人口減少が常態化する現代社会、道都・札幌の人口減少もすでに始まっており、地方は札幌よりさらに厳しい環境にある。その中にあって、根釧地域で若者世代に俄然注目を浴びている自治体をクローズアップする。
日本の食を支える別海町
北海道の東側、道東地域に位置する別海町。酪農業では生乳生産量日本一を誇り、漁業ではホタテ、秋鮭などを中心に年間2万トン以上の漁獲量を誇る、日本有数の食糧生産基地である。別海町ならではの食材を通じ、日本の食卓を彩り、食べる楽しみを提供してきた。
しかし、その一方で町の人口は1961年をピークに減少しており、このままでは食の楽しみを提供するのみならず、生きていく上での食べ物の確保にも支障をきたすことも考えられる。
そこで別海町では、「地域おこし協力隊制度」を活用し、地域外の都市部から地域活性化に取り組んで貰う人財を確保する方針を掲げ、2023年度から地域おこし協力隊の採用を強力に推進してきた。
2023年度当初で8名だった隊員が、2025年6月1日現在では52名まで増加し、移住定住、観光、教育など、幅広い分野で活躍している。
別海町で協力隊が増加している理由
なぜ、道東の小さなまちに多くの隊員が着任したのだろうか。 隊員からは、「自然がいい」、「人がいい」、「自分の強みを活かせる」などの声が聞こえてくるが、理由は大きく2点が考えられる。1点目は産業や豊かな自然環境に大きなポテンシャルを秘めていること。2点目は多様な人財が活躍できる場が用意できること。
地域内で生産される生乳や肉、海産物から生み出される多様な特産品は、ふるさと納税制度の返礼品としても喜ばれており、2023年度は全国各地から約92万件、約139億円の寄付を受けた。豊富な原料を加工し、新たな特産品を生み出すことができれば、別海町の新たな価値がもうひとつ増えることになる。
また、日本一の砂嘴(さし)である野付(のつけ)半島では日本に生息する野鳥の約4割が観測できたり、野付半島の内湾では厳冬期になると凍った海の上を歩く(日本で唯一)体験ができたり、エゾシカやキタキツネといった北海道ならではの野生動物が郊外で簡単に見ることが可能だ。別海の自然環境は日本全国、世界にも通用する大きな武器になっている。
このように、地域活性化の種となる要素が多くあることで、これまで様々な経験をした人々に対してそれぞれの強みを活かせる場を作れること。恐らくこれが別海町に多くの地域おこし協力隊がやって来る理由なのだ。

別海町内で地域活性化に取り組む協力隊員のみなさん

野付半島の木道から見るリフレクション
撮影:柄木孝志
別海町の活性化が 日本の食を支える
別海町では、地域活性化を更に推進するため、現在も地域おこし協力隊を募集中。
主に、地場産品を活用した〝商品開発〟や、道の駅を舞台に観光客を自慢の特産品で〝おもてなし〟する隊員を募集している。その他にも、幅広い分野で個々人の強みを生かす活動の場が提供される。
日本の食を支えていくため、まちをあげて若者たちの来町を待っている。
日本一の酪農郷で酪農業を一から学ぶ
別海町では、1996年から3年間で酪農経営に必要な知識・技術を夫婦又はパートナー同士で学ぶことができる研修施設「別海町酪農研修牧場」を設置し、これまでで80組を超える新規就農者を輩出してきた。
3年間の研修期間は、「有限会社別海町酪農研修牧場」の職員として働き、給与をもらいながら酪農について座学、実習で幅広く学ぶ。全国的に見ても酪農業の研修制度は珍しく、広大な大地に建つ研修牧場を舞台に本番さながらの状況で学べるのは酪農日本一の別海町ならではだ。 地域の絆が強く、酪農業に必要な冷涼で広大な土地、そして美味しい空気と水もある。人にも牛にも優しいこのまちで、酪農家になる夢を持つ人を待っている。
3年間の研修カリキュラム
■1年目:基礎知識・技術の習得期間 (酪農経営の概要と年間の作業構成の把握、乳牛の飼養管理と農業機械操作習得等)
■2年目:基礎知識・技術反復および応用技術養成期間 (家畜の飼養管理、農業機械の操作、飼料の収穫調製、家畜疾病の対応・予防技術の習得)
■3年目:経営技術養成および就農準備期間 (就農に向け、より主体性を持たせた中での家畜の飼養管理、農業機械の操作、家畜疾病の対応・予防、経営全体の把握等)

新規就農者のファミリー
適正により見極める 3つの進路
研修を修了した後の選択肢は、大きく3つある。
自分で牧場を経営する「新規就農」のほか、別の経営者の下で働く「酪農牧場の従業員」、そして、酪農家が休みを取る際に代わりに仕事を請け負う「酪農ヘルパー」だ。研修期間中に自分たちの適性を見極めて修了後の進路を選択できることが、この研修制度の一番の利点と言える。
国、町、JAからの手厚い就農支援
また、新規就農に関しては、安心して酪農業をスタートできるよう、様々な支援策を用意している。例えば、国による「新規就農者育成総合対策(経営開始資金)」や町とJAによる「就農奨励金」といった各種助成金、その他長期・無利子で貸付を行う「青年等就農資金」という融資制度などがある。別海町やJAグループ、酪農家の先輩たちがしっかりサポートをしてくれるので安心な環境が整っている。
日本一の酪農のまちでの研修を通じて、それぞれの希望や適性に合わせた酪農の道をじっくり探すことができる。あなたの夢を叶える舞台は、別海町なのかもしれない。

















