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力強すぎる道産小麦をいかに操るか?
北のスペシャリスト~食の専門家リレー【5】熊谷 明美 氏

イタリアンが日本人の食に多大な影響を及ぼしていることは誰もが納得するでしょう。うま味を重視する点や明瞭な四季がある等、日本と重なる分が多く、これらは豊かな食文化を育むうえで重要な鍵のように思えます。
一方で、日本よりも遥か昔から小麦粉をメイン食材としているイタリアンに道産小麦は通用するのか?という疑問が生まれます。この疑問に答えてもらうには、本場イタリアに加え、日本でもイタリアン経営の豊富な経験があり、確かな技術をお持ちのオーナーシェフが適任です。
そこで、小樽の名店ANDIAMO(アンディアモ)のオーナーシェフ・熊谷明美さんを取材しました。
アンディアモは小樽駅から徒歩5分。国道5号線から一本仲通りに入った閑静な静屋通りにあります。この地で営業して13年ですので、二度の震災に加え、コロナの甚大な影響を乗り越えたのは、多くのファンに支えられてきたからに違いありません。今の時代「美味しい」は絶対条件ですが、それに加えて心が悦ぶ居心地の良さ、実直さといった点がお客さんの心を満たしてくれる源泉だと思われます。

二度にわたるイタリア修行

熊谷さんは若くして自分と向き合い、考えに考え抜いた結果、イタリアンの世界に飛び込むことにしました。東京や札幌等のイタリアンに勤める一方、導かれるようなタイミングで二度にわたりイタリアへ渡航し、本場イタリアンの修行を経験されています。二度目は星付きレストラン等で5年にも及ぶ体力的に大変ハードな修行になったそうです。
思い返すと、子供の頃からコツコツ取り組む性格で、夢中になるとトコトンやり抜いてしまう。好奇心旺盛で粘り強く挑戦する気質が、厳しい修行を乗り越え、さらにはコロナさえ乗り越える強さを備えているように思えます。もちろん、お店は一人で出来ません。長年勤めているスタッフ達との阿吽の呼吸が支えになっていることは言うまでもありません。

 

料理に重要な水の違いを意識

アンディアモのオープンからしばらくの間は、長年使い慣れている、比較的安価で手に入りやすい外国産の小麦粉を取り寄せて料理を作っていました。本場での経験から、パスタやピッツァに最適な外国産小麦粉を熟知しているからです。
一方で、「水」の影響も気になるところでした。イタリアは硬水が主流ですが、日本は軟水の国です。そのため、必ずしも本場と同じ料理が出来る訳ではなく、イタリアンの基本を大切にしつつ、日本人にも合うイタリアンを生み出す…その源泉は水であろうと。
この発想と「豊かな北海道産素材を活かそう!」という社会の流れが重なり、いよいよ北海道産小麦と向き合うことになりました。

 

オーナーシェフ熊谷明美さん(左上)と、阿吽の呼吸で切り盛りする皆さん

 

北海道産小麦と向き合って

北海道産の様々な小麦粉を取り寄せて試作を開始しましたが、最も大きな壁は「道産小麦が力強すぎる」ことでした。
複数の小麦粉を様々な配分でミックスする等の試行錯誤を重ねた結果、今ではピッツァ全品で道産小麦粉100%を達成し、パスタにも、ふんだんに取り入れています。熊谷シェフは仰います。
「今は、道産小麦粉ならではの風味豊かで、もっちりとしたボリューム感のある生地が、ANDIAMOのピッツァとして満足しています!」と。
また、特徴的なパンの素材であるライ麦もオール道産を実現しており、トコトンまでやり抜く誠実さが強く感じられます。

 

 

塩にも想いが

また、うま味や甘みのバランスで塩を選び、絶妙な加減によって料理を作り上げ、美味しさと健康のバランスを取ることにも苦心されているそうです。
お客さんの笑顔や健康を一番大切に想っているお店。取材しなければ知る由も無かった想いの深さを知り、今度お店へ伺う時の美味しさは格別になりそうです。
(境 毅)

 

 

 

 

●ANDIAMO(アンディアモ)

小樽市稲穂2丁目16―11

TEL: 0134・33・3733

ランチ:11時30分〜14時

ディナー:18時〜21時

定休日:月曜日

(月1回火曜不定休)

ANDIAMOホームページ

オーナーシェフ・熊谷明美

東京や札幌等のイタリアンに勤める。

二度にわたりイタリアへ渡航し、本場イタリアンの修行を経験。

星付きレストラン等で5年ほど修行する。

 

2023_03_22 | 2023年 3・4月号 イーハトーブ 連載 食の専門家リレー | , , , ,