IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー

IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー
  • 紙面版を見る

北工学園卒業の介護福祉士、地域 おこし協力隊員として道内で活躍中!

学校法人・北工学園(東川町)で介護福祉士の資格を取得した卒業生が、今年から「地域おこし協力隊員」として道内の介護福祉施設で活躍している。湧別町、幌加内町の応募にマッチングした3名にスポットをあて、地域に貢献すべく奮闘する外国人留学生たちを紹介する。

(取材・文/伊藤孝)

地方創生の根幹に地域福祉 新体制の北工学園

2017年9月、わが国は外国人在留資格に「介護」を加え、外国人の力を借りて日本の介護現場を支えることを選択した。
翌年、上川管内東川町は、「外国人介護福祉人材育成支援協議会」(会長 菊地東川町長、副会長 谷鷹栖町長、細川幌加内町長)を設立。同年、同町の学校法人北工学園が外国人を介護福祉士として養成すべく新体制でスタートを切った。
地方創生の根幹に地域福祉があり、その担い手を育てることこそ真の基礎となるという信念を持つ東川町は、同町以北では介護福祉士・保育士を育成できる唯一の機関として動き出した。
東川町には同校のほか、15年に開校したわが国初の町立日本語学校があり、現在では日本語学校が短期留学生を、北工学園旭川福祉専門学校が長期留学生を受け入れる体制が整っている。
介護福祉士や保育士を目指す外国人留学生には、協議会の正会員である28市町村から、1人2年間で740万円の奨学金が出るほか、学費、寮費、生活費を月7〜10万円出すことで、アルバイトせずに介護福祉士を目指して勉強できる環境を整えた。

 

北工学園には学校農園があり、学科の耕作作業、ゼミ活動、課外活動などで野菜、果物、花卉などを育てる。土に触れる喜びは外国の人も同じだ

 

地域おこし協力隊制度を活用して学生を育成する

果敢に新しい挑戦を続ける北工学園は、続いて東川町とともに「地域おこし協力隊」制度を活用して、学生を育成する試みに着手した。
これは、まず東川町に地域おこし協力隊員として入ってもらい、町内で従事する傍ら、資格養成機関において、地域活動への参加、資格取得などを経て、介護福祉士や保育士として活躍してもらうというもの。
地域おこし協力隊員の勤務地は、同校および町内福祉・教育施設。雇用期間は任用した日から1年間、最長3年間。募集人数は介護職5名、保育職5名で計10名程度。
待遇は、3年間で上限468万円+住居費が支給され、介護福祉士、保育士などの資格取得のための費用は全額免除となる。社会保険完備のほか、年次有給休暇は20日以内。在学中に普通自動車第一種免許の取得補助も受けられる。

 

北工学園卒業の介護福祉士、地域おこし協力隊員として道内で活躍中!

湧別町に夫婦で着任地域に貢献したい

今年4月1日、紋別郡湧別町にやってきたインドネシア人の夫婦、ムハマド・ルギ・ウィバワさん(30)と、プリリ・デリスタ・プルマタさん(29)。外国人として初めての地域おこし協力隊員となる2人は、現在、町内の特別養護施設「湧別オホーツク園リラの杜」と「湧愛園」で1人ずつ勤務している。
ルギさんは、以前、日本企業に勤務していた経験があり、プリリさんは、バリ島で友人と旅行関係の会社を立ち上げ、日本人観光客と接する機会が多かったという。日本語検定では、ルギさんがN2、プリリさんがN3を取得しており、特にN2は通訳ができるほどのレベルとされる。
ルギさんは、「湧別町での新たな生活のスタートにあたり、これまで得た経験と知識を人々との関わり方や仕事に生かしたいと思います。地域の活動にも積極的に参加し、地域に貢献できるようにしたいと思います。そして、このまちの美しさ、心地よさを多くの人に伝えたいです」と話す。
プリリさんも、「北工学園の行事で初めて湧別町に来たときから印象に残っていました。このような素晴らしいまちで介護福祉士の仕事をしながら定住し、家庭を作りたいと思います。地域の皆さんと協力することができるよう頑張っていきたいです」と話す。

 

ムハマド・ルギ・ウィバワさん(左)と、プリリ・デリスタ・プルマタさん

 

日本語教育が施設内コミュニケーションで高評価

湧別町では、東川町が主催する外国人介護福祉人材育成支援協議会に参加し、北工学園の卒業生に来てほしいと応募。入学生徒数の上限があるので、なかなか希望通りの人数に来てもらえないのが普通なのだが、今回、希望通りの人数2人に来てもらえたことを喜ぶ。
湧別町福祉課の前野和憲課長は、「学生さんの希望する市町村とマッチングするかどうかが難しいのですが、うちは湧別オホーツク園と湧愛園の町内2ヵ所で希望を出したので、ご夫婦で同じ町内に住んで働けるということで来てもらえたのかもしれません」と話す。
「何といっても北工学園さんは、介護福祉科を持っていて、外国人の介護福祉士を育成しているのが一番です。しかも卒業生は皆が日本語をきちんと勉強しているので、高齢者や他の職員とのコミュニケーションがきちんととれますし、介護記録も正しく記入できるので、施設側としても非常に助かります」

 

湧別町の特別養護老人ホーム「湧愛園」

 

幌加内町の高さん施設で作った中華料理が好評

設立当時から東川町の協議会に参加している雨竜郡幌加内町に、今年4月から初の介護人材の地域おこし協力隊員としてやってきたのは、中国・遼寧省の高慧倫(こうけいりん)さん(25)。
幌加内町には、現在、中国、韓国、ベトナム、インドネシアから6人の外国人が来ており、男女比は半々。全員が介護資格を取得した北工学園の卒業生で、地域密着型特別養護老人ホーム「テルケア」で一生懸命に働いている。
高さんは日本語検定N3の実力を持ち、日常会話などには全く支障がないだけでなく、勤務態度は非常に真面目で人当たりがよく、施設の利用者に明るく接している姿が甲斐甲斐しい。
高さんは、「初めて仕事で見知らぬまちに来て、わからないことがたくさんありましたが、介護職員として勤務し、先輩職員の方に仕事内容を教えてもらいながら、利用者さんの日常生活を覚えています。5月には『中華料理』をテーマにしたレクリエーションを企画し、参加しました。ほかの職員の人に利用者さんの好みを確認し、皆さんに味わってもらい、『美味しい』という言葉も聞かれ、笑顔も見られ、嬉しく思いました。毎日の仕事を通して、利用者さんの幸せそうな笑顔を見ると満足感が得られます」と話している。

 

利用者に優しく接する高慧倫さん

 

幌加内町保健福祉課の加藤誠一課長は、「もともと小さなまちなので、外国の方が町民と顔見知りになるのも早く、介護施設で働いてくれる外国の人たちは、皆がとても真面目に働いてくれます。奨学金を出した人たちはまだ1人も辞めていません」と喜び、彼らが幌加内町に定住して施設に勤め続けてくれることを期待している。

 

幌加内町の地域密着型特別養護老人ホーム「テルケア」

2024_11_16 | 11・12月号 2024年 巻頭記事 | , , ,