林野庁の「緑の雇用事業」の窓口となっている(一社)北海道造林協会の北海道森林整備担い手支援センターは、ガイダンス開催や研修会の実施をはじめ、林業に就業を希望する人たちのため、さまざまな活動を行っている団体です。その活動内容や林業の担い手の現状について紹介します。
高齢化高い林業を支援
人口減少と高齢化が進む中、林業は他の産業よりも高齢化していたことから、平成の初めには、高齢化指数(50歳以上の比率)が68%と全産業の倍以上となっていました。これの抜本的な対策として法律が講じられ、それに基づいて北海道知事が指定した組織が同センターです。
対策のポイントとしては、新しく林業に参入する担い手を作っていくもので、その中心となる「緑の雇用事業」は、林野庁が2003年から開始した事業で、林業の新規就業者を増やし、その就労環境を整備し、研修などを通じてキャリアアップ支援を行う事業です。
これを使って3年間、OJT(実地研修)や専門知識などの集合研修で林業作業士(フォレストワーカー)の資格を取得し、林業の担い手となる優秀な人材を育てていく形になっています。
林業作業を実際に体験
多彩な研修と受入体制
同センターでは、就業希望者からの相談の電話やメールへの対応のほか、就業前に林業の知識や技術を身につける研修なども行っています。
文字通り森林作業の基礎的な知識や技術を習得する林業就業支援講習には、森林作業に関する講義と作業現場などの視察を行う「5日間コース」と、講義のほかチェーンソーなどの資格取得、林業作業を実際に体験する「20日間コース」等があります。
座学による基礎講習も行う
そして「森林(もり)の仕事」ガイダンスという、林業就業希望者を対象とした説明・相談会を、札幌や東京で開催しています。ここでは森林・林業に関心を持つ人を対象に、参加者からの相談に対応します。また、マッチング支援事業として、その希望者を対象に、林業の現場訪問、見学会を実施しています。
「緑の雇用事業」には本格就業前に適性を判断する3ヵ月程度のトライアル雇用のほか、3年間、OJT研修と集合研修により、12の資格を取得するフォレストワーカー研修、就業5年以上を経過しキャリアアップのため、ワーカーの指導者となるフォレストリーダー研修、経営や統括管理業務を担当する10年以上の経験がある人のためのフォレストマネージャー研修などがあります。
チェーンソーの安全教育
より高度で安全な林業へ
林業担い手研修では、基礎講座として、安全な作業の推進や林業への定着を図るため、植栽や下刈りなどの造林作業に必要な知識や実践的な技術の習得を行うための研修が行われます。
キャリア形成講座として、林業機械の実践的な技術習得を目的とした研修、そしてより高性能な林業機会の能力を十分に活用するため、機械操作・メンテナンス・路網作成実習などに関する専門的な研修も行います。
刈払機での下刈り作業
チェーンソーによる伐木技術研修では、大きな直径の木を伐採するのに高度な技術を必要とするため、労働災害防止の観点からも安全で効率的な伐倒技術を習得するワークショップも開催しています。また、裂けやすい木や傾斜木などの高度なテクニックを必要とする伐木技術研修もあります。
他に、効率的で安全な現場作業を主導できる現場管理責任者の育成も行っています。
現場管理研修として、森林整備を行うために必要な林業関係法令のほか、ICT技術やドローン技術など、新しい技術が習得できます。また、就業後、概ね5~7年程度で林業現場の管理班長もしくは班長候補となっている職員を対象に、効率的で安全な現場作業を主導することができる現場管理責任者を育成するため、現場の安全衛生管理や人員管理などの実践的な知識や技術を習得する研修もあります。