北海道の森林面積は554万㌶あり、総面積の71%を森林が占めています。日本全体でみれば22%を占め、全国で一番の森林面積を誇り、林業・木材産業がマチの基幹産業として発展してきました。今回は十勝管内の林業・木材産業を特集します。北海道十勝総合振興局林務課の森智弘さんに管内の特徴を聞き、代表する企業や団体を紹介します。
管内の森林の現状
―管内の森林・木材産業の現状を教えてください。
森 管内の森林面積は、土地面積の64%にあたり、全道の森林面積の12・5%を占めています。所管別では、国有林が全体の60%、道有林が7%、一般民有林が33%を占めています。また、林相別では、天然林が70%、人工林が25%を占めています。特に、一般民有林の人工林では、カラマツが大半を占め、十勝の主要な樹種となっています。林齢の高い人工林が面積で全体の約7割を占め、利用期を迎えて伐採量が増加しています。
管内では、市町村、森林組合、事業体や個人で組織された「とかち森林認証協議会」が、日本の森林の自然的・社会的立地に即して持続可能な森林管理を行っていると証明されたSGEC森林認証を約13万ha取得しており、道内でも特に市町村有林や私有林での取得面積が多い地域となっています。
北海道十勝総合振興局産業振興部林務課 森 智弘 さん
林業や木材産業従事者の現状
―管内の林業・木材産業の従事者の現状を教えてください。
森 林業従事者は人工林が利用期を迎え、伐採などの事業量は増加していますが、機械化などによる作業効率の向上が進み、概ね横ばいの700人前後で推移しています。しかし、60歳以上の割合が3割と以前高く、将来的には不足することが予想されます。一方、雇用形態は年間を通して林業に従事する通年雇用が増加し、従業者全体の約3分の2を占めています。
また、新規参入者は年間25人前後で推移し、通年雇用の割合は全道で約8割ですが、管内ではほとんどが通年雇用となっています。
担い手をどのように確保するのか
―管内では林業の担い手確保に積極的に取り組んでいるようですね。
森 管内では林業担い手の育成・確保を進めるため、2016年(平成28年)5月に、地域の林業事業体や教育機関、市町村など54の機関・団体により「十勝地域林業担い手確保推進協議会」が設立され、構成員が協力して担い手確保に取り組んでいます。
一般の方を対象に就業希望者や林業に興味のある方と事業体をマッチングする「林業・木材産業就職相談フェア」や林業への就業に向けた意欲向上の機会とする「とかち林業・木材産業魅力体験ツアー」を、管内高校生を対象に事業体とのマッチングを促進する「林業・木材産業セミナー」を、また、北森カレッジと連携してインターンシップや見学実習の受け入れなどを実施しています。
加えて、管内には帯広農業高校の森林科学科があることから、生徒たちに林業への関心や理解を深め、林業に就職してくれる人が増えるように林業体験を実施しています。
昨年10月には、農業高校森林科学科の1年生に対して、現場での林業体験を通じて専門知識・技術の習得を図る体験活動を開催しています。国有林での枝打ち体験のほか、SGEC認証を取得した木造建築や製材工場の見学を実施しました。特に1年生は入学して間もないので、林業とはどのようなものなのかを体験してもらっています。普段から学校で林業を学んでいることもあり、みんな真剣に聞いてくれています。
帯広農業高校生徒の枝打ち体験
脱炭素社会に寄与
―ゼロカーボンの取組も積極的に行っていますね。
森 昨年から振興局で「オール十勝・森と木のゼロカーボン普及啓発事業」を始めました。森林整備や木材利用に関する体験をとおして、「ゼロカーボン北海道」の理解を深めてもらうことを目的としています。
その一環として、8月には、「木の暖房フェスタ」を帯広競馬場で開催しました。「ぺレットストーブ、薪ストーブの展示」「丸太切り体験」「薪割り体験」「木工教室」「ばん馬記念レース」や、ゼロカーボン、森林認証、ばん馬と林業のつながりなどを紹介する「パネル展示」などを実施し、木質バイオマス利用などの理解促進を図りました。
また、炭素の長期間固定に繋がる建築物の木造化・木質化の取組として、モデル的な木造建築物を登録する「HOKKAIDO WOOD BUILDING」登録制度にSGEC認証を取得した十勝大雪森林組合と西十勝森林組合の新事務所を登録し普及PRに努めています。
―今日はお忙しい中ありがとうございました。
木の暖房フェスタ
●北海道十勝総合振興局 産業振興部林務課
TEL: 0155・27・8604
2023_11_04 | 11・12月号 2023年 北海道の林業・木材産業の今 連載 | 人材育成, 体験, 木, 林業