食の安全は食品に関わるあらゆる産業界に求められる必須条件。農業界でも農畜産物の安全基準ともいうべき「GAP認証」へ向けた動きは活発だ。今回の取材先は「ブロッコリー」と「きのこ」でJGAP認証を取得した農事組合法人萌育実生産組合(美瑛町・濱田洋一組合長)。記者は「株式会社ゆめ・きた・さぽーと」の大滝昇社労士(ASIAGAP指導員)と廣田陸奥夫税理士(同)とともに事業所のある美瑛町を訪ねた。
文/山田勝芳
従業員のこぼれる笑顔が労務環境の良さを物語る
約束の面会時間は夕刻に近い4時過ぎ。多少早目に到着したとき、きのこの選果場ではパック詰めの作業中だった。集荷されたきのこが手際よく手作業でパック詰めされていく。やがてその作業も終わり、作業場の清掃へ。これで女性たちの一日の仕事を終える。ここで働いていたのは、活発なインドネシアの若い女性たちだった。
作業は既に終わっていたのだが、記者の写真撮影の要請に笑顔で応じてくれた、それがこの写真。
今回の取材現場は美瑛町。美瑛町といえば今では“丘のまち、びえい”で、全国区の知名度を誇る。元来、農業にとって丘陵地帯は厄介者。トラクターが扱いづらく平坦地が少ない分農業者には敬遠されるのだが、このハンディを逆手にとって美瑛の農業は観光産業とマッチングが成功、今も大健闘を続けている。
濱田洋一組合長を中央に従業員として働いているインドネシア人のみなさん(きのこ選果場にて)。手前にあるのはパック詰めされたしいたけ。
畑より行程が多いきのこそれでもJGAPに挑戦
さて、今回の取材先は町内の4件の農家が一緒になって設立した「農事組合法人萌育実生産組合」(濱田洋一組合長)だ。札幌に本社がある農産物販売の「株式会社エプロン」にも出荷している。
本紙のGAPシリーズも今回で22回を数えるが、きのこでの認証取得は初めてのケースだ。
「畑より生産工程が多い分チェックポイントが多く、当組合以外では東川町の法人があるくらいでしょうか」と、濱田組合長。GAPへの挑戦は取引先から「取得した農産物は買う側にとって安心」と勧められ決断した。
決断したものの煩雑を極めた。普及センターの指導員から根気強く指導を受け、認証取得まで2年を要した。2021年2月、晴れてJGAP(青果物2016)認証を取得した。
濱田組合長は60歳中盤を少し超えたが、まだまだ現役だ。非農業分野で働いていた長男が帰ってきて、ただ今農業で修業中だ。「大事な仕事だから自分がやる」ではダメ、「大事な仕事だからこそやってもらう」。心配ながらも、父親のバトンを渡す覚悟がほんのり見えた気がする。
写真左に濱田洋一組合長、ASIAGAP指導員大滝昇、同・廣田陸奥夫による取材風景
2023_07_20 | 2023年 7・8月号 GAP認証農場を訪ねて ゆめさぽ イーハトーブ 連載 | GAP認証, 農業