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特集記事

2024_05_03 | 2024年 5・6月号 連載 | , | 編集部イーハトーブ

森をまもる、育てる、活かす
終戦直後、札幌に進駐軍が来て「藻岩山にスキー場を作れ」の命

「森を守る・育てる活かす」ということ

森は天然林帯と人工林帯がある。札幌の藻岩山は天然林帯(天然記念物)の保護林として現在も保全されている。

 

天然記念物の藻岩山に「スキー場を作れ」の命

逸話がある。来年は終戦80年だが、終戦直後の札幌に進駐軍(アメリカ軍)がやって来た。そして言い出したこととは「藻岩山に隊員たちの慰労施設としてスキー場をクリスマスまでに作れ」だった。

困ったのは当時対応した役人たち、「藻岩山の樹木は天然記念物だから伐採できない」。
しかし、超法規的に森が伐り拓かれて「藻岩山スキー場」が完成を見た。この時の現場指揮がかの堂垣内尚弘さんで、のちの北海道知事だ。3か月間の突貫工事を命懸けでやりきった。
アメリカ兵が引き上げたあとも、藻岩浄水場の右手側をアメリカンスロープと呼び、近隣にある小学校のスキー学習のゲレンデとなった。

軍隊が引き揚げた後はリフトを取り外した。復元方法はいろいろ議論されたが、この時の選択は「自然林の植え付けを一切やらず、自然再生に任せる」だった。現在の藻岩山ロープウェイあたりだが、現在ではスキーコースも見分けられないほど見事復元した。

 

間伐材を使うことで森は活性化する

話が脱線した、本論に戻ろう。
天然林がある一方で、道内各地の山林にはカラマツに代表される人工林が広く植林されている。伐採の適齢期は40年程度といわれている。
ここは人の手を加えないとむしろ荒廃してしまう。密集しないように適度に間伐や枝落し、下草刈りをして森を守るため人の手をあえて加えなければならない。日々、森林組合の職員が森の管理をしている。

ここから伐り出される間伐材はそのまま森に放置ではなく、林道を使って運搬し製紙会社や製材所に持ち込まれ、建材や梱包材、チップ材に利用されてこそ森の循環といえる。木の樹皮でさえ、木工場の乾燥室用ボイラーの燃料となる。隅々まで余すことなく、利活用する。
守るべきは守り、植樹等育てるべきは育てて、伐り出された材は余すことなく利活用する。最後に植林をすれば、ゼロカーボンだ。
消費者も地域材を上手に活用することで、環境保全に深くかかわりが持てる。

ひところ、当麻町では地元材を使って住宅を新築すれば、町から助成金がつく制度があった。当麻町の森の活性化のためこの制度の仕組みを作ったのだろう。
そのほか、町内の公共施設は町有林の木材を活用する政策を実施した自治体もある(浦河町営保育園・幼稚園)。陸別町では「役場庁舎」が町有林を活用して木質庁舎を建造した事例もある。

 

木に縁りて魚を求む

森に魚は棲んでいない、当たり前の話。つまり諺の意は「まったく的外れな行為で何も得られない」という意味だ。

しかし、どうでしょうか? 川の上流域に植樹をすれば、海の魚や貝類は増えるといわれている。つまり、理屈上は木が流域に多いと滋養分が川に流れだし、植物プランクトンが増殖する。それが海に辿り着くと、今度はそれを動物プランクトンが捕食する。今度は小魚が動物プランクトンを食べて、最後は大型魚がこの小魚を捕食する、こんな「食物連鎖」がある。

それを考えると漁師や漁業関係者の植樹活動は「木に縁りて魚を求む」ことは「ゆくゆく魚を獲ることに辿り着く」になりませんか? 筆者はこんな諺がスキデス。
このほかにも「木」の付くことわざはいろいろある。その中でも「枯れ木も森の賑わい」って、なかなか味のある諺で、枯れ木と己をダブらせてにやけている次第。まだまだ、枯れませんゾ。

2024_05_03 | 2024年 5・6月号 連載 | ,