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特集記事

2020_09_11 | 2020年 9・10月号 特集 | , | 編集部イーハトーブ

月形町は今年開町140周年を迎えました!
これからも受け継がれていく“共生の心”

月形潔と樺戸集治監

月形町は今年開町14
0周年を迎えました。内務省御用掛権少書記官から樺戸集治監の初代典獄(監獄所長)に任ぜられた月形潔の姓を取り、1881(明治14)年7月1日、空知管内第1号の村として誕生しました。
月形潔は、1847(弘化4)年、福岡藩士の子として生まれました。維新ののち、潔は新政府に雇われます。執政局や御軍事局で仕事をしたのち、福岡藩権少参事となりました。今日でいえば警察官僚です。そののち司法省に出仕。1874(明治7)年2月には佐賀の乱の鎮圧のために佐賀に赴き、8月にはプロシア人殺人事件の捜査のために函館に渡っています。1875(明治8)年には権少検事となり東京裁判所詰めに。翌年には正七位に出世します。その後、鹿児島裁判所などに赴任し、1879(明治12)年、内務省御用掛となりました。時の内務卿は伊藤博文です。
1879(明治12)年、元老院(当時の立法機関)などでの議論をふまえ、内務卿伊藤博文がひとつの建議書をあげます。「社会を乱した凶悪犯や政治犯たちは、ただ徒食させることは許されない。ロシアへの備えの意味からも開拓が急務である北海道に送り込んで、開墾や道路建設などにつかせるのが良い」とするものでした。そうして北海道に重罪犯を収容する監獄を設けることが決まります。場所の選定調査から立ち上げにいたる責任者が、初代典獄に内定した月形潔で、1881(明治14)年に月形町に樺戸集治監が設置されました。

 

集治監の歴史が学べる「樺戸博物館」

 

町の礎を築いた囚徒たちに感謝の気持ちを

樺戸集治監は、東京・宮城に続き全国で3番目、北海道では最初の集治監です。その囚徒たちによる農地開墾や道路開削などは今日の月形町の礎となりましたが、過酷な労働が強いられ、1919(大正8)年、39年間の監獄としての使命を果たし廃監となるまで、1046名の死者を出しています。
町の市街から3.5㌔ほど離れた篠津山霊園には、1046名のうち、遺族に引き渡された24名を除く、1022名の無縁仏が永遠の眠りについています。町の人々は、彼らを犯罪者とみるのではなく、町の礎を築いた者たちとして敬ってきました。毎年、町では「樺戸監獄物故者追悼式」が厳かに執り行われ、囚徒たちの労苦に哀悼の誠をささげています。
そして、このように受け継がれてきた“共生の心”は、月形刑務所の誘致にも発揮されました。
1983(昭和58)年に開庁した月形刑務所。当時、刑務所誘致においてはマイナスイメージが多く全国的に反対運動が盛んでした。月形町そのものが樺戸集治監とともに発展してきたという歴史的背景と同時に、受け継がれてきた“共生の心”が、町民の積極的な活動を生み、見事誘致に成功しました。

 

障がい者支援施設「雪の聖母園」

 

障がい者にも注がれる〝共生の心〞

一方、“共生の心”は障がい者の人々にも注がれます。
町内には1964(昭和39)年に設立した社会福祉法人雪の聖母園があり、早い時期から町ぐるみで福祉に力を入れています。社会福祉法人雪の聖母園は、3つの施設から成り立っています。月形町の「雪の聖母園」と夕張市の「しみずさわ」の2つの障がい者支援施設では、それぞれ知的障がい者地域生活支援事業を行い、就労支援センターや地域支援センター、相談支援センター、5つのグループホームなどの活動を展開しています。もう1つの施設は新ひだか町にある保育所「静内ベビーホーム」です。
創立者の木内藤三郎神父は、「人はみな等しく、父である神の子であり、誰一人としていらない人はなく、兄弟であること」という理念の中、“共生の心”が育まれてきたこの月形町を開園の地に選びました
現町長である上坂隆一氏も、2001(平成13)年に、「雪の聖母園」の園長に就任され、「この経験が私の原点」と話します。「障がい者の人たちと一緒に生きることにより、私自身も学ぶことがたくさんありました。自分たちと違うからといって差別するのではなく、共生していく。これが町長としての私の信念でもあります」
白老町ではアイヌの人々をはじめとする多民族共生社会を謳うウポポイが開業しました。一方、アメリカでは黒人差別反対のデモが頻繁に行われ、香港では共生に相反する国家安全維持法が施行されました。
世界が共生社会に背を向ける時、140年間受け継がれてきた月形町の共生への思いは、大切に守り続け、これからも発信していかなければなりません。

※月形町公式WEB SITE「月形歴史物語」を参考にさせていただきました。

 

●月形町役場総務課

北海道樺戸郡月形町1219番地

TEL: 0126・53・2321

 

代替バスの運行がスタート!

JR札沼線(北海道医療大学~新十津川間)の廃止に伴い、4月1日から当別方面(とべーる号)と浦臼方面(かばとーる号)へ通じる代替バスの運行が始まりました。
代替バスは、町外の移動はもちろん、町内での移動にも欠かせない存在です。国道275号を主要ルートとしているので、沿線に住宅が密集している月形町では利用しやすい路線となっています。また、町内の主要施設である役場、月形温泉、町立病院などに停車場があるので、時間通りに目的地に到着することができます。
詳しいことは月形町企画振興課地域振興係まで(℡0126・53・2325)。

 

 

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