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特集記事

2022_05_02 | 2022年 5・6月号 特集 | , , , , | 編集部イーハトーブ

どうして一斉値上げになるの?
食料自給率の低い農作物ほど世界的な価格変動の影響を受ける

貿易で世界とつながっている日本は農作物の価格高騰の折、自給率の低い小麦(15%)や大豆(7%)は世界市場のひっ迫で即影響が出やすい(家畜飼料も全体では自給率25%だが濃厚飼料だけで見れば10%程度)。一喜一憂するのは消費者ばかりでなく、食に関わるメーカーや流通、飲食店などすべてが価格上昇の洗礼を受けることになる。その中で自給率98%の米は、冷害・不作などの特別な場合を除き、大きな価格変動はない優等生だ。

小麦価格の高騰で米粉の好機は必ずある

一面記事では食料自給率15%の小麦から日本の食の安全保障を考えてみた。鎖国政策をとらない限り、日本は貿易や経済活動で世界各国とつながっている。小麦の市況が急騰すれば、日本はもろに影響を受けやすい。特にパン類は、家計費に占める割合が米より多い支出に、つまり逆転になった。その分、家計への影響は大きい。

逆に米は自給率98%、自給率の高い分、冷害や水害を被る以外は大きく揺らぐことはない。ただ、過剰米で価格が下降気味だ。小麦由来の商品が上昇気味な分、米の分野は遣りようでいい展開が出来そうではあるが、過去の失敗例もあるから誰も米粉を語りたがらない。過去は小麦に代わる代替品として米粉の活用は一時的に進んだが、定着まで至らなかった。今でも消費拡大としての米粉の利用促進を誰も、どの機関も言い出さない不思議。活路は必ずある。

 

新酒発売日でも酒造に行列ができない

テレビ番組を見ていると、新酒の発売初日には酒蔵に客が列をなす光景が見られる。北海道では絶対に起こりえない光景だ。数百年続く本州の良き文化は倣いたいもの。米の生産量の「第1位新潟県」、「第2位北海道」だが量的差はあまりない。しかし、酒蔵数で大差がつく。「北海道13蔵」に対し「新潟県89蔵」の老舗がそれぞれ地元にどっしりと根をおろす。これこそが米どころ育ちの、地域の住民から支持された地酒である。

また、日本酒の一年間の消費量も大差がつく。新潟県は一人当たり11・9㍑(全国1位)、北海道は4・36㍑(全国33位)と低いランキングに位置する。この数字を見ると、北海道に地酒と呼べる文化は残念ながらないのではないか。その分、海外で売ろうと、道内酒造会社は果敢に挑戦する。

因みにビール消費量で追っていくと北海道は第7位だ。新潟県はここでも北海道の上を行く第3位、まさに酒文化を愛する新潟県民だ。
日本におけるビールの歴史は新しく、まだ150年ほどの歴史で、「開拓使麦酒醸造所」がスタート。北海道に野生のホップが自生していたことから札幌でスタートしたのだが、大量生産・大量販売に舵を切った民間ビール会社は地元原料を使わなくなった。これも産地発の地ビールとは言い難い。現在少量は地元原料で製造されているようではある。北海道民に支持されたビールとは言い難い。
最近はワイナリーやウィスキー工房が目立って多くなり、新たな酒造りの大地・北海道として着実に育っていってほしい。

 

飼料国産化は言われるが現実は厳しい問題はらむ

粗飼料(乾草、サイレージ、稲わら)の自給率は78%、対して濃厚飼料(トウモロコシ中心の穀類、糠類、粕類)の自給率は10%ほど。酪農・畜産とも約半分以上は濃厚飼料によって家畜は飼育されている。
濃厚飼料の大部分を占めるトウモロコシはほぼ100%輸入に依存している。その輸入相手国は米国とブラジルが大半で、小麦での記述同様に〝高温乾燥”の気候変動を受け大減産、価格高騰の理由になっている。
ウクライナやロシアも主要生産国であり、今年の秋以降に影響は出るものと予想される。
かねてより、価格変動の大きい飼料の国産化は進められているが、実際のところ難しい側面もある。作るためには広大な耕作地が必要だ。
トウモロコシは日本に1537万t輸入されているが、これを国内で生産しようとすれば耕作地429万㌶必要で、これは日本の全耕作地462万㌶の9割を占め、現実には不可能であり、実現できない。

世界的には食料が不均衡で行き渡らない飢餓地域もある。つまり、食料不足の時代であり、家畜飼料として穀物を延々と食べさせていいのか、という議論も昔からあるが結論は出ない。
日本では、米余りにも対処でき、飼料生産の一助にもなるとして、稲作の転作作物として「小麦」「大豆」のほか「牧草」や「飼料米」が励行されたのもそのため。
しかし、政府は「水田活用の直接支払交付金」の現行制度(一面当たり35,000円支給)を改定する政策に転換したため生産の現場から猛反発。
自給率の高い米(98%)などは市況の変動はないが、低い小麦(15%)、大豆(7%)、飼料(25%)は常に世界市況に翻弄される。〝食の安全保障”のためには自国の食料自給率をあげる以外方法はない。
最近は農産物輸出を規制する国(アルゼンチン・ウクライナ・ロシア)もある。異常気象などの要因で大凶作になれば日本には農産物は入って来なくなる。自給率37%の日本は憂き目に遭遇することになる。戦争への危機がそれを速める。
食の安全保障のため、自給率をあげる政策に国は舵を切らなければならない。

[文・山田勝芳]

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