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特集記事

2019_01_22 | 1・2月号 2019年 特集 | , | 編集部イーハトーブ

極良食味米「ゆきさやか」を知っていますか

極良食味米「ゆきさやか」の知名度は、「ゆめぴりか」に比べてはるかに低い。しかし、その食味はそれに勝るとも劣りません。2010年に「品種登録」され、2016年秋に「産地品種銘柄」の認可がおり、晴れて「ゆきさやか」と名乗ることができるようになりました。しかし、なぜここまでの時間がかかったのか。なぜ「ゆめぴりか」のように流通しなかったのか。そこには、品種自体の弱点と米の流通の問題が横たわっています。

「ゆめぴりか」に勝るとも劣らない極良食味米「ゆきさやか」

良食味米の判定基準として、アミロース含有率やタンパク質含有率が低いほど美味しいと言われています。「ゆきさやか」のアミロース含有率は、「ゆめぴりか」よりやや高いが、タンパク質含有率は「ゆめぴりか」よりも低く、数値上も「ゆめぴりか」と同等の良食味を示しています。
加えて、「ゆきさやか」のアミロース含有率は、出穂後40日間の平均気温をいう登熟気温による変動が小さく、食味が安定しています。また、ご飯の白さにも優れていて、つやがあり、雪のように白く清らかです。
「ゆめぴりか」の品種登録は2008年でした。それに遅れる2年後に「ゆきさやか」は品種登録をしました。しかし、その後の明暗はくっきりと分かれます。「ゆめぴりか」は北海道米の最高峰に君臨し、一昨年度をみると、作付面積は19、493㌶で全体の23%を占めるに至っています。一方、「ゆきさやか」は2016年秋にようやく「産地品種銘柄」の認可がおり、晴れて「ゆきさやか」と名乗ることができるようになりましたが、知名度も低く、作付面積も100㌶にも満たない。同等の食味を持ち、品種登録された時期も大きく違わないのに、何故ここまでの差が生まれたのでしょうか。

 

国の機関である北海道農業研究センターで開発された「ゆきさやか」

新たな品種の開発など農業に関わる機関は、道と国に並存しています。道では「北海道立総合研究機関(道総研)農業研究本部」がそれで、「ゆめぴりか」を開発したことで有名な上川農業試験場など、8場1支場が道内に配置されています。一方、国の機関は「農研機構北海道農業研究センター(北農研)」で、「おぼろづき」そして、「ゆきさやか」はここで開発されました。 「育成を始めたのが1998年で、品種登録をしたのが2010年です。しかし、品種登録をしても、販売する米袋に『ゆきさやか』と記載することはできません。それを可能にするのには『産地品種銘柄』の認可を受けなければなりません。これは我々が申請するのではなく、生産者が行うことになっています。2015年に旭川の市川農場さんが申請をして、それでようやく翌年に『ゆきさやか』という名称を使えるようになりました。この辺りに知名度の低さの要因の一つがあると思います」と北農研の水稲育種グループ長の梶亮太氏は言います。
ならばなぜ生産者はなかなか「産地品種銘柄」に申請しなかったのでしょうか。

 

梶 亮太さん

 

「ゆきさやか」の光と影

 

「その最大の原因が、他の稲に比べて『葉鞘褐変(ようしょうかっぺん)』という病気の発生率が高かったからです。これは北海道特有の病気で稲の穂が褐色になってしまう病気です。このため道の奨励品種になれず、ホクレンさんも申請は見送りました。しかし、冷害に強く、良食味米という評価だったので、全道への普及は無理でも、地域限定での需要はあると判断し、品種登録をさせていただきました」と「ゆきさやか」の弱点を梶氏は指摘します。
ホクレンが申請をした品種であれば、自動的にホクレンの流通経路で販売先が確保されますが、そうでなければ一生産者が自力で販売先を見つけなければならず、その販売力や独立性が問われることになります。生産者がなかなか申請しなかった原因はここにあり、それに果敢に挑戦したのが先述の旭川の市川農場でした。

 

市川農場のゆきさやか

 

「ゆきさやか」ブランドの確立を急げ

毎年11月に蘭越町でお米の日本一を決める大会「米-1グランプリ」が開催されています。これまでに、むかわ町の小坂農園や富良野市の大石農園が「ゆきさやか」で出品し、最終選考に残っています。栽培が難しくても、一度栽培した農家の方々は、その食味に満足し、継続栽培しているのです。
また、JA南るもいでは2011年から、「夢味心(ゆめみこころ)」という名前で、併設しているAコープ「ルピナス」で限定販売をしていますし、札幌の千野米穀店では「北国の龍」という名前で販売しています。さらに、最近ではJA新おたるの赤井川エリアで積極的に栽培をしていて、道の駅で「ゆきさやか」として販売をしています。
ただ、種もみに制限があり、販売先の確保を考えると、今後、1000㌶とか2000㌶に広がって、「ゆめぴりか」の一部分を補完するというところまではいかないでしょう。
ただ、そこを逆手にとって希少価値をPRすることにより、ブランド化も十分に可能なはずです。

 

北海道農業のために道と国の連携を強める

北海道における新品種の開発は、圧倒的に道・ホクレンのラインがイニシアティブを持っています。大部分の生産者にとって、販売先が確保される品種はやはり魅力です。北農研の開発した「おぼろづき」のように道の奨励品種になれれば、そのラインに乗り、生産から販売まで確保できますが、そのようなことは滅多にありません。
「ただ、道の農業試験所で開発された品種でも、その親をさかのぼれば、北農研で開発した品種であることも多い。『ゆめぴりか』の片親は、粘りの強い品種である『北海287号』で、北農研で開発したものです。また、道内に適した多収の飼料米である『きたげんき』なども開発しています」と梶氏は道の機関との連携の大事さを強調します。
昨年から減反政策は廃止され、国の生産調整はなくなりました。当面は道の指導により、劇的な変化はなさそうです。しかし、近い将来を考えれば、それぞれの生産者が差別化を図っていく大きな流れの中で、「ゆきさやか」の存在意義もまた増していくのではないでしょうか。

 

農研機構北海道農業研究センター(北農研)

札幌市豊平区羊ヶ丘1番地

TEL: 011・857・9311

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