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特集記事

2019_01_22 | 1・2月号 2019年 特集 | | 編集部イーハトーブ

春を待つ

あけましておめでとうございます。年賀状に「迎春」と書くように、旧暦の1月~3月は「春」でした。北海道はまだまだ厳しい寒さが続きますが、自然が厳しいからこそ、春を待つ気持ちもまた大きいのではないでしょうか。かつて北海道の大地を切り拓いた先人たちは、来るべき春を胸の内に秘めながら厳しい冬に農具の手入れにいそしんでいたことでしょう。

道真公を祀る三吉神社

そんな開拓者たちの心のよりどころは神社でした。初詣。前の年の1年間の稔に感謝し、新しい年の無事と平安を祈ります。現代の受験生にとっては、“最後の神頼み”でしょうか。
札幌の三吉神社(中央区南1西8)は、1878(明治11)年、秋田・太平山三吉神社の御分霊を祀ったのが始まりとされています。学問と技芸の神様・菅原道真公を祀る天満宮としても知られ、毎年、大勢の受験生が合格祈願に訪れます。道真公が描かれた学問成就絵馬には受験生たちの切なる願いが書き込まれています。彼ら彼女らも“サクラサク”春を待っています。

 

三吉神社(札幌市中央区南1西8)

 

三吉神社には合格祈願の絵馬がいっぱい

 

群来がやって来る

春を待つ気持ちは漁師も同じです。かつて日本海沿岸に押し寄せたニシンは「春告魚」と呼ばれました。文字通り“春を告げる魚”だったのです。ニシンにより富を貯えた網元は、日本海沿岸各地に鰊御殿を建て、権勢を誇示しました。乱獲により激減しましたが、最近は稚魚の放流によりニシンが戻りつつあります。
1月下旬から2月にかけて、日本海沿岸で、岸に押し寄せたニシンの産卵・放精により海が白く濁る現象が見られます。漁師たちはこれを「群来」と呼び、大漁の吉兆として歓迎しました。
群来が再び見られるようになったのはこの10年くらいのことです。日本海産のニシンが店頭に並ぶようになりました。漁獲量は最盛期には到底及びませんが、それでも群来は春を待つ漁師たちにとって吉兆であることに変わりありません。

 

ニシンの群来(張碓海岸2011 年2 月23 日)*写真提供/小樽市

 

健康で美しい女性に

女の子が生まれて初めて迎える桃の節句を初節句といいます。平安時代のひいな遊び(お人形遊び)と、紙や藁で造った人形に災いや厄を移して海や川へ流した流し雛の行事が結びついてひなまつりが生まれました。
ひな人形を飾ることは、その子が健康で美しい女性に育つようにとの家族の願いを意味します。
ひな人形を飾るのは、立春(2月4日)頃から2月中旬にかけて、遅くても3月3日の1週間前までには飾りたいものです。では仕舞うのは? 仕舞うのが遅れると婚期も遅れる、という言い伝えがありますが、根拠はないようです。函館の兼大丸宮田商店では、「3月
いっぱい飾って4月に仕舞っても大丈夫です。天気の良い日に仕舞って下さい」とのことです。

ひなまつりは子供の成長と幸福を祈るお祝いですし、ひな人形は赤ちゃんの身代わりとなって厄を受けてくれているのですから、お雛様は1人1人のお守りです。ですから母親のひな人形を譲り受けたり、姉妹兼用にするのは本来はおかしなことです。次女、三女が生まれたら、それぞれにひな人形が必要なのです。
子供が大きくなって結婚したときにお雛様の役目は一応終わったと考えられます。人形供養を受けて納めてもらいます。

(取材協力/兼大丸宮田商店)

 

おひなさまリカちゃん *写真提供/兼大丸宮田商店(函館)

 

ゾウも春を待っている

2018年11月30日、ミャンマーから4頭のアジアゾウ(オス1頭・メス3頭)が札幌市円山動物園にやって来ました。9月に完成したゾウ舎には、日本初の屋内プールがあり、ゾウの泳ぐ姿を真横から見ることができます。床には1mの厚さの砂が敷き詰められ、ゾウの足を守っています。群れで暮らすゾウの自然な姿を見られるのは2019年の春ころ。動物園の人気者ゾウが円山動物園にやってくるのは10数年ぶり。ゾウたちも子供たちに会える春を待っているに違いありません。

 

新ゾウ舎で春を待つアジアゾウたち *写真提供/札幌市円山動物園

2019_01_22 | 1・2月号 2019年 特集 |