「かわにしの丘しずお農場」
「かわにしの丘しずお農場株式会社」は、ビートを主とした畑作・めん羊畜産業・生産した羊肉を扱う飲食事業を展開してきた。
農場がある「かわにしの丘」は、広大な丘陵地に羊が放牧され、牧歌的な風景が広がり、夜には「天然のプラネタリウム」と呼ばれるほど美しい星空を望むことができる最高の立地となっている。この場所に令和２年にキャンプ場がオープンし、今では、北海道のキャンパーならば誰もが知っていると言っても過言ではないほどに成長。今回は農業生産者である山下社長が進めてきたキャンプ場づくりとその魅力に迫る。
コロナ禍を乗り切る新事業
この素晴らしい立地に偶然にも一部整備された土地があり、山下社長はかねてより、「この土地を利用し事業を」と考えていた。親交があったキャンピングレンタカーサービス事業を営むウレシカの山岡大介氏へ相談。立地の素晴らしさから「キャンプ場が良いのでは」というアドバイスを受け、このプロジェクトを進めることとなった。アウトドアコーディネーター・カヌーガイドとして活躍するフィールドオブドリームス億貞拓磨氏も加わり、キャンプ場オープンに向け準備を進めた。令和２年雪解けと同時にオープンという所で新型コロナウィルスの感染が拡大。オープンはその年の５月16日となった。
コロナ渦で外食産業がダメージを受ける中、当社においても羊肉の卸がストップ。ビートの生産も縮小を余儀なくされ、経営は苦しくなった。しかしそれを救ったのが、この新事業となる。オープンから１ヶ月後には満員に。三密を避けて楽しむことが可能なアウトドア事業への参入が、後押しとなり農業部門でのマイナスをカバーした。
焚き火キャンプ場士別ペコラの魅力
収益を上げていけるよう来場者に満足してもらうには、サービスをしっかりと整えることが必須だ。キャンプ場で得た収益の中で、地元の方から譲ってもらった廃材や、グループ会社であるしずお建設の事業で余ったプレハブなどを活用し、仲間たちと手づくりで施設の増設、整備を進めた。「色んな人々の協力があった」と山下社長は振り返る。そういった温かさが宿る設えもここの魅力の一つなのであろう。
少しずつサイトを増設し、現在60サイトを有するが、中でも林を切り抜いて造った、木々に抱かれるプライベートサイトは予約が殺到する。また、場内には焚き火サークルがあり、満点の星の下、焚き火の火を見つめながら、贅沢な夜を過ごすこともできる。更に手づくりのカフェでは、よく冷えたクラフトビールを、バーベキューハウスやレストラン、売店ではしずお農場自慢の羊肉や採れたて野菜を扱っている。豊かな自然が育んだ「食材」をその場で堪能できるのも醍醐味の一つだ。
しずお農場の羊肉は、人の手で丁寧に飼育され、その味は格別。全日空ファーストクラスの機内食や、横浜APEC晩餐会で使用された実績をもつ。キャンプ場利用者には、是非この羊肉を大自然の中で味わってもらいたい。
また、今後注目なのが、８月にオープンしたプライベートサウナだ。冬も営業予定で、サウナ発祥の地フィンランドのように、寒さが厳しい士別の地域性を活かした冬キャンプの楽しみの一つとなることだろう。
農業生産者として
キャンプ場の運営は順調に成果を上げており、今では同業者が視察に訪れることもある。今後は相乗効果で、農業生産者として「羊肉」の美味しさを広く伝えていきながら、士別市の特産であるサフォークめん羊事業を盛り上げたい。今年はこの好調な波に乗り、サフォークジンギスカン専門店「士別成吉思汗本店」をキャンプ場内にオープンした。
良い時ばかりでは無いが、仲間と共に試行錯誤しながら道を切り拓いてきた。キャンプ場と共に士別市を今後も盛り上げ続けてくれることだろう。
（廣田 陸奥夫）
2023_09_13 | ゆめさぽ イーハトーブ 農業者の新事業展開 連載 | スマート農業, 体験, 楽しむ, 自然, 食べる
