GAPってなんだろう? 食の安全は食品に関わるあらゆる産業界に求められている必須条件。農業界でも今、農産物の安全基準というべき「GAP認証」へ向けた動きが活発だ。今回の取材先は、地域にどっしり根をおろす㈱富良野二百年農場(中富良野町/久保秀之代表)だ。記者は「ゆめ・きた・さぽーと」の大滝昇社労士、廣田陸奥夫税理士(ともにJGAP指導員)と一緒に、同農場の取材を敢行した。
文/山田勝芳
営々と未来へ繋がる農業を
「次号の取材先をどこにしようか」とGAPの取得先一覧表を見ていたら、飛び込んできたのが「㈱富良野二百年農場」だ。「えっ、去年北海道150年だったはずなのに、200年も経っているのはどうしてかな」と記憶のへりにふっ付いたままで気になった。
その答えはー、代表の久保秀之さんは4代目(昭和51年就農)で、初代が入植して百有余年経つ。
故郷の肥沃な農地と経験の数々、先進の技術を次の担い手にバトンタッチして地域の農業をいつまでも繋げていきたい」、そんな未来へのプラス志向の願いが込められている、なんと素晴らしいことか! 見上げれば十勝連山、裾に広がる富良野盆地、脈々と営まれる農業、「この故郷の風景を変えたくない」土着人の気骨を感じる。
平成19年に五軒の周辺農家とともに「集落営農組織」を設立し、23年に「株式会社富良野二百年農場」として法人登記した。同農場は現在32 haの水田と畑を耕作し、環境にも消費者にもやさしい〝エコ畑作農業〟を目指す。実は久保代表自身は〝農薬アレルギー〟、必然というべきか、さらなる減農薬・有機農法に取り組む。穀物は米を中心に小麦、大豆、青果物はスィートコーン、メロン、カボチャ、大玉トマトなど。作物の半分は農協へ、もう半分は民間会社へ出荷される。直売は全体の一割ほど。
久保代表には跡取りがいない。それでも心配していない。若い従業員がその後に続くと確信しているからだ。
写真左側から、久保代表の甥っ子・久保祐太さん、久保秀之代表、レポーターの大滝昇さん&廣田陸奥夫さん
消費者と向き合う営農姿勢
法人設立から2年後の平成25年、「JGAP認証」を取得した。取得の動機は「農薬は可能な限り減らしているけれど、結局ことばだけでは何も証明できない」。やはり、農産物の安全管理は日々の生産履歴を日報という形で逐一記録する以外に証明はできない。
食の安全に向けた徹底ぶりは、出荷前の農作物を検査機関に持ち込んで残留農薬・放射性物質の検査を受けていることからもわかる。これをパスして初めて消費者に届けられる。安全に対する徹底ぶりに感服するのは、きっと記者ばかりではないだろう。JGAPはほぼ年に1回、更新のための審査を受ける。「今年の改革点はこれ」、年数を重ねるほどに理想の経営スタイルに近づく。いわば終点のない改善だ。「安全をより完璧に」、JGAPを更新する久保代表はどこまでも安全性にこだわる。
農業がいつまでも3Kでは働き手も集まらない。従業員はタイムカードを取って、繁忙期でも休日はしっかり取らせている。法人化すると、時間勤務はいわば必然。農業だって〝働き手に選ばれる企業〞になりたいのだ。富良野二百年農場の挑戦は続く。