本紙が例年7月号で特集している「紙上めん羊まつり」は、北海道農業最大の功労者・米国人エドウィン・ダンが1873年7月9日、100頭のめん羊を連れて来日したことを記念して始めた企画です。明治初期、北海道農業に遺したダンの功績はあまりにも大きく多岐にわたり、その一つがジンギスカン食文化にもつながっています。
エドウィン・ダンは明治9年、札幌西部に約300頭を収容できる牧羊場を開き、めん羊の飼育を開始。真駒内には牧牛場を建設し、乳用牛や種馬、豚の飼育管理を指導し、品種改良にも力を尽くしました。
その他にも、ハムやバターの加工製造の指導、麦や馬鈴薯などの新品種の播種、土管による排水の重要性を指摘、新冠に牧馬場を整備して日高地方が馬産地の地位を確立する礎を作るなど、枚挙に暇がありません。
また、家畜用水として、真駒内川水源から全長約4㎞にも及ぶ用水路も建設しました。ダンが去った後、米の生産拡大のため灌漑用水として使われ、現在は真駒内地区の親水エリアとして、住民憩いの場となっています。
一方、昭和30年代には約100万頭に達した道内のめん羊飼育は、現在では約2万頭まで激減、羊肉需要の99%が輸入品で占められています。
2016年、味付きジンギスカンを道民のソウルフードにまで高めた㈱マツオは、同社発祥の地であり、かつて種羊場が建設された滝川市において、本格的な滝川産サフォーク羊の飼育を始めました。同社の「松尾めん羊牧場」では今年、新たに120頭の仔羊が生まれ、成羊と合わせて240頭が飼育されています。出産率、生存率ともに昨年を上回る順調な成果を上げていて、目標の出荷基準1千頭を目指し、現在、第2牧場などの計画も進めています。
(伊藤)