IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー

IHATOV|イーハトーヴWEB北海道|北海道のフリーペーパー
  • 紙面版を見る

特集記事

2025_01_17 | 1・2月号 2025年 編集長のひとりごと | | 編集部イーハトーブ

【編集長のひとりごと】
変化する風向きに翻弄された ホタテ関係者の心もよう

今回はホタテから人の〝こころ模様〟を覗いてみたい。

コロナ禍で行動制限が掛けられていたころは、一斉休校や飲食店の時短営業で否応なく業務用ホタテは需要減に追い込まれた。漁業者はホタテを獲って売らなければ生活ができない。水産会社も市場に出さなければ経営は行き詰る。八方塞がりで関係者は気を揉んでいた。

 

さらに暗雲が立ち込めた。コロナ禍の行動制限の解除後も追い打ちをかけられる事態に。処理水の海洋放出に反対する中国政府は日本産水産物を中国国内から締め出す禁輸措置で北海道の海産物(ホタテ・ナマコなど)は行き場を失った。その中でも比重が最も大きかったのが「殻付きホタテ」、産地は対策に乗り出した。
例えば、森町では地元の水産会社が大量に抱える在庫のホタテを町役場が買い取るかたちで、全国の学校給食の関係者に呼び掛け無償で提供を始めた。億単位の町費が支出された。これにより浜の漁業者も水産会社も生き延びられた。森町長の英断だった。

 

中国の禁輸措置は北海道の漁業界では大打撃、連日メデイアが報じた。それに呼応するように、ふるさと納税の返礼品の「ホタテ」に全国から寄付が集まった。産地の自治体は大喜びだったはず。しかし、順調だったのは23年度までで、24年度は風向きが変わる。
中国にとって代わろうと、東南アジアからの引き合いが強く、しかも高値取引だったことからそちらに行き先の重点が移った。さらに、物価高騰の影響を受けて国内相場も高値で推移、こうなれば、水産会社も高値取引の海外や国内流通のほうへホタテを売りさばく。

 

しかし、業者を責められない。中国に代わる売り先探しは将来につながる布石となる。これにより返礼品に充てるホタテの在庫が少なくなり、返礼品に「ホタテ」と謳えなくなった。新聞報道によれば、紋別市は11月末時点で72億円、前年同期比で半分となる。23年度は192億円で道内1位(全国2位)の好成績だった。事業計画の練り直しが始まった。
気まぐれな風は時たま吹くもの。コロナに翻弄され、中国政府の政策転換でピンチに立ったホタテの関係者(漁業者・水産会社・自治体)は次につながった。店頭価格は「高いねぇ」が筆者の本音。

2025_01_17 | 1・2月号 2025年 編集長のひとりごと |