IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー

IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー
  • 紙面版を見る

特集記事

2025_09_04 | 2025年 9・10月号 巻頭記事 | , , , | 編集部イーハトーブ

自給率の高い米でこの騒動だから
飢饉や災害がきたら立ち行かない

食料自給率は先進国の中で最下位の日本は、世界に向かって「日本は先進国です」と真顔でいえない。食料政策は発展途上国以下のランクで、食の安全保障の概念、哲学がまるでない。大飢饉や大災害が発生したら国家として立ち行かなくなるのは一目瞭然。それでも政治は政争に明け暮れている。

備蓄米のみ価格は沈静化 ブランド米は高値維持

「令和の米騒動」はまだその渦中にあり、幾分か沈静化の兆しはあるが完璧に収まったとは感じられない。備蓄米の放出で店頭価格が下がり落ち着くかと思いきや、銘柄米は依然と高値をキープしている。

消費者の立場で見ていると、現在の状況は農水省が主導する政府備蓄米の放出で店頭価格を3000円前後(5㎏)まで下げたい思惑と、価格維持したいという2つの勢力のせめぎ合いのように見えてくる。ここまで来てしまうと、最終の状況はどんな形になるのか、皆目見当もつかない。筆者も「こうだ」と言い切れる自信がない。

はっきり言えることは今だけの状況で、店頭には十分米はあるということ。家庭内備蓄は全く必要ないということ。量的に逼迫していないということだ。今だけの状況だ、非常時は持たないのは言うまでもない。

 

8月に札幌市内で開催された北空知・中空知地域の「農産物直売市」の風景。恒例で開かれており地域の人気イベントになっている。会場は札幌市北区北10西3仲通り南向き、NKビル1階。

 

平成の米騒動のときは 緊急輸入のタイ米捨てる

平成時代にも、「平成 の米騒動」があった。1 993年産は不作年だっ たし、備蓄米制度も確立 されていない時代だった。 本紙の姉妹誌に「月刊I SM」があるが、9 4 年8 月号に当時の米騒動を書 いた「タイ米が教えてく れた日本人への警告」の なかに、こんな一文があ った、以下抜粋する。

―『日本が唯一、自給 率100%を誇る穀物は コメであった。ただし、 一昨年までのことである。 それが昨年の冷害による 凶作で状況は一転、緊急 輸入の必要に迫られた。行き過ぎた減反政策と備蓄米保管経費の削減を迫る大蔵省の強要に農水省が弱腰になり、備蓄米を減らすどころか、底をついてしまうという失態をやらかしたからだ。  このため政府は急きょ、コメの緊急輸入を決めたが、その段階で一部生産農家は取れたコメを農協を通さずヤミ米(自由米)に流した。政府買い入れ米の価格は1類から5類まで五段階に分けられ、コシヒカリやササニシキは1類で値段も高い。これに対し、道産米のヒット商品「きらら」は5類。味はコシヒカリやササニシキに負けないが、価格を安くして移出した方が得策だという読みもあって低価格帯に抑えていた。また、農家が出荷する際に規格に合致するかを筒状の撰別機にかけるが、そのふるいの網目は本州と比べて荒い。つまり網目から落ちた道産米は規格外として多用途米に振り向けられるのだが、コメの絶対量不足を背景に、この道産規格外米が、本州米とのブレンド米として大量に自由市場(?)に流れ込んだ。』―

以上、当時の「平成の米騒動」の状況が読み取れるはず。道立や札幌市立か、大きな図書館には本誌バックナンバーが蔵書として残っているので全文読みたい読者は行って読まれることを薦める。あるいはISM9・10月号に「アーカイブISM35年の足跡」に復刻版が収められている。これは書店に並んでいる。

 

コメ不足の理由付けが外国人旅行者が大量消費

一部分であるが読んでわかるとおり、北海道米が国から冷遇されていた当時の様子がわかるはず。姉妹誌ISMは道内農業界のために記事にした。

さて、「平成の米騒動」の教訓に立ち「米の100万t備蓄」は達成したが、依然として〝暗に減反を求める農政〟が失敗の原因となった。〝減反推奨作物〟なることばも現在も残っている。減反政策は廃止されたはずだが、残っているといっていいだろう。

