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特集記事

2021_01_17 | 1・2月号 2021年 特集 | , | 編集部イーハトーブ

(一財)北海道林業会館 沓澤敏理事長に聞きました
道内林業の拠点、新北海道林業会館が落成!

旧北海道林業会館(札幌市中央区北4西5)の跡地に建設していた複合施設が昨年11月に完成しました。西日本鉄道のホテルと林業会館からなる複合ビルで、ホテルは2月に開業し、3月頃までには分散していた林業関係の団体も随時戻り、道内林業の拠点として再開します。その林業関係の団体を束ねる(一財)北海道林業会館の沓澤敏理事長に今後の展望をお聞きしました。

新北海道林業会館がついに完成!

 

―昨年11月16日に施工業者である竹中工務店から引き渡されました。新ビル完成までの経緯を教えてください。

 

沓澤

このプロジェクトのそもそもの発端は、旧林業会館と土地と建物を共有していた国家公務員共済連合会(KKR)が、札幌でのホテルの営業をやめることになったことでした。そこで林業会館としては、KKRの持ち分の土地を全て買い取って会館主導による建物再建を目指すこととし、岡本光昭前理事長らの懸命な努力によりそれが実現することになりました。
2018年7月の旧建物解体から始まり、2年半にわたり関連工事が進められてきましたが、この間に直面した北海道胆振東部地震や新型コロナウイルスの感染拡大などの災禍を乗り越えて、予定した工期で無事に竣工を迎えたことは大きな喜びであり、且つまた安堵しているところです。

 

沓澤 敏 氏

 

内装に道産材を活用

 

―新しい林業会館ビルの特徴を教えてください。

 

沓澤 

札幌市の中心部、道庁赤れんがが庁舎と庭園を目の前に見ることができる好立地の場所に林業会館の新しい建物が完成しました。ソラリア西鉄ホテル札幌と共有する14階建てのビルの3階と4階に、北海道の森林、林業、木材産業に関連する二十余の団体・企業等が入居し、他に大小の会議室や貸事務室なども備えており、内装には趣向を凝らして木材を多く用いています。
例えば、廊下ではフローリングにミズナラを、3階の腰壁はトドマツを、また4階の腰壁はカラマツを使っており、いずれも道産の無垢材です。また、3階共用部中央吹抜空間の壁には、目を引く木製アートが飾られています。このアートは道内179の市町村が、それぞれの個性を発揮しながら一丸となり、力強くそして豊かな北海道の魅力を育んでいる姿を表現しています。道内に生育している代表的な樹種をゆかりのある14の振興局に割り当て、市町村形状ごとに切り出した上で再編することにより北海道の多様性を表現しています。
さらに、吹抜空間の天井にはドングリをモチーフにした照明ランプを多数吊り下げました。デンマーク製で、笠はリンデン材ということなのでシナノキの仲間でしょう。乳白ガラスのシェードはチェコ製の吹きガラスだそうです。

 

新北海道林業会館

 

照明ランプ(上)と木製アート(右)

 

新型コロナの影響

 

―昨年から続いている新型コロナは、林業や木材産業にどのような影響を与えていますか。

 

沓澤 

確かに、我が国全体で輸出がストップしたことで梱包材の需要が大きく落ち込んだり、住宅が建たなくなって建築材等の出荷も減少が続いていますが、住宅着工数については、今年1月~10月計で全国が対前年比マイナス10%強であるのに対し、北海道ではマイナス5%弱と落ち込みが少なくなっています。
特に8月から10月にかけては全国でマイナスが続いているのに対し、北海道ではプラスに転じています。このまま回復基調で推移することが期待されるのですが、今後の感染者数の急増による経済活動の冷え込みが大きな懸念材料となっています。事業の停滞が長引くと企業の資金繰りが悪化することや植林などの山づくりにも悪影響の及ぶことが危惧されます。

 

これから北海道林業会館が果たしていく役割

 

―最後に北海道の林業と木材産業対して林業会館が果たす役割を教えてください。

 

沓澤 

「食立国」「観光立国」とは北海道に対してよく言われることです。北海道の観光については、農家の人が一生懸命に米や野菜を作り、牛や豚や馬を育てる。海では漁業者が一生懸命魚貝や昆布をすなどる。そして地域においても家族間でも皆で仲良く暮らす。そうした姿を北海道を訪れる人たちに見せることがもてなしであって、人々はそれが見たくてまた、北海道にやって来ると私は思っています。綺麗な景色や楽しいお祭りや珍しいイベントは、そのもてなしの上にちょこんと載っているに過ぎないものと考えています。
そうした北海道の生業や暮らしを支えるのが、豊かな水と空気や木材を生み出す森林です。この豊かな森林を将来にわたって守り育てていくことが観光産業を下支えする、また、木材を様々な形で使っていく、こうしたことで、この建設プロジェクトを共に進めてきた西日本鉄道様や竹中工務店様の事業展開にも貢献できるものと思っています。
北海道林業会館はその森づくりや木材利用の中核的な存在として、これまでの70年に加え、これからの新たな歴史をスタートさせたいと、決意を新たにしているところです。

 

―今日はお忙しい中ありがとうございました。

 

●(一財)北海道林業会館

札幌市中央区北4条西5丁目1林業会館4F

TEL: 011・251・4151

 

 

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