本紙4~5頁に「食料の安全保障を語る」の対談記事がある。これは生産者と消費者の両団体トップによる対談。食料自給率38%と低い日本は加工食品の原材料費が高騰し、商品の店頭価格は〝毎月1日恒例〟のように一斉に値上げする。それを避けるため、月末は客でごった返し、月が替わると極端に客足が遠のく現象、それは庶民のささやかな生活防衛の術か。
値上げラッシュに追い打ちをかけるように、エネルギーの海外依存度も高く日本は長期にわたる円安傾向も影響してガソリン価格が高騰し、それに伴い輸送費高騰、トレーやレジ袋など石油由来の包装資材の製造費も上昇、電気料金(化石燃料火力発電)も上昇、加えて人件費アップも複合的に影響して、商品の店頭価格上昇に加担している。
消費者はもちろん食品会社にとっても、小売店にも、総じて頭痛のタネだ。
農畜物も同様で、店頭価格は高めのままだ。燃料費・輸送費・梱包費・人件費それぞれが上昇気味。酪農・畜産は飼料高騰も影響し、小売価格に反映される。農産物はウクライナの戦乱により肥料価格が上昇し、農産物全般に色濃く影響されている。もちろん、夏の猛暑の影響で変形・変質等で収量ダウンしたところもある。
海水温の変化(上昇気味)で、全国の漁獲分布図も変わった。北海道はブリ・フグの漁獲量は今では全国一だ。しかし、調理法がいまいちだ。
筆者は仕事柄スーパーの価格をよく観察しているが、これまでも一過性の価格上昇は度々あったが、一年以上のロングランにわたる価格上昇や高値止まりは初体験だ。
「欠食の時代が来る!」世界では8億2800万人が飢餓状態に置かれている(国連発表)。全人口の9・8%、およそ10人に1人が食に窮する状態だ。食料の分配も決して平等ではない。
翻って日本はどうか。昨今、生乳を廃棄させたり、コメ余りだからと減反を求めたり、目先の農政に追われる。飢餓地帯に食料を届ける国際貢献だってあるのだが。
日本の社会でも所得格差が増大、子どもに必要な栄養が十分に行き渡らない世帯も多い。さらに、海外依存度が増す日本は戦争や異常気象による混乱で輸入が減ったり途絶えたとき、富裕層でも食料品が買えない、まさに国民総じて欠食の時代が遠からずやって来る。
政府はこれまでおざなりにしてきた食料の安全保障を国民や産業界にも呼び掛けるようになった。しかし、食料安保は一朝一夕で国民の行動規範とはならない。スイスのように「農業に税金を使って自国農業を守る」権利と義務を憲法に明文化する国もある。日本もそうありたい。
(山田勝芳)