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特集記事

2022_03_13 | 2022年 3・4月号 特集 | , | 編集部イーハトーブ

これまでの直播米の美味しさを凌駕する「さんさんまる」。
そこには未来の農業の姿があります!【市川農場】

これまでの直播米の歩み

直播米(じかまきまい)。育苗をせずに種籾を直接田んぼに播く品種米のことを言います。

直播は省力化に貢献できる栽培方法で、これまではなかなか定着できませんでしたが、食味と耐冷性に優れた品種も出てきて、今後は生産が拡大
することが期待されています。

これまでの直播米には、「大地の星」「ほしまる」「えみまる」があります。

「大地の星」は平成15年に誕生し、耐冷性や耐病性に優れた品種で、冷凍ピラフなどの加工用向けに最適な品種です。

「ほしまる」は平成18年に誕生し、早く実る特性があり、寒さに強いうえに、穂数が出やすく、粒も大きい多収性です。

「えみまる」は平成30年に開発された品種です。早く実る特性があり、北海道の気候での直播栽培に適した新しい品種になります。しかし前2品種とも用途としては加工用米の範疇を抜け出すことはできず、良好な食味をうたった「えみまる」も、「ゆめぴりか」や「ななつぼし」「おぼろづき」のように全国的なお米のコンクールで目立つような実績はあげていないのが現状です。

そんな中で期待されている直播米が「さんさんまる」です。

 

さんさんまる

 

「さんさんまる」の大いなる可能性

「さんさんまる」は、平成30年に国の機関である「農研機構北海道農業研究センター」(札幌市)で 発されました。「さんさんまる」は「ゆめぴりか」
「おぼろづき」タイプの極良食味米で、アミロース含有率が低いので粘りがあり、直播用品種としては初めての極良食味米品種になります。

平成20年の交配から育成が始まり、平成30年に品種登録の出願をしたので、完成まで11年の歳月をかけています。

ただそんな「さんさんまる」にも弱点があります。割れ籾が「大地の星」や「ほしまる」よりも多く発生しますし、玄米品質も若干落ちます。しかし、そ
れらを補うほど、美味しく、耐冷性にも優れ、病気にも強く、稈長が短いので倒伏にも強い。そして多収という優れた特長があります。

 

市川農場ではドローンを使った直播栽培をしています

道内で「さんさんまる」の栽培に力を入れているのが、JAびばいと市川農場です。

JAびばいには直播研究会という組織があり、直播の勉強会を積極的に行っています。「さんさんまる」の実証試験にも協力していました。

一方、市川 場では、ドローンでの直播をユーチューブにアップしていて、テレビ局にも取り上げられています。

 

ドローンによる直播

 

市川 場の代表である市川範之さんは、「『さんさんまる』はドローン直播の研究で関わらせていただきました。これまでの直播品種は加工用や外食産業用としての位置付けでしたが、『さんさんまる』は『ゆめぴりか』にも匹敵する極良食味の品種です。『さんさんまる』のドローン直播は側條肥料を使用しないので低タンパクで美味しく、さらに苗が密集しているので収穫量も田植え機の移植栽培並みに収穫できます」と話します。

農業の担い手不足が叫ばれる中、直播米による省力化は農業者の負担を和らげ、省力化によるお米の低価格化は消費者にも恩恵を与えます。

「ゆめぴりか」を始め、「ゆきさやか」「ゆきひかり」「スリムヒカリ」など消費者にニーズにあったいろいろなお米を栽培している市川農場。「さん
さんまる」は未来の米作りを体現しているのかもしれません。

 

●農業生産法人市川農場

旭川市西神楽3線8号

TEL: 0120・049・397

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