1985年に創業したカサシマ工務舎(笠島守社長)は、今年で35周年を迎えました。
道産材にこだわった注文住宅事業を柱に、これまで数多くの住宅を供給、その住み良さから親子2代にわたる建て主も珍しくはありません。
道産カラマツを活かした家づくり
同社の建材は、十勝産のカラマツを使用しています。かつて、北海道には炭鉱のトンネルの崩れを防ぐため、部材用として成長が早く強度のあるカラマツが大量に植林されました。しかし、石炭から石油へのエネルギー転換と共に需要がなくなり、使い道がなくなりました。
「北海道で育った優れた樹木を、家づくりに活かしたい」(笠島社長)
そのような社長の思いからカラマツを建材として積極的に取り入れることになりました。
しかし、カラマツは建材として使用するのに難点を抱えていました。それは木の内部に含まれる多量の水分です。特に、北海道では冬に暖房を使うため、建造後に木が乾くことによってねじれや割れを引き起こしていました。
その難点を克服したのが、同社独自の乾燥技術です。建造前に、約3週間という時間をかけ芯から水分を抜くことで、カラマツは家づくりに適した木へと変貌を遂げました。
同社では、強さと粘りを兼ね備えた含水率13%の「ドリームラーチ」を採用。大工と製材所が、共に時間をかけて練りあげてきた細かなこだわりが、“木と構造が見える家づくり”に活きています。
美しい真壁(しんかべ)が建ちの良さを決める
真壁とは住宅用語で、壁を柱と柱の間におさめ、柱を外に見せた壁をいい、美しい真壁が建ちの良さを決めます。
現在、建築メーカーの多くがコンピューターによって建材の墨付け(採寸)・切り込み(カット)を行う「プレカット」という手法を採用しています。自動制御のプレカットは間違いなく、効率的な手法であることは確かですが、木は一本いっぽんに癖があり、まっすぐに見える建材もわずかに湾曲しています。このごくわずかなレベルの曲がりでも、出来上がった時には歪みとなって現れます。特に、同社の特徴でもある真壁の家づくりでは、構造を室内に露出させるためミスは許されません。
コンピューターにお任せするのではなく、人の目で徹底的に見定める。木がもつわずかな曲がりを活かし、その反り具合に合わせて注意深く柱の配置図を決定します。
人に優しい塗料を
一方、同社では屋内の建具に人工塗料を用いていません。人体に有害なホルムアルデヒドを含むものや、匂いの強いシンナー系の塗料ではなく、ベンガラや柿渋という日本古来の塗料を使って彩色を行っています。
ベンガラは北陸地方の金沢や京都の伝統的な家屋に多く採用される顔料で、古くは縄文土器にも使われてきた素材です。柿をベースに生まれる柿渋は、塗布後、皮膜によって硬くなり、防水・防虫・補強効果を持つのが特徴です。
「番屋の家」「木組みの家」が大人気!
明治、大正、昭和初期。ニシン漁が盛んだった北海道の日本海沿岸で財を成した網元たちが、競って造った大規模な木造建築物、それが鰊番屋です。中央には作業場を兼ねた土間があり、半分は大勢のヤン衆が寝泊まりし、もう半分は親方である網元が、ひとつ屋根の下、共同で暮らしていました。その番屋をモチーフに、職人の技が随所に活きた本物志向に応える住まいが「番屋の家」シリーズです。
一方、「木組みの家」は同社の原点で、北海道の気候・風土にあった道産材で建てる地産地消の家づくりです。木と向かい合った職人の手仕事による表しの天井に、造作の建具。そのひとつひとつに、熟練の技と心意気が伝わってきます。
木組みの家
番屋の家
寂しくない家、自然を活かしそっと人に寄りそう家を
「職人さんの手仕事が活きた家は、何年経っても語りかけてくるような温もりがあるから不思議です。木を育てた人、製材した人、そして、それを運ぶ、造る、建てる人。当社は関わる人の顔が見える家づくりを大切にします。また、真壁工法に、表しの梁、大黒柱や太鼓梁。構造を見せる家にこだわるのも、暮らす人に寂しさを感じてほしくないからです。北海道の厳しい自然で育った木と手仕事がその家族にとって特別になることを願って造ります」(笠島社長)
同社はこれからも道産材にこだわった、人にも、自分にもやさしくなれる木の家を造り続けていきます。
●カサシマ工務舎
札幌市東区中沼西1条2丁目2‐5
TEL: 011・792・4388