 

北海道森林組合連合会(事務所)

 

七つ目が「木育マイスターや企業などによる木育活動の推進」です。環境保全に関心のある企業などに対する森林づくりへの参加やイベント開催などの積極的な働きかけを行い、多様な木育活動をコーディネートする木育マイスターの育成を目指します。
これらの事が森林組合の基本である、「植えて、育てて、伐って使って、また植える」という森林資源の循環利用が国が目標とする2050年までにゼロカーボンにするという脱炭素社会の推進に繋がるものと思っています。また、森林所有者の組合員が安心して森林整備を進めるために、今まで以上に系統の力をフルに活用して安定供給に取り組んでいく考えです。

―今日はお忙しい中ありがとうございました。

 

●北海道森林組合連合会(道森連)

札幌市中央区北2条西19丁目1番地9

TEL: 011-621-4293

2022_05_02 | 2022年 5・6月号 特集 道森連 | , , , , ,