わがマチの1次産業や観光の魅力をお伝えします。今回は「このまちが好きだからみんなで創ろう 元気まちかみしほろ」をキャッチフレーズに、農業や林業、そして観光にも力を入れている十勝管内の上士幌町です。竹中貢町長にお聞きしました。
【DATA】
【人口】4,951人(R3年2月末現在)
【世帯】2,591世帯(同上)
上士幌町役場
〒080-1492 北海道河東郡上士幌町字上士幌東3線238番地
TEL: (01564)2-2111
上士幌町の農業の特徴を教えてください。
上士幌町長 竹中 貢 氏
わがマチは十勝管内でも北に位置し、寒冷地なのでかなり厳しい農業環境にありました。しかし、農業技術の進歩や農地基盤整備により作物のできがかなり良くなってきました。それまではこのような環境にあったので酪農、畜産に力を入れてきましたが、近年、馬鈴しょ、てん菜、小麦、豆などの畑作4品目にも力を入れ、それらを合わせると右肩上がりの成長を遂げています。平成16年度の農業生産額は約150億円でしたが、昨年は230億円を超えています。内訳は酪農、畜産が8割、畑作が2割となっています。
一方、農家戸数は減少していますが、1戸あたりは大型化して、所得もかなり上がっています。それに比例して町民全体の所得も伸び、マチの税収もあわせて伸びています。地方の衰退が問題になっている昨今、町内に廃屋はなく、商店街にも空き店舗はなく、さらに農業を核として、マチが発展していく可能性を感じています。
牧場風景
2020年第4回ジャパンSDGsアワードで「内閣官房長官賞」を受賞しました!
4万頭以上の牛を飼育しているわがマチ。その糞尿はそれまでは厄介者でしたが、今はバイオマス発電に利用し、町内の全ての電気を賄っています。そのプラントの運営は、JAと農業者が出資した㈱上士幌町資源循環センターが運営しています。
バイオマス発電
わがマチでは、このバイオマス発電だけで電力自給率は100%。これに水力や太陽光を加えると、電力自給率は1000%にもなります。さらに、食糧自給率は生産額ベースで3500%ほどになります。
昨今、SDGsという持続可能な開発目標が提起されています。その17の項目の中には、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「住み続けられるまちづくり」などがあり、それらの今日的な課題に対して、わがマチはひとつの答えを持っていると自負しています。それは、これからマチづくりを進める上ではとても大事なことです。経済活動やエネルギーなどが潤沢にあるというのは、マチにとって大きな財産です。
そのような現状が評価され、SDGsの達成に向けて、優れた取り組みを行う企業や団体を表彰する第4回ジャパンSDGsアワードで、わがマチは「内閣官房長官賞」を受賞しました。
ジャパンSDGsアワード表彰式(首相官邸ホームページより)
林業はどうですか?
わがマチの約76%が森林ですし、SDGsの17の項目のなかには、「陸の豊かさを守ろう」ということで、森林の持続可能な管理も提起されていますので、林業も大切な基幹産業であることは言うまでもありません。
また、脱炭素の視点からいうと、わがマチの森林が1年間に吸収するCO2の量と、約5000人の町民が1年間に排出するCO2の量を比較すると、森林が約100年分のCO2を吸収してくれるという試算も出ています。
林業作業の様子
わがマチの林業は、製材も造林も造材も元気な企業が多く、今後の脱炭素社会を考えれば、さらなる成長が見込まれます。
林業は、早すぎた自由化の波によって大きな打撃を受けましたが、なんとかそこから脱することができました。森林には大きな資産価値があり、森林の荒廃を防ぐ対策も講じていこうと思っています。
昨年、道の駅もオープンしました。観光について教えてください。
観光には「DMO」という概念があります。デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーションの頭文字の略で、地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人をいいます。
わがマチのDMOは㈱karchという企業です。単体の店舗だけではなく、マチ全体を観光資源として見立て、観光商品を開発したり、発信したり、観光ツアーを組んだりと、従来の観光協会という任意団体を超えて、稼ぐという視点で活動しています。
昨年6月にオープンした道の駅やナイタイ高原牧場内のカフェなどの運営を行っていますが、道の駅にしても、単なる観光情報の提供だとか、トイレや駐車場があれば事足りるというわけではなく、稼ぐための商品開発を積極的に行っています。その結果、「じゃらん北海道道の駅ランキング2021」では、見事総合1位に選ばれました。
温泉もあり、熱気球もあり、ミシュランに掲載された寿司屋もあり、食も充実しています。また、7月には市街地に新たなホテルもオープンします。コロナ禍が収束し、たくさんの観光客が訪れることを待ち望んでいます。
大人気の道の駅かみしほろ
2021 / 5・6月号