国には3つの安全保障がある。1つ目は防衛(軍備や外交、国連・2国間・多国間連携)の安保、2つ目はエネルギー(原油・天然ガス・石炭・原子力・太陽光など)の安保、3つ目は食料安保。日本は3点すべて完璧といえるものがない。防衛の自給(充足)率は数値では出せないが、エネルギーは13・4%、食料は37%と低い。
食料自給率200%超の優位性を生かす政策を
国家の3大安全保障のうち、北海道が最も取り組みやすい安保政策は「食料の安全保障」だ。食料自給率200%以上の、まさに日本の中の「食料王国」たる存在感を発揮しようと思えば可能だ。
因みに豪州は173%、カナダ168%、米国124%、フランス111%で、気候の大変動がない限り、他国は自国民の食料調達に窮することはない。各国とも過剰な分、農畜産物が重要な輸出品目だ。食料自給率37%の日本は当然、各国からの農畜産物の輸出攻勢をかけられてしまう。
北海道を国に見立てれば、世界一の食料自給率になる。北海道の自給率は200%以上といっても、人口は約520万人だから1千40万人分の食料でしかなく、日本全体を充足させる量はない。
国際紛争とそれによって引き起こされる資源不均衡で、原油や天然ガスなどの安定的確保に障害が発生する。国内は一気に供給不安が生じ、価格高騰になる。日本は日ごろから資源外交に重きを置くのは国民生活に直結するからだ。
異常気象による干ばつや強大化する台風、熱波や大寒波、大洪水、慢性的飢餓地域の存在など気候変動は予測不能で先を読みづらくしている。作物の収穫量に大きくかかわってくる。海外に大きく依存する穀物(小麦・大豆・トウモロコシ)は世界市況にもろに影響される。店頭価格の上昇は必至だ。
日本はいつ時代から独り立ちできない脆弱な国になってしまっている。
北海道条例で食料安保推進を掲げ全国に先駆けた先進的取り組みを
今日ほど国の安全保障が脅かされる時代はなかった。特に日本が位置する東アジア圏は中国の軍事力をバックにした強引な圧力外交が目立っている。
さて、3つの安全保障のうち北海道が本領発揮できるのは「食料安保」の分野だ。「食料備蓄基地」を展開することだ。
米・麦などの穀類の通常備蓄と、加工処理済み製品にしての備蓄。災害食として肉製品・乳製品の備蓄、これに自然水の宝庫である北海道の「飲用水」も備蓄する。国内、海外を問わず必要性が生じたら、国や国際機関がオール北海道で立ち上げた「食料備蓄センター」から必要物資を買い上げ、目的地へ届ける。稼働頻度は今日の状況から推し量ればフル回転のはず。安全・安心が担保された加工食品は日本とりわけ北海道にとり、打ってつけと考えるがどうか。
国内外に向けた食料備蓄センターを
自給率がほぼ100%の米が、ミニマムアクセスで相当量が輸入される。その一方で、生産者は減産を求められる。
乳製品も大量に輸入される中、生乳廃棄もあれば減産要請もある(因みに今年度は1%の増産計画)。チグハグな農政が日本政治の特質とさえなっている。翻弄されて、生産者は数年先を見据えた営農計画も立てられない。
豊作時や過剰流通なら備蓄センターに持ちより量的調整をすればよい。生乳廃棄も起こらなくなるし、生産者の不必要な杞憂はなくなるはずだ。
全国各地には大地震を想定した「防災用品備蓄倉庫」はたくさんある。国内外に向けた「食料備蓄センター」は未整備だ。道が条例を制定し、国より先んじて備蓄基地を整備したいもの。47都道府県で北海道こそ、生産量の多さや用地確保の面で他県を凌ぐ。
道産食料品が日本各地を、世界各国を食の面から緊急支援する、そんな議論ができたらいいと思うがどうか。
(山田勝芳)