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特集記事

2024_03_03 | 2024年 3・4月号 イーハトーブ 編集長のひとりごと | | 編集部イーハトーブ

【編集長のひとりごと】
「もったいない」の精神文化を蘇らせ 今、フードロス・ゼロに挑む

最近は規格外農産物でも普通にスーパーの売り場に並ぶようになった。モノの値段が軒並み上がり、「少しでも安いモノを」と、消費者は素直に求めるようになった。特に根菜類は猛暑が影響して形も歪でしかも収穫量も減少した。需要が高くても出回らない事態も。林檎好きの筆者は不便した、このつつましさよ。
値段が上がった理由も生産コスト(肥料代・梱包資材費・電気料金・燃料費・輸送費)が上昇したこと、猛暑で作物の劣化や収量が大きく影響したことが挙げられる。さらに、ロシアの戦争も影響した。戦争が日本農業に影を落としている、理由はいわずもがな。

 

冒頭上げたように、収穫量も減ったことも価格上昇の要因だ。だから、小ぶりなモノ、形が少し歪なモノでも価格を下げて売り場に並べられる。モノが溢れていたころは見向きもされなかった規格外の品々、今は立派にデンと自己主張している。これが今年も、来年も続いたら日本人の食はどうなるか。欠食時代が駆け足でやって来る。

 

近年「もったいない」を忘れた日本人も、今は普通に「もったいない」と感じるようになった。これぞ日本の良き精神文化なのだ。
戦中・戦後の物資不足の時代を経験した日本人はモノを最後まで使い切ることを教わり、それは「徳育」と呼ぶにふさわしかった。やがて経済成長を遂げ、モノが社会に溢れ簡単に廃棄する傾向が強くなる。使い捨てが美徳とさえ謳歌される時代だった。スクラップ&ビルドもその類だ。

 

廃棄社会はいつまでも続かない。今日の日本は世界の経済成長から取り残された。「貿易立国」や「競争力があった円」はもう昔話、従来型ではもう通用しないことを多くの日本人は漸く悟った。かつてのように日本は羨望の眼差しを向けられる国でもなくなった。成長するアジアの国々に水を空けられるという悲しい現実。「もったいないことをした」と後悔の念さえも持つ。それがわかっただけでも糧になる。気付き、反省するまで何と膨大な時間が経ったことか。

 

社会には食が充分行き当たらない人もいる。戦乱や作物の不作年が数年続くと国民全体が欠食する。如何せん、食料自給率が低すぎる。広範囲に国の食料安保を議論せねばなるまい。

筆者の年代、社会からお暇する人たちが多くなった。「昭和20年代の会」でも結成して気勢を上げたいものだ(ほぼ本気)。泉谷しげるの『春夏秋冬』の一節「人のためによかれと思い 西から東へかけずりまわる やっとみつけたやさしさは いともたやすくしなびた」ではダメなのだ。 (山田)

2024_03_03 | 2024年 3・4月号 イーハトーブ 編集長のひとりごと |