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特集記事

2026_01_04 | 1・2月号 2026年 イーハトーブ 特集 | , , , | 編集部イーハトーブ

【アーカイブ イーハトーヴ25年】
イーハトーヴを愛するすべての人に 25年経っても冷めやらぬ熱き思いを
これからも伝え続けていきたいー。

車やスマホは文明の産物、世界中に存在する。そこに日本的な、日本人的な文化性は微塵もない。農業にこそ、日本が、日本人が誇る産業文化が存在する。これが本紙に流れる不朽の哲学だ。

編集長 山田 勝芳

農業対策が後手、TPP に向かう日本が失うもの

11年 1 1・1 2月号

日本政府はTPP参加の意思を対外的に表明しそうな中で、さらに国民世論のTPP参加支持が上回っている中で、本紙は「反対」の意思表示を明確にした。この間、農業・農村対策が何も提示されない中、経済最優先で見切り発車となりそうである。「日本的なもの」「日本人らしさ」まで瓦解するのではないか。

TPPはある意味で文明と文化の衝突という側面を持っている。文明とは世界基準で万国共通の価値観に置かれる。高度技術や加工度のすぐれた商品でかつ低廉な価格の商品が市場を席巻する。優勝劣敗の法則のみが罷り通る。一国の経済を見た時、お金の稼ぎ方だけで判断すれば「文明」は「文化」よりもずっと勝っていることは自明の理。

しかし、「日本的なもの」、「日本らしさ」とは他の国が模倣できない「文化」で、日本が真に日本たり得る所以だと考える。例えばユニクロの売り出すファッションは世界基準(仕様)で売れても、日本独特の着物は世界のどこの国で売っても採算がとれるほど売れる商品ではない。着物は日本でのみ息づく文化。「和服が似合う」、「和服を着てみたい」と思う感性は日本という国に土着する日本人の魂、精神の中にこそ息づいている。桜に寄せる特別な感性もまた、日本人だから解する精神文化だ。土着する日本人の文化性とはそんなものではないか。

文化は他国に切り売りできないし、他国の文化もまた日本に定着もできない。他国の文化がその国の国民に受け入れられたとしても、数百年の歳月をかけなければ心に土着した文化とは言えない。

農業は英語でアグリカルチャアというように、まさにそれぞれの国の文化。ここから農業は文化という前提で表現したい。

桜をめでる文化性、着物をめでる文化性、里山で不思議と安らぎを感じる文化性、農耕をめでる文化性、日本人ゆえそれらを感じ取れる。TPPに突き進み、日本型農業が崩壊したとき、日本人のよりどころが消失する。「水が合う」「土地が合う」という日本人らしさもなくなるのではと危惧する。

 

国土に土着する農業こそ 真の日本ブランドになる

12年 1 ・ 2 月 号

福島の原発事故を機に、これまでの「日本経済は成長を続けなければならない」という価値観が「果たしてこれでよかったのか」という反省を国民に提起した。右肩上がりの経済成長よりも、「安定成長で安全な暮らし」を強く求めるようになった。生活様式も節電・省エネを取り入れ、環境に配慮した暮らし方へと変化した。それでも日本は今、TPP参加にまっしぐらだ。

国からTPPの中身に関して何の説明もなく国会での本格的な論戦もなく、メディアや言論界はそれぞれの立場から推進論、慎重論、反対論を説いている。

しかし、国民が日常目にするメデイアの多くはどちらかというとTPP推進の論調が目立つ。良くても両論併記の慎重姿勢であり、本紙のように反対論を明確にするメディアはむしろ少数派といえる。その中で世論調査をしてメディア各社は発表するが、果たしてそれがどれほどの意義を現時点で持つのか。それに対しては筆者は非常に懐疑的にならざるを得ない。

国民の生命を維持する日本の「食料政策」の方向を決める重要課題なのに、なぜ公開された場を設けて国民的議論を深めようとしないのか。売名的な事業仕分けはよく公開していたのに不思議だ。

推進派、慎重派の論理も「農業対策をしなければ日本農業は崩壊する」という点では共通認識にある。しかし、手厚い対策をしても日本農業は縮小し、やがて崩壊へと向かうことは確実だ。  物事には実際に直面しなくても誰にも分る当然の帰結、「道理」がある。

