GAPってなんだろう? 食の安全は食品に関わるあらゆる産業界に求められている必須条件。
農業界でも今、農産物の安全基準というべき「GAP認証」へ向けた動きが活発だ。今回の取材先は札幌で主作物としてレタスを生産する山内農園(山内浩幸代表)で、道内のJGAP認証の取得農場の中でも最古参
だ。記者は「ゆめ・きた・さぽーと」の大滝昇社労士(JGAP指導員)と船島修(ウェブ制作・デザイン担当)と共に山内農園を訪ねた。
文/山田勝芳
山内農園は小規模だけれどGAPの更新重ねて最古参
現在地(札幌市北区篠路町)で祖父が農業を始めたのが昭和12年で、かれこれ83年の歴史を歩む。
年々農家戸数が減少する札幌農業の中、「残っている農業者は特色ある農業で頑張っている」と市農業委員・三部英二さんはある座談会の席で語っていたが、まさに山内農園は「道内最古参のJGAP認証の農場」だ。
12年前、JGAPを取得したとき、ナンバー1から7までタマネギ農家、ナンバー8,9は稲作農家、ナンバー10は「レタス農家だった山内農園」だった。このうちナンバー1から9まで離農してしまい、当時からGAP農場で更新しているのは「山内農園」だけということになる。当時はJGAPの認証を受けたレタス農家は道央では「山内農園」が唯一の存在だった。
耕作地は借地を含めて12haで決して広くはないが、ここでレタス、ブロッコリー、スイートコーン、サニーレタス、リーフレタス、トレビス、カリフラワーを生産しているが、すべて露地栽培だ。
工場勤務から農業へ転身簡単だったJGAPの取得
浩幸さんが45歳の時、転機が訪れた。家業である農業を引き継ぐため、それまで勤めていた工場勤務を辞めた。JIS工場の勤務が長く〝生産管理〞はお手の物、農場に当てはめて考えることはそんなに難しくはなかった。
生産管理、工程管理はお手の物だった。
農業1年目は70歳になる父の下で農業を教わったが、馴れで教わる農作業は農業分野では新人の浩幸さんにはチンプンカンプンだった。
「今後は後継者として自分が直接経営しなければならないゆえGAP認証を取る」と父に計画を話し、2年目に「JGAP」にチャレンジした。そして、2009年9月24日、JGAP(写真参照)を取得した。この認証書に記されているのが「初回認証日2009年9月24日」、つまり道内JGAP農場では一番古い表記だ。
3年ほど前、「オリパラの選手村に食材を提供しよう」とGAPを励行していた雰囲気があった。しかし、山内さんは「1か月半のためだけにGAPを目指すことには違和感があった」と語る。
「後継者として子どもたちに期待するつもりはない」。年々縮小する札幌の農業を守る意味では道内最古のJGAP農場である「山内農園」が将来につながることを祈りたい。
文・山田勝芳
写真中央・山内浩幸代表、写真左側・大滝昇ゆめさぽ代表、写真右側・船島修ゆめさぽ取締役