今回ご登場いただくのは、JA天塩町青年部の杉本充さん。牧場の跡取りに生まれたものの、酪農大学の実習を受けるまで一度も牛に触ったことがなかったという杉本さんに、搾乳ロボットによる省力化や、牧場経営の面白さなどについてお話を聞きました。
ゼロから酪農の世界へ
杉本さんは当初、家業の酪農を継ごうとは考えていなかったそうです。
高校を卒業後は、PC関係の専門学校に行こうかと迷っていたそうですが、そんなとき、父親から「大学に行ってから進路を決めたほうがいい」と言われ、「よく考えてみると、コンピューター関連の仕事はそれほどやりたい方向ではなかったようで、それもそうかなと思ってしまったんですね。何か父の思うつぼにはまったみたいです」と笑って話してくれました。
もともと外で元気に遊ぶタイプの子どもだったそうですが、何となく牛舎は怖くて近寄らなかったため、酪農の仕事を手伝う機会もなく、実家で初めて牛に触ったのが酪農学園大学2年目の夏休み。それまで牛の乳首は8つだと思い込んでいたそうです(本当は4つ)。
杉本充さんと奥さんの知恵美さん、長男の陽紀(はるき)くん
搾乳ロボットでは対応できない面も
牧場経営を委譲されたのは2014年。杉本さん夫婦と両親との4人で作業しており、2016年にロボット牛舎を建て、畜産クラスター事業で搾乳ロボットを導入し、省力化しました。
「つなぎ飼いは膝や腰に負担がかかるし、省力化で子どもと過ごす時間も確保したかったんです。常に100で仕事するのではなく、7~8割で数をこなすほうが肉体的にも精神的にも疲労が少なく、効率もいいはずです」
現在の搾乳はロボット60頭、つなぎ20頭の割合。搾乳作業には群れとしての上下関係や、脚を傷めた個体の搾乳など、どうしてもロボットでは対応しにくい面があり、当分はこの配分で進めながら、作業体系を考えていきたいそうです。
「酪農という仕事は、ロボット化と経費との差引ラインをどこに設定するかなど、経営のやり方を考えるのが面白いのと、自分でタイムスケジュールを作れるのがいいところだと思います」
搾乳ロボットに自分から入っていく乳牛たち
プロフィール
33歳。飼養頭数160頭。経産牛80頭。年間出荷乳量約700t。耕地面140 ha。