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特集記事

2020_03_13 | 2020年 3・4月号 リーダーに聞く 連載 | | 編集部イーハトーブ

【リーダーに聞く】
明治35年創業の老舗、札幌市中沼町を第2の創業の地に
(株)ツカモトミルズ社長 鎌田 英宏氏

ツカモトミルズは明治35年に創業した老舗です。食をテーマに一貫して事業を営み、米及びその他穀類を含めた農産物原料、水産物原料の加工を中心に多彩な業務を展開しています。そんな同社にとって大きな転機となったのが、平成28年の札幌市中沼町への本社・工場の移転でした。

鎌田 英宏 氏

 

札幌市中沼町を第2の創業の地に

札幌市中央区に明治35年に創業した同社が、札幌市中沼町への移転を余儀なくされたのは、風評被害としか呼びようのないものが原因でした。
十数年前、カビの付いた米の加工品が流通して社会的な問題になった事がありました。農林水産省は全国一斉に流通経路を調査、もちろん同社にはそのような不正や不備はありませんでした。しかし、同社から米の加工品を買い入れていた大手流通業者から、「少しほとぼりが冷めるまで仕入れを見合わせたい」という要望が寄せられました。
その結果、年間3000トンも流通していた米の加工品が、一気に半分になってしまいました。さらに悪い事に、食管法の改正により、加工品原料の業者間での売買も禁止になりました。これまでの流通体系が大きく変わってしまったのです。
「加工品などは営業倉庫に保管しているため、保管料がかかります。保管料や売上の減少などで、無借金状態だった当社は、5億円の負債を抱えてしまいました」と代表の鎌田英宏氏は当時を振り返ります。
「その5億円を返済するために、創業地の本社や工場を処分し、負債完済後の残高で商売を続行しようと決断しました。完済後、2億円ほどのお金が残り、平成28年に札幌市中沼町に本社・工場を移転しました」
先代たちが100年以上かけて営んできた工場やその用地を売り払うという決断。その時の鎌田氏の心中は察するに余りあります。
それから4年が経過し、やっと以前のような工場設備・規模に戻りました。今年は第2の創業の地で本格的なスタートを切る年になります。

 

まずフリーズドライの再稼働を

これまでの事業の柱であったフリーズドライの製造は春頃に完全に稼働します。フリーズドライの乾燥室もできました。配線・配管も終わったので、後は機械の調整を終えれば稼働となります。
「乳製品や水産物の流通しない端材を乾燥させて、フリーズドライにしようと思っています。その他に、果実やワインを仕込んだ後の仕込みかすも可能です。クリームやチョコレートへのトッピング材料として大きな可能性を秘めています。これまで世間には流通していないものを流通させていくことができればと思っています」

 

中沼町を第2の創業地に

 

新たな事業への挑戦も

新たな事業への挑戦も始まります。それは米をこれまでにない高加圧で製粉するものです。そうすることにより、粘弾性を持ち、でん粉質と糖質が露出され、甘い米粉になります。
例えば、ハンバーグを作る時に、この米粉を混ぜると型にしやすく、非常に甘いハンバーグになります。この粉は米だけではなく、でん粉質と糖質を持つすべての農産物で可能です。今年はそのような実証実験を積極的に行っていきます。

 

北海道農業に対する提言

「北海道農業に対しては、農業従事者は自信を持ってほしい。この10年間を振り返ると、道産米に関しては、日本一のゆめぴりかが誕生しました。その他にも、道産の農産物では日本一になれるものはたくさんあるので、農業従事者は自信を持ってほしいと思います。大手流通業者の声に左右されるのではなく、農業従事者たちが自信を持って臨めば、ニュービジネスやニューマーケットが必ずできると思います」と最後に北海道農業の未来を語っていただきました。

 

●㈱ツカモトミルズ

本社・工場/札幌市東区中沼町113番地285

TEL: 011・790・3338

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