食の安全は食品に関わるあらゆる産業界に求められる必須条件。農業界でも農畜産物の安全基準ともいうべき「GAP認証」へ向けた動きは活発だ。今回の取材先は教育の一環としてJGAP認証を取得した北海道倶知安農業高校。記者は「株式会社ゆめ・きた・さぽーと」の大滝昇社労士(ASIAGAP指導員)と廣田陸奥夫税理士(同)とともに倶知安農高を訪ねた。
文/山田勝芳
すべての生徒・教諭でJGAPと向き合う
俱知安農高におけるGAPは、2019年に「農産物」で、2022年に「家畜・畜産物」で認証を受けた。認証農産物は〝馬鈴薯〟、家畜畜産物の認証は〝肉用牛〟で2つの認証を持つ道内農高は倶知安が初めてだ。
スタート年次は2019年だがこの時はASIAGAPで認証取得、その後JGAPに変更した。
道内農業高校ではすでに13校でGAP認証(GLOBAL・ASIA・J)を取得、教育の現場で先進的な実習が積み重ねられている。このように、GAPを身につけた生徒たちは将来の北海道農業にとって〝父を超える〟頼もしい存在になるはずだし、それは現場を指導する教諭たちの共通する願いでもある。
さて、倶知安農高では教諭も生徒もみな一緒にGAPの取り組みをしている。今回のGAP取材は五十嵐教諭を中心に生産科学科の生徒4名にも参加してもらい、将来の夢を座談会風に語ってもらった。
指導教諭 五十嵐 進 先生
参加したうちのひとりは卒業後すぐに実家で農業に従事すると語ってくれた(近藤君)。実家はすでにGAP農家だ。さらに、「みんなに農業ってやっぱりいいな」と思われる新しい農業を切り拓きたいと意欲満々に語っていた。
すぐに農業には入らない進学予定組が2名いた(気田君、四宮君)が、将来はそれぞれ実家で稲作、馬鈴薯を遣る予定だ。もちろん学校で学んだGAPも視野に入れている。4人の生徒のうち3人が実家が農業で、時間差はあるが3人とも将来は実家で農業を考えており、ほっとした。
もうひとりは非農家の生徒で東原君。卒業後は建設会社に就職予定だ。4名の生徒はみなきちっと自分の判断で進路決定しており、現代っ子ながら頼もしさを感じた。
羊蹄山を背に、向かって右から近藤夕希也君、四宮琉晟君、東原仁君、気田智春君。みな生産科の3年生だ。
農高産の酒米彗星で日本酒造りを学習
地元・倶知安町の酒造会社である『二世古酒造』とコラボし、日本酒造りにチャレンジ。テレビニュースにもなり、「高校生の酒造り」と話題になった。もちろん、酒は二十歳を過ぎてからだ。
学校の水田で酒米好適種「彗星」を栽培し、それを使用した瓶詰の純米吟醸酒「忠(なかごころ)」は、札幌国税局新種鑑評会で2年連続金賞を受賞した。瓶に貼られたラベルには「倶知安農業高等学校」の校名が印字されている。
「彗星」の生産から醸造まで生徒が携わり、農高生の想いがぎっしり詰まった日本酒だ。もちろん使用される水は羊蹄山の麓から湧き出た天然水。どうぞ、お試しあれ。
2022_10_27 | 11・12月号 2022年 GAP認証農場を訪ねて ゆめさぽ イーハトーブ スマート農業 連載 |