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【ファーマーズドリーム】
「多くの子供たちに農業の楽しさや素晴らしさを体験してもらいたい」
レイクヒルファームを訪ねて

羊蹄山を望む雄大なロケーションと絶品のジェラートで有名なレークヒルファームを皆さんはご存知だろうか?洞爺湖町のなだらかな丘で酪農を営み、直営のショップとカフェはオンシーズンには行列ができるほどの人気店。
この春から新たなサービスの提供を始めると聞いて担当の塩野谷久子さんを訪ねてみた。
まきばのそら:https://makibanosora.jp/

牛と自然に囲まれた幼少期

札幌から中山峠を越え洞爺湖に向け走ると北海道洞爺湖サミットの会場にもなったウィンザーホテルが見えてくる。その麓に広がる丘陵地がレークヒルファームの牧草地だ。羊蹄山へとつながるなだらかな丘の風景は美瑛の丘にも引けを取らないほど素晴らしい。
この地にレークヒルファームが移転してきたのは今から54年前、三代目である現社長の塩野谷幸一さんが札幌五輪開催に向け高速道路の整備などが進む札幌市から移転を決断し今に至る。長女の久子さんは洞爺湖町で生まれ、自然と牛に囲まれておおらかに育つ。地元の学校を卒業後、当時酪農学園大学の短期大学として設置された北海道文理科短期大学に進学する。

 

酪農という家業〜結婚

短大卒業後は一般企業に就職するも、実家の酪農業は多忙を極め、父親に呼び戻された。そこからは酪農一筋の生活が始まる。酪農は第三者から見ると大変な仕事のように感じるかもしれないが久子さんは牛との生活が大好きだった。特に子牛が生まれる瞬間は格別だ。新たな生命の誕生は言葉では説明できない感動がある。そんな牛たちとの毎日の中で、搾乳したタンク一杯の牛乳を眺めるたびに、「あ〜、私頑張っているな」。と充実感を覚えることも多い。
20年前にご主人の孝二さんと結婚し4人の子供を授かった。子供たちも長男長女は成人を迎え子育ても一段落してきた中で、久子さんの心の中にふつふつと湧き上がる想いがあった。

 

塩野谷久子さん。トレーラーハウスの前で

 

ファームインで地域を守る

温泉街が有名な洞爺湖町には毎年たくさんの観光客が訪れるが、周りを見渡すと過疎化が進み、近所の農家さんも高齢者が多い。そんな農家さん達もいずれは若い頃と同じように働くことが出来ない時がやってくるはず。そうなる前に農業とは別の収入源を作っておくのは大切だ。後継者や新規就農者を増やすことはさらに重要。「何か私に出来ることはないだろうか?」久子さんの中にそんな想いが浮かび上がることが増えていた。
コロナ禍で全国的に郊外や田舎が見直されるようになってきた時、久子さんは思い付いた。「そうだ牧場の敷地内にトレーラーハウスを置いて、ファームイン事業を始めよう」。都会の子供たちがレークヒルファームのファームインに宿泊し、自然と農業を体験してもらうことで、将来農業をやってみたい、そして洞爺湖町で暮らしたいと考える若者が一人でも現れたらそれは地域にとっても未来の大きな財産となる。
そして洞爺湖のファームインが人気になれば他の農家さんにもファームイン事業を勧めることで新たな収入源となり一石二鳥の効果がある。そこからの行動は早かった。

 

牛たちをもっと近くで見て欲しい

早速トレーラーハウス1棟を購入し、昨年牧場の敷地内に設置。内装や備品は札幌のデザイナーにも協力を仰ぎ、牧場らしくそして心が弾むようなアイテムを取り揃えた。食事は屋外で楽しんでもらえるように食材とBBQコンロを提供。もちろん牧場のしぼりたての牛乳やチーズも味わうことができる。牧草地から見上げる広い空はまさに絶景、それにちなんで宿の名前は「まきばのそら」に決めた。
ここに泊まって、是非牛たちを近くで見てほしいと久子さんは言う。「きっと牛を好きになるから」と、溢れんばかりの笑顔が印象的だった。
(舩島 修)

塩野谷久子

洞爺湖町生まれ。

地元の学校を卒業後、北海道文理科短期大学に進学。

短大卒業後は一般企業に就職するも、実家の酪農業が多忙を極め、実家に戻り酪農一筋の生活が始まる。

敷地内にトレーラーハウスを置いて、宿の名前を「まきばのそら」とし、ファームイン事業も開始する。

2023_05_22 | 2023年 5・6月号 ファーマーズドリーム 連載 | , , , , ,