日本がTPPに参加し関税が撤廃されれば、外国産が大量に国内市場に流入し、やがて国内農業は減産、縮小へ向かう。その後に来るものは廃業農家が続出し、さらに地方都市の崩壊へとつながる。こんな予想は百人いたら百人全員が予想できる当たり前の事態が起きる。

初期段階では内外価格の差額を国が農家に「保証する」と仮定したとしよう。そして、国内市場での選択は消費者たる国民の判断に委ねられる。

値段の安いものが並べば、消費者心理として何割かは安い外国産を購入することは否定できない(仮にこれを3割とする)。翌年には過剰に作れないから作付けは3割の減産で臨むことになる。空きは休耕地になる。少ない分、国からの「補助」も減り、農家経済も減収する。

一般人は「3割の空いた耕作地で他の作物を作ればいいのでは?」というが、全国で作物は出荷がダブらないように計画的に生産されており、供給過剰につながる転作作物はそう簡単には作れないのが現状だ。

3割減らした後の農産物を市場へ流通させてもこのうちの何割かはまた残ってしまう。そうなれば休耕地は毎年どんどん膨らんで、農家経済は成り立たなくなる。日本全国で休耕地、耕作放棄地が増えれば、日本農業は完全に崩壊に向かう。こんな簡単な推移は誰もが今でも想像できるはずだ。

国や産業界は「日本経済の低迷を打開するにはTPPの参加しかない。参加しなければ生産拠点の海外移転は加速し、国内の産業の空洞化が加速する」という。それに対して農業界や地方都市の自治体は「地域農業が崩壊し、やがて地域社会の崩壊につながるTPPに絶対反対」と叫ぶ。まさにがっぷり四つの状態だ。

国や産業界がいう「産業の空洞化」は説得力に欠ける。日本ブランドを背負った企業群は、バブル経済の崩壊後すでに安上がりの労働市場を求めて海外へ移転している。「日本人の雇用を守る」とか、「納税して国家財政に貢献する」とかいうが、ここに日本国籍企業たるポリシーは感じられない。  儲かればどこで生産しても同じという論理が罷り通っている。現代のグローバル化した時代にあって、ありふれた企業観しか持ち合わせていない。日本生まれの企業には日本という国籍はあるはず。

一方、日本の農業は日本の国土に土着してしか営まれない。農地をもって海外には移転できない。それゆえ、どこの国で生産されたのかわからない日本の自動車と違い、日本農業はれっきとした日本生まれの日本ブランド。これは未来永劫変わらない。「モノを作る」世界では将来、純粋に日本ブランドと胸を張れるものは日本農業だけになるかもしれない。単位面積当たりの収量は世界のトップクラス、厳しい安全基準、遺伝子組み換え作物のような模造品は作らない哲学はまさに世界に誇れる「日本農業」なのだ。

農業界が反対の声を張り上げても(日本医師会も反対)、大多数の国民は無関心だ。しかし、TPPは農業の問題だけに留まらず労働市場の開放もあるから、いず無関心ではいられなくなるはず。大多数の国民が無関心を装うのならば国もTPP参加に向けて大きく動き出すことは明白だ。せめて「TPPの是非」を巡る議論を多くしなくてはならない。

議論が貧困なのは消費者ばかりではない。流通も、大手乳業や食品加工業界も、地元農業と運命共同体であるはずの農業関連業界も、まちのお米屋さんも、農業土木で工事をしている建設業界もみんな声を潜めている。取材を入れると、「…」で企業人としての意見を言おうとさえしない。

札幌のあるお米屋さんが本音で語った。「本当は反対だけれど、外国の米が入ってきて消費者が求めたら外国の米を売らざるを得ない。そうしないと米屋は経営していけなくなる。だから首尾一貫して反対は貫けない」。これは誰も否定できない、企業として生き残るための道理。

先日、明治の埼玉工場で生産された粉ミルクから放射性セシウムが検出された。原発の事故現場から飛散し、乾燥過程で混入したもの。明治も東電の被害者だ。この時原料に使われた粉乳の原産地が、アメリカ・カナダ・オーストラリア・北海道であることが事故をきっかけにわかり、啞然とした。

