GAPって何だろう?食の安全は食品に関わるあらゆる産業界に求められる必須条件。農業界でも今、農産物の安全基準というべき「GAP認証」へ向けた動きがみられる。今回は全国の農業高校の中でも早い取得となった岩見沢農業高校の取材を敢行した。『ゆめ・きた・さぽーと』の大滝昇社労士、廣田陸奥夫税理士(ともにJGAP指導員)は岩見沢農高(畠山佳幸校長)の担当教諭に話を聞いた。
百年以上の歴史を刻む「北海道岩見沢農業高校」は略して岩農(がんのう)と呼ばれ、市民に親しまれている高校だ。ここに7学科約800人の生徒が在籍する。また、道内の職業学科校では初となるスーパーサイエンスハイスクールの指定校でもある。農家の三代目、四代目と目される後継者たちも多数学業に勤しんでいる。
今回の取材は農業科学科(生徒数1学年40名、3学年計120名)の生徒たちが学ぶ実習農場だ。「グローバルGAP」は松田直也教諭(農場長)、石田康幸教諭の指導の下、2017年11月に9品目で認証取得した(昨年の更新では10品目)。因みに9品目は同時取得としては国内最多、岩農のGAPに対する積極性の表れだ。それ以前から有機栽培や特別栽培に力を入れていた分、好結果が出たのかも知れない。では、なぜGAP認証を目指したのだろうか? 2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催される。選手村、キャンプ地で使われる食材は国際的な安全基準を満たしたものを採用するといわれている。そこで「グローバルGAP」認証を取得して「岩農」産を使って貰おうと考えた。
松田 直也教諭(右)と石田 康幸教諭(左)
目標ができると、生徒たちも以前にも増して真剣に取り組むようになった。松田教諭の弁によれば「生徒たちは百倍、変わった。それ以前と全然違う」。雑然としていた農具や肥料・農薬類がきれいに整理整頓され、どこに何があるか、誰でもわかる体制になった。栽培や施肥量の記録、作業管理など手順に従って記録を取るようになった。このように生徒たちは見違えるように変わった。
グローバルGAPの推進役となった松田教諭は当時を振り返り、「最初はGAPについて何も知らず手探り状態でした(笑)。一年目はみんなの力を借りてやってきました。ニ年目に入り、課題が少し見えてきました」と語る。
「これからの農業経営者は消費者が求める安全・安心を目指さなくてはいけない。それには第三者から認証を受けて安全・安心を証明してもらう必要があります。生徒にも今から労働管理、安全管理、環境管理の重要性に目を向けさせたい。将来農業の道に入ったとき、例えほかの道に入ってもきっと役に立つと思いますね」と語る。
石田教諭は岩農に着任する前は「アジアGAP」で授業を教えていた。「この一年、解釈の違いで正直非常に迷いましたね」と述懐する。それでも「グローバルGAP」と「アジアGAP」の違いはあっても、GAPの有用性は揺るぎない。「ベテラン農家は経験や勘で農業をやっています。GAPをやることは根拠が伴うから、農業はむしろ誰でもやり易くなると思います」と語る。さらに、「いろいろな農業の手法を生徒に教えることは将来に向けて選択肢が広がり有益だと思いますね」。
GAPに熱心な先生とそれを真剣に学ぶ生徒たちによって、岩見沢農高にちょっとした変革が起こっている。
2019_03_02 | 2019年 3・4月号 GAP認証農場を訪ねて イーハトーブ 連載 | GAP認証, ゆめさぽ, 教育, 歴史, 農業