農家をしながら、アパレルブランド「ogiiinuts」を展開、更には今年からゲストハウスも運営予定である栗山町で話題の若者、荻野隼一さん。
様々な事業を展開する荻野さんではあるが、「農業」に対する思いは幼い頃から強く、多角的な視点を持ってその思いを形にし続ける。現在29歳ながら、自由なスタイルで活動の幅を広げる荻野さんを訪ねた。
荻野隼一さん幼少期〜学生時代
荻野さんは、父が代表を務める「荻野農場」で農家として仕事をしながら、二足も三足もの草鞋を履く異色の青年だ。栗山町出身、栗山町育ち。幼少期から「農家になりたい」という思いを抱きながらも、「農業を勉強した所で父を超えることができない。他の知識も身につけたい」と、高校は土木科を卒業。卒業後拓殖大学北海道短期大学へ入学。更に本別の北海道立農業大学校稲作系専攻コースに拓殖短大の委託生として通った。ハードな学生時代を過ごし、2つの学校を卒業した後家業の農業に従事し今年で9年目となる。
「農業」に注目を!
25歳の時に、とあるイベントに出席。一般人も参加するイベントで、名刺も作り、張り切って参加するも、「農家の話」を全くできないということがあった。相手も農家に興味が無く、自分も話せる言葉が無い。生きる上で必要な「食」と繫がる農業は、全ての人々に関わる事でありながら、この状況にもどかしさを感じた。「もっと農業に目を向けて欲しい」その思いから、その頃地域おこし協力隊として栗山町へ来ており、現在ブランドのデザインを手がけ、自身のパートナーともなった湯浅那月さんと一緒に、「難しい言葉」ではなく、自分達が好きな「ファッション」を通して農業の魅力を伝えていくことにした。2019年にアパレルブランドを立ち上げ、ブランド名は二人の名前から「ogiiinuts」(をぎーなっつ)と名付けた。Instagramで発信し、人気も出たが、環境負荷などを考えると「なるべく服を売りたくない」と言う。環境への負担が少ないオーガニックコットンで新品を作るか、古着の良さを活かしてデザインを施すなど、環境に配慮し、個性を持たせ物作りを行う。そうしてファッションを通じ、農業を魅力的に伝えている。
お洒落なogiiinutsの作業着で微笑む荻野隼一さん
広がる活動
荻野さんの活動はこれだけにとどまらず、中古の一軒家を購入し、今年ゲストハウス運営を始める。利用者は自分の友人や友人からの紹介に限り、コミュニティーを小さくし、共感してくれる人、自分が信頼できる人との繋がりを広げ、深めていく予定だ。
多才な荻野さんは、熱波師やスノーボードインストラクターの資格を持ち、それらに関する活動も行う。
また、「子どもにとって先生や親以外に気軽に相談できる身近な大人でありたい」という思いから子どもたちとの関わりも広げている。学生時代に磨いた卓球の腕を活かし、小・中学校でコーチとして指導を行う他、町の教育委員会からの依頼があり、姉妹都市である宮城県角田市との交流イベントにおいて25人の子どもの引率を引き受けた。
柔軟なスタイルで思いを形に
そんな荻野さん、睡眠時間は2〜3時間程度。やりたい事、会いたい人がたくさんだ。「町に根ざし、もっと農家に目を向けてくれる人を増やしたい」という信念から、挑戦し続ける。しかし挑戦といっても、どこか力が抜けて楽しそう。「軸」が既に整っているのであろう。
農家であり続けながらも、その概念には拘らず自由な形で、共感できる人々と自分の信じる道を進む。
大きな熱量を持ちながら、よく晴れた空の下、爽やかに笑う荻野さんの活躍が楽しみだ。
(舩島 修)
2023_09_13 | 2023年 9・10月号 ゆめさぽ イーハトーブ ファーマーズドリーム 連載 | ゲストハウス, 楽しむ, 農業