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特集記事

2025_06_30 | 2025年 5・6月号 特集 | , , , , | 編集部イーハトーブ

東川町でクラフトジン蒸留
大雪山の水を スピリッツに活かして

自然環境の素晴らしさに定評がある東川町で、6月から地場産クラフトジンとウイスキーの蒸留を開始する予定です。こうした酒造りに必須の条件は、原料となる米などが地元で調達できることのほかに、絶対に外せない要素が「水」、それも清浄で質の良い水が大量に確保できることです。大雪山の雪解け水がふんだんに湧き出る東川町で、もうすぐ素晴らしい美酒が誕生します。

競技会で最高賞『パフューム ツリーズ』

東川町で、6月下旬から同町初となるクラフトジンの蒸留が始まります。建設予算の約5億円を、東川町と㈱丹丘蒸留所がそれぞれ負担する「公設民営」方式というユニークなモデルで運営される画期的なプロジェクトで、昨年6月から建設を開始し、今年4月に完了。6月から蒸留が始まり、7月下旬には製品として販売を開始する予定です。
運営にあたるのは香港に本社を持つ株式会社丹丘蒸留所。完全子会社の日本法人で、同社の主力商品は、2018年に香港初の本格クラフトジンとして発売された『パフューム ツリーズ ジン(白蘭樹下)』。非常に香りがよく爽やかでまろやかな、日本人の口にも合うジンで、米国の「SIPアワード」や英国の「ワールド・ジン・アワード」などの競技会で最高賞を受賞し、香港のバーやレストラン、ホテルで広く流通し、現在はシンガポール、台湾、英国でも展開している銘酒です。

 

完成間近の丹丘蒸留所

 

東川でジンを造る理由は

香港ではアルコール度数の高いお酒は造れないという制約があり、同社のジンはオランダで製造していましたが、そのため、輸送にはどうしてもコストや日数を要していました。そこで同社は、自然豊かで水質のよい日本に蒸留所建設を希望。

JETRO香港に相談したところ、北海道の東川町を紹介されました。
同社は、東川町の周辺環境の良さ、水質の素晴らしさに惹かれ、蒸留所の設置を熱望。大雪山の麓に位置し、北海道でも唯一、上水道のないまち東川町の地下水は、大雪山の大自然が蓄えた雪解け水であり、平成の名水百選にも選ばれており、同社はこの水をスピリッツ(蒸留酒)に活かす事業に着手しました。
そして東川町としても、地産品の米などを使ったクラフトジンを製造することで、町の付加価値を高められること、香港市場への米の輸出などのメリットがあると判断し、プロジェクトが動き出しました。

 

東川町に水の恵みをもたらす清冽な大雪旭岳源水

 

3年後にはウイスキーも

蒸留所建設は、2024年6月に着工。岐阜県の老舗・三千櫻酒造が2020年に移転してきた場所の南隣の町有地で、今年4月に工事が完了し、酒造免許や保健所の検査を受け、6月下旬からクラフトジン蒸留を開拓する予定です。

ジン造りには、ボタニカルと呼ばれる植物由来の風味付けの素材、ハーブやスパイス、果実、果皮、樹皮などが不可欠ですが、今年造られるクラフトジンには、東川町産のトドマツの葉や、上質な水が育てた東川米など、優れた地場産の原料が使われる予定です。
また、ジンだけでなく、同社初の試みとなるウイスキー造りも同時に始まります。ウイスキーは熟成に時間を要するため、3年間じっくり熟成させたこだわりのウイスキーが、2028年にお目見えする予定です。

 

最新の設備で伝統の技を

東川町で完成した丹丘蒸留所は、約1800㎡の敷地で床面積約500㎡。ジンの生産量は未定ですが、ウイスキーの年間生産量は4万リットルで、最大規模で8万リットルまで可能です。
精密な蒸留ができるオランダ製の新世代蒸留器iStillや、粉砕した麦芽と熱湯の混合液(マッシュ)から効率よく水分を取り除き、栄養価の高い残り糟の再利用を容易にするアメリカ製マッシュフィルターなどの先端技術を取り入れる一方、日本で古くから味噌や醤油などに使われてきた木桶による伝統的な発酵工程を組み合わせるなど、独自製法を確立しています。
今夏からお目見えする予定のメイドイン東川のクラフトジン、そして3年後に誕生予定のウイスキーは、香港を中心として国際的に商品展開していくことが予想されます。香港は日本、とりわけ北海道びいきで知られ、人口約740万人のうち昨年の訪日観光客は268万3500人、前年比26・9%で過去最高記録を更新しています。東川町の豊かな天然資源や雄大な景観などが世界デビューする日はすぐそこまで来ています。

 

大雪山の雪解け水を湛えた東川町の春の水田

 

良質な米が実り、黄金色に染まった秋の東川町

 

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