筆者は粉ミルクこそ国産と思っていたが実は外国産だったことが明らかになり、これを知って愕然とした。これではTPPの見解は言えるはずもない。日本の酪農が消えても、企業としてしたたかに生きて行く逞しさを感じた。農業に近いところでもこのありさまだ。

TPPの参加が国により撤回されるまで、イーハトーヴと姉妹誌「月刊ISM」はずっと反対の意見を発信していく。

この日本に、日本人として、この北海道に北海道人として営んでいく道理として、TPP反対の意思を貫きたい。この一年間、反対の論陣を張ってきた。この間、TPPの取材を申し入れての「ノーコメント」だけではなく、広告掲載の減額や中止の憂き目にも遭った。農業のど真ん中にいる企業・団体でも皆が好意的というわけではない。しかし、わが社のスタッフたちは怯むことなく社会の道理を貫き、この日本で、この北海道で農業を守る意義を説いてく決意だ。

前号でも触れたように、農業は古代から伝わる日本で一番長い歴史を持った産業文化。万国共通の価値観を持つ文明と、日本独特の農業文化は元来、同列の価値基準では競えない。もっとも土着している産業文化である「日本農業ブランド」を壊すことがあってはならない。各界と連携してTPP参加に反対していきたい。読者のみなさん、TPPにもっと真剣に考えていきましょう。国にTPP参加を断念させましょう。

 

 

ブームやランキングに影 響を受けやすい国民性?

2012年3・4月号

この日本社会は「〇×グランプリ」とか、「売れ筋ベスト10」とか、読者が選ぶ「人気の〇×ベスト10」とか、ミシュランの格付けとか、列記すればきりがないほどランキング流行りだ。また、TVで「〇×はダイエット効果あり」となれば、売り場に客が殺到する。日本人の判断基準は概してメディアから発信された数字や情報に頼る傾向が強いのではないか。

パン屋に入ると「当店の売れ筋・第1位」と札が付いたパンが目に止まる。日本人ならば多少は気になるもの。でも食パンを買いに入ったから初志貫徹、ついで買いはまたの機会に。ある大きな書店の入り口近くに貼られた「売れている本ランキング」、やはり日本人、張り紙を見てしまうもの。でも初志貫徹、購入したのは或る作家の文庫本。あとは立ち読みで終わり。

スーパーでは今、トマトが「いつもより3割増し」で売れているそうだ。大学の研究者が発表した「トマトは体脂肪の燃焼に効果ある」とニュースで報じられたからだ。同じようなことは過去にもしばしば。ダイエットに「羊肉がいい」、「バナナがいい」などTVで取り上げれば、売り場から品物がたちまち消える。しかし、熱しやすく冷めやすいのも私たち日本人、短期間で通常ペースに。

ひところ日本中がジンギスカンブームに沸いたが、ブームは去り新規開店した専門店もいつしか姿を消した。迷惑なのはそれよりずっと前からジンギスカン専門店を営んでいた老舗。店の主は「ブームはえらい迷惑」とぼやく。

生キャラメルもまたしかり。これらの火付け役はいつもマスメディアだ。グルメ特集を組み、日本人を駆り立てる。TV局は広告収入が増えてにんまりだが、長時間並んで買い求めた消費者や、製品化に飛びついた企業はなにかヘン?

作る人も、売る人も、買う人もブームには一定の距離を保ちたいもの。ブームは一過性のもの、持続するものこそが本物だ。イタリアにはファーストフード店はあまりない。スローフードこそまさにイタリア人の真骨頂だ。

道内各地でも「ご当地グルメ」とか、「〇×マルシェ」とか、「〇×フェスタ」が開催され、束の間私たちを楽しませてくれる。しかし、黒字はイベント会社や広告代理店、告知広告を載せた一部メディアだけ。出店者の多くは赤字。  地方から来た或る出展者も、「輸送費や人件費のほか、主催者に支払う出店負担金も大きく、結局収支は赤字」と嘆く。これでは非力な生産者や企業は続かない。継続は力、一過性よりも負担の少ない継続可能な方法を考えられないのか。

さまざまなランキングやTVから発信されたブーム、格付けなど私たちを惑わす情報が氾濫している。自分の判断基準にもっと自信を持つべき。

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