今回登場の若者は富良野市に所在する藤井牧場で従業員として勤務して8年になる花垣星也さん(東京都出身)と、安平町で新規就農して10年になる竹葉淳さん(滋賀県出身)のお二人だ。もうベテランの風格を漂わすお二人だが、北海道の農業界にとって頼もしい期待の星だ。
取材と文/山田
サッカー少年が牧場で働く
富良野市 花垣 星也 さん
花垣星也さんは東京都出身。高校時代までサッカーに興じる普通のサッカー少年だった(本人談)。動物とかかわりのある観光牧場などへの就職活動中に、富良野市八幡丘に所在する藤井牧場(藤井雄一郎代表)と巡り合い、就職した。花垣さんがちょうど二十歳の時だ。
それから8年、牧場の作業すべて一通り習得し、後輩たちの教育係も任されるほどになった。搾乳、牛追い、繁殖、牛の健康管理、哺乳、牛舎清掃など乳牛に関わるすべての作業を覚えた。一昨年、上富良野町出身の女性と結婚、所帯を持った。一家の主としての責任も負うようになった。
牧場の作業すべてを習得した花垣星也さん
「夢は?」の記者の問いかけに、「藤井牧場が将来規模拡大し、分場を持つようになった時、そこの場長をやりたい」と明快に答える。仕事に自信を持った〝証〟に聞こえた。普通は現代っ子らしく個人的な夢を語るのが一般的なのだが、花垣さんは〝仕事の夢〟を語った。牧場経営者から見れば、頼もしいい存
在ではないだろうか。
なるほど、もらった名刺の裏に「牛も人もどんどん育てる牧場」とある。オーナーの経営理念だろうか。8年の勤務で、サッカー少年だった青年が幹部としての風格を漂わせている。
また、30名ほどいる従事者たちの礼儀正しさには目を見張るものがある。記者とすれ違う若者たちがみな一様に「こんにちは。いらっしゃいませ」と挨拶するのだ。多くの牧場を訪ねたがこんな光景は初めてだった。オーナーの教育方針を垣間見る思いだった。
牧場にはベトナム人研修生もいる。花垣さんは、「ことばの壁はあるがコミュニケーションは取れているし、仲もいい」と語る。宿舎は牧場内にあるが、ある時訪ねたらベトナム料理でもてなしてくれたと語る。3年目に一度挫折しかけたが、これを乗り越え進化を続ける好青年だ。ガンバレ!
農業をずっとやりたかった
安平町 竹葉 淳 さん
竹葉淳さんは滋賀県の出身で、大学進学で札幌へやって来た。「もともと農業系の仕事がしたかった。流通の仕組みを知るのも勉強になると思い、中央卸売市場の丸果札幌青果に入社。ここで市場の仕組みを覚えた」というちょっと変わった経歴の持ち主だ。
27歳の時いよいよ新規就農を決断、安平町早来へやって来た。2年の研修を受けた後、29歳で独立就農した。それから数えてもう10年だ。1町の畑にハウス21棟、ここにホウレンソウをメインにオクラ、露地でカボチャを植えている。ホウレンソウは年3回収穫、農作業は春から12月上旬までで、普段は夫婦2人だけで作業している。カボチャの収穫時には息子たちもここぞとばかり手伝ってくれるという。
奥さんの美由紀さんとは丸果時代に知り合って結婚した。社員時代は経理担当で、現在もそれが活かされ農家の大事な帳簿を担当している(淳さん談)。部活で野球をする中1と中3の息子を加えた4人家族と、犬の「フク」が竹葉家のファミリーだ。
新規就農して10年になる竹葉淳さん、美由紀さんご夫婦
「夢は?」の記者の問いかけに「一年一年を確実に経営する」と極めて現実的だ。何よりも「家族との一緒の時間を大切にしたい」と語る。農業で仕事をすることを目標に歩んできた秋葉さんは今まさに農業のど真ん中で一生懸命仕事をしている。これに勝る夢はない。
「近くに仲間が欲しいし、新規就農者が多くいて地域が元気になればいい」とも思うのだが、「安平町でも早来地区には新規就農者はあまりいません。追分地区にはメロンをやる新規就農者がいます。隣町のむかわ町には新規就農者が多いですね」。
普及所が音頭を取り、東胆振地区の新規就農者の集まり「ニューフロンティアの会」がある。竹葉さんは2年前、そこの会長の任にあった。若者たちよ、竹葉さんに続け。
2018_03_19 | 2018年 3・4月号 農業と向き合う若者たち 連載 | スマート農業, 育てる, 農家, 酪農