わがマチの1次産業や観光の魅力をお伝えします。今回は「子どもを育て、働き、住み続けられる町づくり」を目指す檜山管内の今金町です。外崎秀人町長にお聞きしました。
DATA
【人口】5,111(R2年5月末現在)
【世帯】2,520世帯(同上)
今金町役場
〒049-4393 北海道瀬棚郡今金町字今金48-1
TEL:(0137)82-0111
外崎 秀人 町長
将来のマチの発展のため農地整備事業を始めています!
正式名称は国営緊急農地再編整備事業といい、平成27年から本格的に始まっています。
マチを持続させていくために一番大切なことはそれぞれの地域を守ることです。それぞれの地域がしっかりしていなければ、マチは成り立ちません。わがマチは大きく10の地域に分かれていますが、ベースになっているのはどこも農業。だから農業を守り育てていくことが地域を守ることになり、マチを守ることとなります。新たな農地を確保し、その農地の用水や排水機能を向上させ、傾斜地の改良などの工事をおこなうことが農地整備事業であり、それによって、水を確保し、農地を整備し、人を育て、技術を伝承し、食と職人を守り自給率を高め、地域を守ることができます。
町長に就任後、わがマチの将来農家戸数は、348戸から145戸になるというショッキングな予想値が示され、落胆したことを昨日のことのように覚えています。将来マチを存続させるためには何をなすべきか。考えたキャッチフレーズが、「子どもを育て、働き、住み続けられる町づくり」でした。その政策の一環として、国営緊急農地再編整備事業への取り組みを決意したわけです。
また、日本の食及び食関連産業の存続を可能なものにするためにも、大規模低コストでかつ多様な農業が展開できる生産基盤整備も進めていく。だからといって農業だけに力を注ぐわけではありません。わがマチにおける商業、建設業、福祉などの産業を含めた地域産業として将来を考えていくことが必要です。
工事期間は7年間で、現在52%の進捗状況となっています。
農地整備事業の様子
昨年「今金男しゃく」が地理的表示(GI)保護制度に登録されましたね!
地理的表示(GI)保護制度とは、地域の伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度です。「今金男しゃく」の登録は、全国で86件目となり、道内では「夕張メロン」「十勝川西長いも」に続き3件目になります。
わがマチの馬鈴薯の生産は、明治24年まで遡ります。初めのうちは多くの品種を生産していましたが、昭和28年に「男爵」が北海道の優良品種に選定されたことを契機に、作付けする馬鈴薯を「男爵」のみに統一しました。丘陵地が多く、土地も狭隘で大型機械の導入が困難なため、徹底した品質管理で、どこにも負けない品質の男爵を作ろうと打ち出た戦略でした。昭和30年に共同選別によって、安定品質の馬鈴薯が出荷可能となったことから、「今金男しゃく」の名前で出荷を開始し、現在では原種・種子・食用と親子三代をわがマチで生産し、徹底した管理をしています。
現在では、生産面積は375㌶、生産量は12,000t、全国に占める割合は0.3%の希少品です。
GI登録は道内で3件目です
他にもいろいろな農産物を生産していますね!
わがマチの農業は、水稲・畑作・酪農・施設園芸の4本柱で、それぞれの地域で複合経営を行っていて、ほとんどの農産物を生産しています。
ただ規模は小さい。しかし、一番大事なことは所得を確保するためにはどうすればいいのかということ。所得を確保できれば家族を持つことができる。親の面倒をみていける。それが地域を守ることにつながっていきます。いくら農地があっても働く人がいなければ駄目で、人の育成も行っていかなければなりません。
初めにお話しさせていただいた農地整備事業の話ですが、整備エリアの農業従事者は103人いて、平均年齢は40.4歳という若さです。その方々は、今後30年間は農業に従事することができる。農業を持続化することができる。そのためにも、総事業費400億円をかけても行う価値のあるものだと思っています。
一方、スマート農業の普及により、農作業のほとんどは人ではなく機械が行い、それはさらに加速していきます。これからは人と農地と機械のバランスを取りながら農業振興を行っていこうと思っています。
稲作も盛んです
林業や観光はどうですか?
わがマチは鉱山から始まり、林業、そして農業で開拓されてきた歴史があります。
昭和7年には鉄道が開設した種川駅で木材の搬出を行い、薪炭出荷駅日本一として鉄道大臣表彰を受けるなど、林業も盛んです。
今大きな課題になっているのが不在森林所有者が森林の手入れを行わないことです。森林組合に入っていただいて、マチも協力しますので、森林を守る努力をお願いしたいと思っています。
一方、観光はなかなか難しいところがあります。グリーンツーリズムなど、農業と観光を結びつけることにはまだまだ懐疑的です。美瑛町などではきれいな畑の中に観光客が入り込み、農地が荒らされたり、病気を持ち込まれたりして大きな問題になりました。そういうことは絶対避けなければなりません。観光地を絞り込む。地域を限定してここ以外の畑には入場させない。そのような前提の中で観光にも力を入れていきます。