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特集記事

2024_09_16 | 2024年 9・10月号 編集長のひとりごと | | 編集部イーハトーブ

【編集長のひとりごと】食と農を取り上げて四半世紀 随分と歩いて来たもんだ

日本の食料備蓄基地を農業王国の北海道が担う責任がある!

2000年、この農業応援新聞「イーハトーヴ」は産声を上げた。以来、四半世紀近く編集路線を大きく変えることなく淡々と歩んできた。
無料紙といえば、一般的には営業色が強く、発行目的も曖昧なものが多い中、「この路線でよく続けられるね」と知人たちは不思議がった。
グルメや観光モノ、趣味のペーパーではなく真面目過ぎるほど社会と正対し、食と農(巨視的には一次産業全般)の大切さをひたすら説くペーパーを発行してきた。
その知人に対して私は答える、「価値観の変革を促す社会活動だから止めるとすれば活動に意義を見出せなくなったとき」。

 

新聞名の意味もよく訊かれた。新聞名は童話作家・宮沢賢治の造語を使わして貰った。
自然との共生を考えた賢治は、人の様々な営みの中でも農業が最も自然と共生するのに相応しいなりわいとみていた。賢治のいた花巻に理想郷イーハトーヴの里を創りたいといつも考えていたのだろう。そう、これにあやかって名付けた。こうして食と農に特化した、全国的に見て無二のフリーペーパーが誕生した。

 

1日1杯の牛乳が元気な体をつくり明日の酪農を育む

創刊のころ、農業団体のある役員に「どうして有料紙にしなかった?」と訊かれた。この問いに対して「有料紙は部数が知れている。食と農の大切さを説く啓蒙活動のため、無料で全道くまなく配布体制をとり多くの消費者を巻き込んで啓発したい」、この理念は今でも本紙の不朽の理念だ。

発行当時は地産地消(域産域消)ということばも広く行き渡ってはいなかった。家庭や外食産業界の、国産率を高める食卓革命・厨房革命を訴えてきた。食料自給率を意識した生活スタイルの提案だ。今日では緊迫する世界情勢から政府も食の安全保障を考えざるを得なくなった。しかし、この論に辿り着くのが遅く自給率は38%からなかなか数字は伸びてこない。まさに国の大きな失政だ。

戦争や異常気象、さらに所得格差による貧困層の増加が、食料が万遍なく行き渡らなくなる、つまり飢えの常態化だ。そうならないために、食の安全保障の政策は国の基本政策としてやるべきだった。終戦時はほとんどのものが自給されていたのだが、自由経済で放置されて、現在のような自給率38%になった。国家百年の大計は今からだ。

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