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特集記事

2019_01_22 | 1・2月号 2019年 特集 | , , | 編集部イーハトーブ

木と生きる、木と暮らす ~中川町の取り組み~

上川管内の最北部に位置する中川町の総面積は約594㎢。その内、森林は86.7%を占めます。その森づくりは生物多様性に配慮し、他の自治体では見られない独自のものです。川口精雄町長にその取り組みをお聞きしました。

自然の厳しさと天塩川に育まれて生きる「なかがわの森」

 

-生物多様性に配慮した森づくりとは、具体的にどのようなことですか。

 

川口

町有林では原則皆伐は行わず、私有林でも皆伐可能面積は6㌶に制限されています。町有林では倒木や枯損木を積極的に残すことで、複雑で多様な構成の森づくりを進めています。その結果、森林には食物連鎖の頂点に位置するクマタカなどの希少猛禽類が営巣し、豊かな森林生態系を表しています。

 

川口 精雄 町長

 

「木と生きる、木と暮らす」を実践

 

-その森林を核としてどのようなマチづくりを目指しているのですか。

 

川口

この企画のタイトルのように「木と生きる、木と暮らす」、そのようなマチづくりを目指しています。国有林や北大研究林など天然広葉樹林は圧倒的な規模があります。それをどう活用していくのか。そして、森林文化としてどう定着していくのかが、最大の課題と考えています。
東川町に宮地鎮雄という家具作家がいます。平成25年に宮地氏と町産オニグルミを安定的に供給する協定を締結しました。宮地氏はオニグルミでしか家具を作らない。町長室にある応接セットも作っていただいた。そして普通、材の管理は幅や厚さで行いますが、宮地氏は一本の丸太で管理しているので、食品と同じように、その材がどこで伐採されたのかがわかる。今後、木材のトレーサビリティが重要な売りになると考えています。

また、白樺の樹皮やブドウヅル、オニグルミの皮を使った作品をつくる木工作家も本州から移住してきています。作家として独立しておられる方が2名、地域おこし協力隊として1名います。これらの活動は森林があってこそ可能なものであり、彼らは結婚して、子どもを持ち、マチの活性化にも大いに貢献していただいています。
林業従事者も増えています。UターンではなくIターンで若い人たちが町外からわがマチに来ています。都会で小さな歯車として生きるよりも、この小さなマチで、自分の存在感を発揮しながら、北海道の大自然の中で、林業に従事するというしっかりとした考え方を持った若者たちです。彼らは林業青年部という組織を立ち上げ、マチのイベントである「きこり祭り」の実行委員会を作り、盛り上げてくれていますし、彼らをモデルにした集合写真は、ポスターやポストカードになっています。

 

岐阜県飛騨市と「姉妹森」協定を締結

 

昨年10月には岐阜県飛騨市と「姉妹森」協定を締結しました。

川口

「姉妹森」協定とは、森づくりや森林資源の活用での連携、木工製品の共同ブランド化を目指すものです。森を前面に打ち出した自治体間の協定は国内でも珍しく、活用が低調な広葉樹の付加価値向上を目指しています。
飛騨市はご存知のように家具生産の一大産地であり、わがマチと同じように広葉樹林を大切にしたマチづくりを進めています。向こうから何度も何度も足を運んでいただき、今回の締結の運びとなりました。飛騨の家具といえばそのブランド力は凄いものです。そのような所からお声をかけていただき、とても名誉なことと思っています。

現在、わがマチには森林組合を含めて造林事業体は4つあります。ただ、残念ながら製材会社はない。昔は4軒あったのですが、すべて閉鎖しました。だから、原木の提供のみで、個人的にはもったいない現状だと思っています。今回のこの「姉妹森」協定の締結で、広葉樹の活用の幅が拡がればと思っています。

 

岐阜県飛騨市と「姉妹森」協定を締結しました

 

JR「天塩中川駅」をレトロ調の木造駅舎に改築

 

–  改築した「天塩中川駅」は森と生きる中川町のシンボルになっていますね。

 

川口 天塩中川駅は昭和28年に木造駅舎として誕生しましたが、時が経つにつれて、壁は新建材になり、窓枠にはサッシが使われ、味気ないものに変わっていきました。昔のおもむきを取り戻すために思い切って改築しました。中川産材をふんだんに使っています。駅舎内にはイベントスペースを設け、ちょっとしたお茶会や会議などに使われています。月に1回ぐらいはカフェを開設し、地元特産のハスカップワインの集いなども行っています。もちろん宗谷線が存続しての「天塩中川駅」ですから、存続に関しては、JR北海道と今後も協議をしていくこととなるはずです。

 

昔のおもむきを取り戻したJR天塩中川駅

 

森林を守ることは国土を守ること

川口

昨年9月6日、北海道胆振東部地震が発生しました。厚真町では4300㌶にわたり山が崩れました。その映像を見るにつけ、国土を守るのは森林という思いを強くしました。森林の役割としてCO2の削減や水源の涵養などいろいろありますが、国土そのものを守っているのが森林であり、災害に負けず、人間の生活を守る強い森林を何十年もかけて作っていくことが、未来の人たちに対する使命と感じています。そのような視点に立ち、森林環境税も使っていかなければならない。未来のための森林づくりと同時に今の地域経済を豊かにしていく。この両輪で森林づくりを行いたいと思っています。

 

今日はお忙しい中ありがとうございました。

 

●中川町役場

北海道中川郡中川町字中川337番地

TEL: 01656・7・2811

http://www.town.nakagawa.hokkaido.jp

 

2019_01_22 | 1・2月号 2019年 特集 | , ,