極良食味米「ゆきさやか」の美味しさがじわり道内に広がっています。一般家庭の食卓はもとより、こだわりの高級寿司店ではシャリに使われ、兵庫県に本社をおく焼き肉店や定山渓のホテルでも「ゆきさやか」が提供されています。
その食味は「ゆめぴりか」以上という声もある「ゆきさやか」。しかし、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。
これまでの「ゆきさやか」の歩み
「ゆきさやか」は、新たな品種の開発などを行う国の機関「農研機構北海道農業研究センター(北農研)」(札幌市)で開発されました。
育成を始めたのが平成0年です。その後、道内各地で試験栽培が行われました。中でも、留萌管内ではJAが主導で行われ、3~4年におよぶ試験の結果、病害への抵抗性や生育性などが劣るため、新品種の候補にはなりませんでした。しかし、その食味の良さが他の既存品種に比べて際立っていたため、管内では意欲ある数戸の生産者とともに、平成21年から再び試験栽培を開始し、「ゆきさやか」の美味しさは少しずつ道内に浸透していきます。
品種登録から産地品種銘柄へ
品種登録をしたのが平成22年でした。しかし、品種登録をしても販売する米袋に品種を記載することはできず、それを可能にするのには「産地品種銘柄」の認可を受けなければなりませんでした。これは生産者が行うことになっていましたが、どこの生産者も申請には二の足を踏んでいました。その最大の原因が、他の稲に比べて「葉鞘褐変(ようしょうかっぺん)」という病気の発生率が高かったからです。
「葉鞘褐変」は、北海道特有の病気で、稲の穂が褐色になってしまう病気です。このため道の奨励品種になれず、ホクレンも申請を見送っていました。
「ゆきさやか」の育ての親として
その大きな壁に果敢に挑戦したのが市川農場の市川範之さん(旭川市)でした。平成27年に申請をして、翌年にようやく「ゆきさやか」という名称を使えるようになりました。
代表の市川範之さん
「『ゆきさやか』というネーミングは、ご飯の白さに優れ、つやがあり、雪のように白く滑らかであることに由来しています。ホクレンが申請をした品種であれば、自動的にホクレンの流通経路で販売先が確保されますが、そうでなければ一生産者が自力で販売先を見つけなければならず、大きなリスクを抱えることになってしまいます。それでも冷害に強く、美味しいお米だったのでなんとか流通させたいと考えました」と「ゆきさやか」の育ての親である市川さんは話します。
毎年11月に、蘭越町でお米の日本一を決める「米-1グランプリ」にも、「ゆきさやか」は出品され、最終選考に残る回数も年々増えてきました。栽培が難しくても、一度栽培した農家の方々は、その食味に満足し、継続栽培を行っています。
また、留萌市内にあるAコープでは、「夢味心(ゆめみこころ)」という名前で販売をし、札幌市の千野米穀店では、「北国の龍」という名前で販売しています。もちろん前述の市川農場でもネット販売を行っていて、多くのリピーターを生んでいます。
「北農研さんのご協力もあり、『ゆきさやか』の美味しさが確実に道内に浸透している現状にうれしく思っています。一度試しに食していただければ、その美味しさが実感できるはずです。ただ、種もみに制限があり、ゆめぴりかやななつぼしのように量産は難しい。スーパーなどで大量消費されるというよりは、希少価値のある美味しいブランド米として認知されていくと思います」と市川さんは話します。
●農業生産法人市川農場
旭川市西神楽3線8号
TEL: 0120・049・397