「ファーマーズドリーム番外編」
〜夢をつなぐ人〜と題し、“ファーマー”の思いを様々な「形」に変え(あるいは「思い」に「思い」を重ね)、私たち消費者の元へそれを届けてくれる人々に取材を行なっていきます。今回は札幌市民交流プラザ内にあるフレンチレストラン「DAFNE」のシェフ、古里裕之さんにお話を伺いました。
「DAFNE」のシェフとして
明るい陽射しが差し込む広々としたフロアにアンティーク雑貨や美しい植栽が施されたレストラン「DAFNE」。建物内には「札幌文化芸術劇場hitaru」があり、催しの余韻に浸る人々などでいつも賑わいを見せている。
レストランを統括するのはシェフの古里裕之さん。いつも作業の合間を縫って、笑顔で私たちの元へ挨拶に訪れては、様々な話をしてくれる。旬の食材、フランスの伝統料理、ナチュールワイン。彼の話を聞いていたくて、ついテーブルに引き止めてしまう。そして嬉しそうに語る彼を見ては、「あぁ、この人は、本当に料理と人が好きなんだ」と感じるのだった。
母の存在と『おもてなし』の始まり
料理と人をこよなく愛する彼に、その出会いについて聞いてみた。
青森県十和田市の出身。母・京子さんは料理教室を営んでおり、幼い頃から一緒に料理をした。小学生で料理を作っては友人を持て成し、中学生で、将来は料理の道へと決意。当時人気だった料理番組に出演していたフレンチシェフに影響を受け、フランス料理の道へ進むことを決めた。
フレンチシェフへの道
高校卒業後は光塩学園調理製菓専門学校へ入学。在学中にフランスへ短期留学し、初めて「フランス」を見た。ホテルリッツのコース料理に感動し、3時間かけて食事を楽しむフランス人の「食べること」に対する意識の高さに触れた。
卒業後、札幌市内のホテルへ就職。同僚には「負けたくない」と猛烈に技術を磨いた。ホテルの総料理長や先輩からはフランス料理の基礎を教わった。死ぬ気で勉強し27歳でホテル内フレンチレストランの料理長となる。その間、数々の料理コンクールへ出場。数多の賞を受賞し有頂天になった時期もあったが、これが本当に自分の料理なのかと疑問を抱く。本場フランスで経験を積んでいない自分にも自信が持てず、フランスへの想いが再び沸き起こる。
レストラン厨房にて真剣な面持ちの古里裕之さん
「テロワール」について考える
37歳でホテルを退職し渡仏。世界中から食通が集まるシャンパーニュ地方の三つ星レストラン
「ラシェットシャンプノワーズ」を経て、パリの老舗レストラン「タイユ・ブァン」で研鑽を積んだ。
フランスの食材は、日本とは異なる、さらさらとして水分の少ない土壌で育ち、凝縮された濃い味わいを持つ。そういったものに合わせるソースは濃厚なものが多い。日本でも同様に、水分の多い土壌で育つ繊細な味わいの食材があり、それを最大限に活かす古からの調理法がある。フランスにはワインの品種において生育地の地理や地勢、気候による特徴を表す「テロワール」という言葉があるが、彼は、これはワインだけでなく、料理全般に言えることと話す。目指すのは、「空気」「水」など全ての環境が作り出す一皿。渡仏前の迷いはもう無い。
ジャンルにはこだわらないと彼は続けた。「ただ美味しいものを作りたい」と。生産者の方々と繋がりながら、食材について探究し、難しすぎず進化しすぎない料理を目指す。
そして料理はやはり、人と人を結ぶ場にあり、幸せを運ぶものであって欲しいと彼は願うのだった。
(佐藤 伴美)
●レストランDAFNE
札幌市中央区北1条西1丁目札幌市民交流プラザ2階
TEL: 011・211・0813
ランチ 11時〜15時
ディナー 17時〜22時
●古里氏への商品・レシピ開発などに関するお問い合わせ
hokkaido/terroir@gmail.com
古里裕之
青森県十和田市出身。
高校卒業後は光塩学園調理製菓専門学校へ入学。在学中にフランスへ短期留学。
37歳でホテルを退職し渡仏。世界中から食通が集まるシャンパーニュ地方の三つ星レストラン「ラシェットシャンプノワーズ」を経て、パリの老舗レストラン「タイユ・ブァン」で研鑽を積む。
2023_03_22 | 2023年 3・4月号 ゆめさぽ ファーマーズドリーム | プロフェッショナル, レストラン, 楽しむ, 食, 食べる