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特集記事

2019_05_01 | 2019年 5・6月号 特集 | | 編集部イーハトーブ

東川町と学校法人北工学園旭川福祉専門学校の取り組み
官民一体で保育士や介護福祉士の育成を

保育士や介護福祉士は今、慢性的な担い手不足に悩まされています。そんな全国的な現状の中でも、東川町にある学校法人北工学園旭川福祉専門学校では、担い手の育成に尽力し、道内では1番の実績を誇っています。
同校では今年度から更なる町の支援を受け、人材の育成を目指すこととなりました。東川町と学校法人北工学園の取り組みを紹介します。

学校法人北工学園の歩み

町内にある学校法人北工学園旭川福祉専門学校の開校は1975年に遡ります。保育士養成校としてスタートし、今年3月で卒業生は43期目を迎えました。開校時は現在と変わらず、保育士の不足が問題となっており、地域の施設などからの強い要望により、開校の運びとなりました。そして、1992年には介護福祉士養成校としての認可もとり、旭川市にあった校舎も、東川町に移し新たなスタートを切りました。その後、学科名の変更などもあり、こども学科・介護福祉科・医薬福祉学科・日本語学科の4学科で320名ほどの学生たちが学んでいます。

 

三宅 良昌 校長

 

平戸 繁常務

 

100%の就職率を誇る保育士と介護福祉士

保育士を養成しているこども学科は、2年制で男女50名が学び、幼稚園や保育所の先生になるための幼児教育専攻と保育や福祉の仕事をするための保育福祉専攻に分かれています。一方、介護福祉士を養成している介護福祉科は、2年制で男女80名が学んでいます。両学科とも就職率は100%を誇っています。昨年度はこども学科には1023事業所から8300人ほどの求人があり、介護福祉科にも431事業所から3200人ほどの求人がありました。100%の就職率も素晴らしいことであると同時に、業界の人手不足の面も垣間見ることができます。
「保育士の養成が40年以上、介護福祉士の養成も20年以上の歴史がありますので、卒業生も現場でたくさん働いています。施設長になったり、園長になったりと重要な役職についていますので、学生たちもとても心強く感じているのではと思います。しかし、まだまだ人材は不足しています。更なる人材の育成に励まなければなりません」と三宅良昌校長は気を引き締めます。

 

こどもたちへの絵本読み聞かせ(こども学科)

 

東川町の魅力が学生を呼び込む

決して交通の便が良いとは言えない場所に立地している校舎ですが、それが苦にならないような取り組みが同校ではなされています。
旭川市内、近郊に無料スクールバスを5路線走らせています。また、町内には「国際交流会館」「国際交流館マ・メゾン東川」という学生寮があり、255名が生活をすることができ、あまり経済的な負担を考えずに一人暮らしが可能です。
更に、地方出身者の支援制度も充実しており、東川町の寮費助成や学費の中から寮費の一部減額などがあります。
「1985年、東川町は『写真の町宣言』で、世界に開かれたまちづくりとして、町外、道外、そして国外の方々を温かく受け入れる共生の町を目指してきました。だから、町外からの学生には、町も住民も全力で温かくサポートしていく体制が整っていると思います」と松岡市郎東川町長。
東川町そのものの魅力が学生を呼び込み、安心感や住みやすさを実感させてくれます。

 

松岡 市郎 町長

 

これまでの東川町の取り組みを活かす

昨年度卒業したインドネシアの男性は、同校の日本語学科と介護福祉科をそれぞれ卒業し、江別市内にある特別養護老人ホームに介護福祉士として就職し、活躍しています。
今年度も介護福祉科に49名の学生が入学しました。その内26名が留学生です。もちろん全道では1位の数字となっています。それでもまだまだ担い手が不足しています。そこで、日本語学科で学ぶ留学生に介護士への転身を促す施策を始めることになりました。
これは外国人にも開かれた共生の町づくりを実践してきた東川町ならではの取り組みといえます。東川町では「写真甲子園」を始め、いろいろなイベントが行われ、住民の方々にも彼らを受け入れる下地は十分にできています。留学生もそのような住民に接することで、東川町が好きになり、北海道が好きになり、日本が好きになっていく。そしてこの地で働きたいという意欲を持つことになります。
そのような取り組みが功を奏し、町の人口8300人のうち、外国人の比率は4%を超え、約20人に1人が外国人となっています。

 

更なる介護福祉士の育成を担う

そこで今年度から町と連携して、外国人介護福祉人材の育成事業に乗り出します。これまでも留学生を介護の現場に14名ほど送りだしています。そのような実績があり、町もバックアップするのでもっと積極的に働きかけを行うこととなりました。町からの奨学金制度はもちろん、卒業後に働く施設などからも奨学金を出してもらい、そのような施設に就職すれば返還は不要となります。施設としても貴重な人材を確保することができます。そのような制度の中で、今年度は在校生を含め31名の留学生が日本人学生と机を並べて勉強に勤しむことになります。
「これは日本人の学生にとっても良い刺激となります。日本の学生は他のアジアの国々の福祉を学ぶことができますし、アジアの国々の学生は、日本の福祉を学ぶことができ、日本語も勉強することができる。互いに刺激し合うことができるはずです」と平戸繁常務は話します。

 

高齢者の方々との交流(介護福祉科)

 

学校法人北工学園旭川福祉専門学校

北海道上川郡東川町進化台

TEL: 0166・82・3566

 

 

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