GAPってなんだろう? 食の安全は食品に関わるあらゆる産業界に求められている必須条件。農業界でも今、農産物の安全基準というべき「GAP認証」へ向けた動きが活発だ。今回の取材先は恵庭市の島田農園(島田龍哉代表)で、まだ認証は取れていないが昨年からASIAGAPの認証を目指して奮戦中だ。記者は「ゆめ・きた・さぽーと」の大滝昇社労士、廣田陸奥夫税理士(ともにJGAP指導員)と一緒に農場を訪ねた。
文/山田勝芳
島田農園は今年で100年GAP目指して安全な営農へ
大正9年(1920年)富山県からの移住者・島田常次郎が恵庭の地で稲作農業を始めたのが島田農園の出発点で、今年はちょうど100年目の節目、いわゆる「百年農家」だ。代表の島田龍哉さんは数えて5代目。スタート時は7haだった耕作地が、現在は約64ha(水田54ha・畑作10ha)。
5代目からはお米の直接販売も増えた。さらに、地元の「釜めしいちえ」や、「びっくりドンキー」との契約栽培(低農薬栽培)も引き受けている。〝指導農業士〟としての地域活動もある。地域の子どもたちの田植え体験・稲刈り体験を積極的に受け入れている。
こうした活動は異業種団体であるJC活動や中小企業家同友会活動を通して培われた。「農業界だけの活動では新しい展開、新しい発想は出てこなかった」と述懐する。尊敬する先輩が語った言葉が忘れられない、「無理だと言うな。まずやってみよ。良くも悪くも前に進んだことになる」。まだ43歳、チャレンジしたい夢は溢れるほどある。
いちごの苗を待つ状態。写真中央は島田龍哉代表、右にゆめさぽ代表の大滝昇さん、左に廣田陸奥夫さん
農福連携でいちご栽培観光農園化を視野に農場整備
メインは稲作だが、チャレンジしたいことがある。それは「いちご観光農園」を本格化させて、多くのお客さんにいちご狩りに来て貰うこと。そのためにも安全・安心へ向けた公的認証(ASIAGAP)を取得したいと考えるようになった。島田代表は「特に外国人はGAP認証のあるなしに敏感だ。米といちごでGAP認証を取りたい」と語る。
雪が降っても潰されないほど丈夫なハウスを建設した。3月になると、いちご苗が到着する。それからは作業も一気に本格化する。「身障者でも快適に働ける農場を目指す。車椅子でも通れる幅、棚も高くして作業しやすくする」と島田代表は語る。
6月から出荷、11月まで収穫できる。子育て世代が9時から13時まで勤務、土日や夏休みはオフ、その分は地元の高校生が働く。農福連携では平日10時から15時まで従事する。「今年はレベルアップしていちごの選定もできるようにと期待している。そうなればいちごの通年栽培も可能になる」。
農園に直売所と水洗トイレも設置する。「いちご農園に人が集まり、それが街づくりや地域づくりに活かせればいい」と楽しそうに語っていた。「地域のためにきっと何かをやってくれる人」、島田代表に記者はその思いを強くした。
農福連携での作業
2020_01_15 | 1・2月号 2020年 GAP認証農場を訪ねて | 農園, 食