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特集記事

2020_11_15 | 11・12月号 2020年 特集 道森連 | , , | 編集部イーハトーブ

対談・北海道森林組合連合会 阿部徹会長×農林中央金庫札幌支店 高橋茂充支店長
コロナ禍を乗り越え、未来を拓く林業を!

新型コロナは林業にも大きな影響を与えています。2月に道独自の、さらに4月には国による「緊急事態宣言」が発令され、全国的にヒト・モノの往来がストップする事態になりました。業界でも原木の流通が滞り、深刻さを増しています。このコロナ禍をどのように乗り越え、林業の未来を切り拓いていくのか。2方に語っていただきました。

コロナ禍前の道内林業の問題点

 

―コロナ禍前、道内林業にはどのような問題があったのですか。

 

阿部

今まさに道内の山は、戦後に植えられた木が伐期を迎えていて、資源として充実してきたのですが、木材の輸入自由化が始まって以降、木材価格は低迷したままになっている状況が1つ目の問題点です。
2つ目は、労働安全に関してです。昨年1年間に道内林業に従事していて、労働災害は死亡・負傷合わせて102件発生して8名の方が亡くなっています。死亡労働災害の発生率は7.8%という、他の産業と比較して高い結果が出ています。
3つ目は、労働力不足です。人口減少は山村だけではなく日本全体の問題ですが、林業という視点で見ると労働力の不足は、林業という職業が理解されていない面が大きいのではないかと感じています。

 

高橋

農業は概ね1年サイクルであるのに対し、林業は「植林→育成→伐採→植林」に約50年のサイクルを要し、山林所有者はその50年間ほぼ収入がありません。収入がない中、先行して費用がかかることから、行政からの安定した予算措置が必要であり、我々金融機関もしっかりと支えていく必要があります。また、今後は、人口減少により住宅着工件数の減少が見込まれる点も木材需要に対する懸念材料です。

 

阿部 徹 氏

 

コロナ禍が林業に与える影響

 

―現在のコロナ禍は、林業にどのような悪い影響を与えていますか。

 

阿部

まず、原木の状況についてですが、森林組合が扱っている主要な樹種の1つであるカラマツは、梱包材やパレット材などの産業用資材や合板といった住宅用資材に利用されていますが、緊急事態宣言により経済が止まったことで道内外の合板工場、製材工場の需要が激減しました。また、トドマツは建築用材として利用されていますが、住宅需要の激減の影響をもろに受けています。

 

高橋

2020年度の全国の新設住宅着工戸数は、リーマンショック時の78万戸を下回る水準までの減少を予想する向きもあり、心配な状況です。

 

阿部

川下側から製材のオーダーがなければ工場から製品が出荷されないので、当然工場の土場が満杯になり、各工場では原木の受け入れ制限が行われました。原木は道内外の製材工場で消費される他、スギやトドマツについては中国や韓国向けに原木のまま輸出されていますが、トドマツについては輸出が完全に止まってしまいました。

 

高橋 茂充 氏

 

コロナ禍をどのように乗り切るのか

 

―コロナ禍が負の影響を与えていることがわかりました。では、このコロナ禍をどのように乗り切ればいいのでしょうか。

 

阿部

山土場から原木の搬出を促進するため、製材工場の土場に運び込むまでの間保管する「中間土場」を新設したいと考えています。
この中間土場を新設することにより山土場から原木を運び出し、再び山に木を植えることができるようになるので、森林資源の循環が復活することになります。もし、この山の森林資源の循環が、伐ったままの状態で止まってしまいますと、山の保水力が失われ、洪水や山崩れを起こすことにつながってしまいます。
我々は森林の保続培養という使命も担っています。コロナ禍がいつ収束し、木材需要の回復がいつになるか見通しがつかない現状ですが、少なくとも山側の森林資源の循環と森林の手入れを止めるわけにはいかないと考えています。

 

高橋

今は、会長が仰るように、中間土場で保管しながら需給調整をすることが必要な局面です。我々はこうした森林組合及び連合会の取り組みを金融面からしっかり支えたいと考えています。一方では、会長が初めにお話しされたように、コロナ禍前から林業にはいろいろな長期的・構造的な問題があり、コロナ禍によりそのような問題が加速していく可能性を危惧しています。

コロナ禍による需要の落ち込みのような問題は、コロナ禍が収まればいずれは解決していくものだと思います。しかし、木材価格の低迷や労働力不足といった長期的・構造的な課題についてはそうはいきません。コロナ禍への対応と並行して、対応策を講じていく必要があります。

当金庫の取組事例をご紹介すると、2020年度より「低コスト再造林プロジェクト」を開始しています。現在は実証実験の段階ですが、早生樹の活用や低密度植栽により木の育成期間を一般的な50年から30年に短縮したり、コンテナ大苗の利用によるコスト削減、販路開拓を目指す取り組みで、構造的な課題の解決を図るとともに、持続可能で循環型林業を実現したいと考えています。
また、近年、木材を使用した高層ビルの建築計画を打ち出す企業や店舗の木質化を図る企業もあり、木材利用の可能性は広がりつつあります。当金庫としても木材が持つ魅力の発信を行い、付加価値向上を図っていきたいと考えています。

 

阿部

農林中央金庫さんとは木育の普及活動や労働安全服の補助など、これまでも多大な援助をいただいています。これからもコロナ禍における林業をしっかり守っていけるようにご指導やご支援をいただきたいと思います。

 

-今日はお忙しい中ありがとうございました。

 

 

●北海道森林組合連合会(道森連)

札幌市中央区北2条西19丁目1番地9

TEL: 011・621・4293

 

●農林中央金庫札幌支店

札幌市中央区大通西3丁目7番地北洋大通センター14階

TEL: 011・241・4211

 

 

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