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【わがマチ自慢】今回は更別村

わがマチの1次産業や観光の魅力をお伝えします。今回は日本一から世界一の農業王国を目指す十勝管内の更別村です。西山猛更別村長にお聞きしました。

 

DATA

【人口】3,165人(令和2年4月1日現在)
【世帯】1,331世帯(同上)

更別村役場
〒089-1595 北海道河西郡更別村字更別南1線93番地
TEL:(0155)52-2111

日本一から世界一の農業王国を目指す更別村。その現状と課題は?

 

西山 猛 村長

 

わがマチも少子高齢化により人口減少が大きな課題になっています。そのことによって、生産人口が減少し、経済規模も縮小してしまう。この状況をそのまま放っておけば、20年後、30年後の村は存続できません。
わがマチの農家戸数は214戸、1戸あたりの農地面積は50㌶を超え、東京ドーム10個分ほどで、170㌶の農地を持っている農家もいます。1戸のトラクタの所有台数は約6.2台で全国でトップクラスを誇ります。また、食料自給率は6800%で日本一。農業粗生産額は145億円で、農家1戸あたりの平均収入は6000万円以上になります。このような大型農業ができる広大な農地があるからこそ、無人トラクタやドローン等が生かされるスマート農業を推進しています。
スマート農業を推進するもう一つの理由として、平成28年の台風被害がありました。わがマチも滞水被害といって、畑にたまった水がなかなか引かなかった。そのため、ジャガイモの防除もできず、トラクタも畑に入ることができませんでした。その時にドローンを使った防除を行ってはどうかとの話が出ました。
このようなことがきっかけで積極的にスマート農業に今、取り組んでいます。

 

スマート農業に関して、その取り組みを教えてください

スマート農業は、内閣府の近未来技術等社会実装事業ということで、水田に関しては岩見沢市、畑に関してはわがマチで実証実験を進めています。
これまでいろいろな企業や団体がわがマチで活動しています。
東京大学の平藤雅之特任教授のグループは、土壌水分や気温と作物の成長をまとめたビッグデータを、効率的に収集する方法を確立する研究を行っています。
エアステージというドローンの販売会社では、編隊飛行での農薬散布の実験や遊休地をドローン講習会場として活用しています。
NTTドコモでは、ドローンでほ場をセンシングをした後、5分ほどでほ場を3Dマップにできるアプリを開発しました。
また、今年からは大手農業機械メーカーのクボタやヤンマーと一緒に、無人トラクタの実証実験も行います。
スマート農業を推し進めることによって、どのように農業が変わっていくのか。統計上、140億粗生産ベースで考えると、生産誘発額は27億円発生し、GDPを18億円押し上げます。これにより、1年間に181人の雇用を誘発することができます。また、農家1戸あたりの所得も2000万円以上増加し、労働力を15%向上することができると試算しています。

 

トップクラスのトラクタ保有台数

 

ロボットトラクタ実証テストの様子

 

道内で唯一、更別村にある「熱中小学校」について教えてください

「熱中小学校」は、内閣府の地方創生交付金の支援を受けながら展開する「大人の社会塾」です。

全国の企業経営者や第一線で活躍する大学研究者たちを講師に招き、起業、創業へのアプローチ、ビジネススキルアップ、観光開発、地場産業の振興などの講義を通じ、多岐にわたる人材育成に貢献できる学びの場になっています。
2015年に山形県高畠町で廃校になった小学校を使い開校したことをきっかけに、全国各地で開校が決定し、道内では唯一、わがマチで開校しました。
平成29年度の生徒数は106名、平成30年度は152名、令和元年度は189名が学びました。生徒や地域の交流の場として、イタリアンレストランや宿泊施設を整備しました。また、更別産の小麦でピザを焼きたいという熱中小生徒の部活動の提案から、小麦の育種も始まりました。さらに、介護タクシーの会社やキャンピングカーのレンタル会社と、新しい企業が誕生しています。

 

熱中小学校開校時のみなさん

 

10年後の実現を目指す「更別スーパーシティ構想」とは何ですか?

スマート農業だけではなく、あらゆる分野でスマート化を推し進めることによって、わがマチをスーパーシティに生まれ変わらせようと思っています。これを「更別スーパーシティ構想」と呼び、2030年までに実現したいと思っています。
スマート化するものとして、移動、物流、支払い、行政、医療・福祉・介護、教育、エネルギー、環境、防災、防犯の分野です。
具体的に言いますと、移動に関しては、交通弱者も自由に熱中小学校や病院・買い物へ移動できるように、自動走行が可能なAIバスやAIタクシーを走らせます。
物流に関しては、ドローンを活用し、医薬品や食料が届けられるようにします。
また、教育に関しては、遠隔教育を取り入れるとともに、小学校からスマート人材の育成のノウハウをプログラミング教育により学ばせ、将来の後継者の育成も行います。
一方、医療に関しては、医師や歯科医師が自宅まで訪問診療を行ったり、遠隔医療で通院負担をなくしたりします。
人生100年時代において、じいちゃんばあちゃんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)日本一を目指すもの、それが「更別スーパーシティ構想」であり、日本一、いや世界一住みやすいマチを目指しています。

2020_07_09 | 2020年 7・8月号 わがマチ自慢 スマート農業 連載 | , ,