しかし、米余りを恐れる(価格下落を恐れる)ばかりで減反を促していたのだが、実際は少なくし過ぎていた。国は農政の失敗を「失敗だった」とは総括しない。「外国人旅行者が思っていた以上に日本に来て、日本食を摂って米を大量消費した」とまで言い出す始末だ。反省がないから、役所体質も改善されない。

また、今回は米の数量の把握も実際よりおよそ21万t多くカウントしていたことも分かった。つまり押さえていた数値は架空の数値だったが、備蓄米として量的確保してあるから市場に出せば状況は落ち着くと見られていた。お粗末な話だが、昨秋の収穫時に各地から寄せられる数値に齟齬があったということだ。

 

外国のお米が日本のお米に取って代わってしまうと、日本の農業はたいへんになるね」
ホッくん、マイちゃんもお米の問題は心配です!

 

日本は自給率38%でも悠然としている不思議

冒頭にも触れたように日本の食料政策は危なっかしい。小さな国ながら食料輸入〝大国〟の称号をやってもいいくらいだ。

「もしも…」の時、日本は大混乱になる。正常な思考のできる研究者なら、それを誰一人否定しないだろう。お隣中国は食料自給率80%台になったとき国中が大騒ぎになっている。さらに自給率が落ち込んで行き渡らなくなったら、中国社会は崩壊する。それを知っているから中国共産党は強権を発動してまで食糧増産に走るはずだ。

一方の食糧輸入大国の日本は、38%でも悠然としているから不思議だ。筆者から言わせれば、世界で日本だけの珍現象だといえる。消費者たる国民もそう、自給率の問題に鈍感だ。この政府にしてこの国民、この国民にしてこの政府だ。今回の米騒動を見るまでもなく、ことが起きてから騒ぎ出す、なぜ過去の教訓を活かせないのか。

大飢饉、大災害が起これば、日本はたちまち大パニックになる。米騒動どころではない。戦時を知らない国民が大半だから、大混乱になる。もし、飢饉や自然災害が世界同時だったら、日本への食糧輸入は断絶する。そう、日本社会は欧米各国と比べて、この有事の輸入ゼロを想定していない。ゼロ、ゼロ、何日何月経っても輸入食料はゼロで入ってこない。

 

北海道米には寒冷地と闘って 勝ち取ったプライドがある

 

こうした緊張感ある政治が欧米社会だが、日本はその国家運営が微塵も感じられない。陸の国境がないからなのか、緊張感がない。国を自分たちの住む郷土に置き換えても同じように言える。国民のプライド、郷土のプライドはどうした。

歴史は物語る。ソ連崩壊は国民の食料が行き渡らなくなったから、ロシア革命以前よりも劣ったからといわれている。世界各国、食糧難は暴動に発展しやすい。日本の近代史でも1918年の富山県の女性たちが大挙米屋に押しかけ大騒ぎに、それが全国へ拡大。1932年、1946年「米よこせ運動」でデモが沸き起こり、皇居前広場に25万人が駆けつけた。日本人には怒りがあったのだが、今は不感症だ。

開拓期の頃、中山久蔵なる人物がいた(現北広島市)。米作りは当時ご法度だったが密栽培してとうとう成功した。こうして「寒冷地の北海道は米を作るな」だったが、これを克服していった。こうした先駆者がいて、道内各地に米作りが広がっていった。今さらなんだといわれそうだが、北海道米には寒冷地と闘って勝ち取ったプライドが詰まっている。

引用文にある「北海道の米は根っから5類」は失礼千万なのだ。これら偏見と闘って正面突破で名実ともに勝ち取ったのが現在の北海道の銘柄米なのだ。

(文責・山田勝芳)

 

 

2025_09_04 | 2025年 9・10月号 巻頭記事 | , , ,