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特集記事

2023_07_20 | 2023年 7・8月号 特集 | , , , | 編集部イーハトーブ

【提言】
苦境にある北海道酪農を私たち消費者で支えよう

苦境にある今だからこそ、酪農の未来像を見定めていきたい。日本全体の生産量の50%超を道内で生産しているのだから、酪農の北海道方式を生み出したい。生産者も消費者も、苦境を機に、自発的に北海道酪農を変革していかなければならない。
文責 山田勝芳

内に地産地消を唱えつつ地産地消でない酪農の姿

生産者には皮肉っぽく聞こえるに違いない。しかし、生産者のこれまでの経営法にも問題があったのではないか。コロナ、ウクライナ問題から、一機に酪農の脆弱さを露呈したのではないか。
いつもは消費者に説法のごとく「地産地消」を呼び掛ける筆者だが、その真逆を歩んでいた今の酪農の経営法をやり玉にあげるのだから、筆者もやりづらい面もある。でも今回は生産者にも多少きつく提言しなければならない。
日ごろ、消費者には自らの生産物を原料とする地元産の牛乳や乳製品の選択を求めているにもかかわらず、自分の牧場で使う飼料では、粗飼料(牧草)の自給率は76%、穀物中心の濃厚飼料は12%だ。そして、2つの合算した飼料全体の自給率は実に25%だ。この大方の選択は「輸入した方が安く済む」という、観念めいた過去からの発想が前提となっている。
「口から食べた食物によってのみ己の体が作られる」の論に従えば、日本の乳牛の体の75%は外国由来の食べ物からなり、国産由来は25%だけ。地産地消の論からは遥かに遠い数字だ。
道は「牛乳をもっと飲みましょう」「バターやチーズなど乳製品を買い上げましょう」と唱えているが、結局のところ、「75%の外国産、25%の国産」の現実を考えれば、大方が飼料輸出国への貢献となってしまうのではないか。
飼料の国産率を高めて穀物価格の乱高下に翻弄されない、本来の酪農業を極めていけたら、それに越したことはない。筆者の知る乳牛1000頭を飼育する或る牧場オーナーは「外国依存のこれまでの反省に立って、酪農本来の姿に立ち返りたい」と、今年からデントコーン畑を拡大するなど〝餌の国産化〟に方向転換する。もちろん100%達成はすぐには無理だが、弛まぬ努力を評価したい。

 

 

 

乳量至上主義から脱却ストレスのない飼育法へ

なぜ濃厚飼料(トウモロコシ、大豆など)が必要か。それは販売収入に直結する乳量を増やしたい、乳脂質の高い生乳を求めたいから。日本の酪農は今日まで「それでよし」とされてきた。いわば乳量至上主義の酪農業だ。
筆者の知る或る牧場は〝1日3回搾乳〟だ。当然濃厚飼料も多めに与えており、牛にはその分肉体的負担がかかる(搾乳可能年数、寿命も短いから早目の処分となる)。大部分の酪農家は朝と夕方の〝1日2回搾乳〟が一般的だ。
動物福祉の観点からもストレスのない(少ない)飼育法が待たれている。
従来からもあるのだが放牧型酪農がそれといわれている。道もこのところ飼料の価格高騰の問題もある中でそれの解決策ともなる、自給型放牧を奨励する。牧場によっては24時間放牧のままの牧場もあるが、これが動物本来に近い飼育法かもしれない。自由気儘に牧草地を駆けまわる、動物本来の姿だ。
余談だが、標茶ではヒグマ〝OSO18〟による乳牛被害も報告されている。捕獲作戦は進行中ながら執筆中の6月18日現在、OSO18の所在はまだ把握できていない。放牧型酪農に水を差すようなもので解決が待たれる。
道北の天塩町に宇野牧場がある。この牧場はニュージーランド型放牧酪農のスタイルで、土づくり、草づくりをすることで穀物を一切与えない「飼料自給率100%」の酪農を実践する。
2019年には有機飼料、有機畜産物、有機加工食品の有機JAS認証を取得し〝日本最高峰の牛乳〟と銘打ち「有機牛乳」を販売している。前段で触れた論に従えば「外国産飼料0%、国産100%」の、純国産の乳製品ということができよう。完璧主義にならないまでも飼料の国産率をとことん追求する酪農業でありたい。

 

乳製品の備蓄型工場を国策ならぬ道策で実施を

本来それをどこがやるべきか、考えてみたい。「食料安保の観点からもそれは国がやるべき」、大概の議論の結論はそうなると思われる。しかし、結論先延ばしで5年先、10年先の話になる。北海道の酪農は待ったなしだ、そこまで悠長に待てない。廃業の危機にある。筆者ならば、先んじて「道が実施すべき」に落ち着く。
農産物はダブつけば価格も下がり、あるいは廃棄に回される。民間会社は必要以上に引き受けてはくれない。いつも困るのは生産者。

過剰生産物の引き受け手がない。ならば国が当てにできないのであれば〝道独自〟で設置すればいい。食料生産基地、農業立国を自負するのなら可能なはず。
生乳も廃棄することなく、生乳余剰分を道営備蓄工場へ。コメや農産物も余剰分を道営工場へ。
国内の災害や天候不順で品薄になれば放出する。飢饉の国・地域や戦乱の地は、国や国連が実施する支援物資として購入しもらい、各国へ送ってもらう。
昔からチーズの消費拡大は酪農を支えるといわれていた。しかし、チーズの86%は輸入品(自給率は14%)という、早くから輸入自由化された現実がある。乳業大手のチーズのラベルの表示をよく見よ、外国産を上位に国産品を加えて上手にブレンドされている。 逆に、バターは禁輸品だが、「国際公約」といいつつほぼ毎年9万5千tのバターが国家貿易で輸入されている。バターの自給率は88%だから本来は輸入ゼロでもいいはずだ。実需者は洋菓子や外食店の業務用が大半だ。
これらを勘案すれば、チーズの個人消費は増えており、酪農の大きな下支えは国産チーズを購入することが手っ取り早い。学校給食の有償・無償化に関わらず、牛乳は官費による負担でフリードリンク化する。子どもらが酪農を強力に下支えする構図だ。

 

 

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