1992年に制定された11月11日の「チーズの日」にちなみ、北海道牛乳普及協会とホクレン農業協同組合連合会の主催による「道産ナチュラルチーズセミナー2022」が11月3日に札幌グランドホテルで開催された。
開催の挨拶で、ホクレン農業協同組合連合会代表理事副会長で、別海町の酪農家である西川寛稔(ひろとし)北海道牛乳普及協会会長から、「北海道は日本の約半分以上の生乳生産量を誇り、チーズの分野でも日本をリードし、それぞれの地域の農場の特性を生かした素晴らしい商品を開発し、北海道ならではのチーズが数多く作られ、今や国際的なチーズのコンクールにおいても多数の賞を獲得するほど世界的にもその実績が認められています。本日のセミナーを通じて、より多くの方に酪農王国・北海道で着実に発展を続けている道産ナチュラルチーズのファンになっていただきたい」との思いが語られた。
主催者を代表して開会のあいさつをする西川寛稔(ひろとし)北海道牛乳普及協会会長
高校生が地元特産品を使い新たな食文化を発信
セミナー第一部は、岩見沢農業高等学校食品科学科の牛乳・乳製品製造専攻班の3年生3人から、2022年度の活動テーマである「空知ワインを使った製品を身近なものに~世界に羽ばたく空知ワインと乳製品の可能性~」に関する研究と活動内容が発表された。同校では、生産地として全国的に知名度が高まっている空知ワインを地域の新たな特産品・食文化として広めていきたいと、ワインを活用したチーズやヨーグルトなど乳製品の研究・開発に取り組み、21年のALL・JAPANナチュラルチーズコンテストで同校が製造する「フィバスの瞳」が優秀賞を受賞。それを受けて22年にはアメリカやイギリス・ウェールズで行われた世界大会にも出品。22年のJAPANチーズアワードでは同校製造の「チェダーチーズ」が銅賞を受賞。
同校が製造する4種類全てがJAPANチーズアワードでの受賞を果たすことになった。
また、新たな取り組みとして、市内ワイナリー・KONDOヴィンヤードから提供された、ぶどうの搾りかすを使ったチーズ作りやアイスクリームの新しいフレーバーへの活用、空知ワインを添加した発酵乳の開発。コロナ禍にあって、より多くの人に有効な情報が発信できるようインスタグラムを開設。全国の研究者や高校生とのオンラインによる意見交換などの取り組みも紹介された。「今後とも、地域に寄り添った活動に取り組み、空知から道内のみならず、全国、そして世界へ、地域資源を活用した文化の発信をしていきたい」との思いが語られた。
岩見沢農業高校生徒による研究発表の様子
地形と水質に適したチーズ作りで世界に挑戦
第二部は、共働学舎新得農場代表の宮嶋望氏による「日本の環境を活かしたチーズづくり」と題した講演が行われた。宮嶋氏は酪農家工房の先駆けとして道産ナチュラルチーズの発展期を支えてきた一人で、日本で初めて生産者としてシュバリエ(チーズ鑑定士)の称号をフランスから授与され、2016年にはメートル・フロマージュ(チーズ熟成士最高位)の称号を授与されるなど、現在も全国各地でチーズ文化の理解と醸成活動に取り組んでいる。
講演では、共働学舎が目指している新しい社会づくりと、そのために行ってきた具体的な取り組みをはじめ、現代社会において発達してきた鉄と電気という文化がもたらす生活様式が、人間の身体が健康であることに対して実はマイナスであり、健康を維持するために必要なものが実は乳酸発酵食品であるということ。地域の環境がチーズの味に直接つながり、日本の朝日と夕日がしっかりと当たる地形、さらに微生物の発酵を促進する軟水という水質など、中でも北海道はこれらの条件に恵まれていて、チーズ工房のある地形と水質に適したチーズ作りを行っていくことで、初めて世界に通用するチーズ製造ができるといったことなど、長年の経験と知識に裏付けられた、さまざまな興味深い話が語られた。
今年もチーズへの熱い思いを語ってくれた共働学舎新得農場代表の宮嶋望氏
簡単チーズ料理に参加者はご満悦
その後、札幌グランドホテル総料理長の伊藤博之氏によるチーズ料理の実演と試食、道産ナチュラルチーズの試食も行われ、参加者はおいしいひと時を満喫していた。試食料理のレシピは北海道牛乳普及協会ホームページ(https://www.milk-genki.jp/)のイベントレポートで紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
試食として提供された4種類の道産ナチュラルチーズ※バゲットから反時計回りに、ニセコチーズ工房「雪花ドライフルーツ」、白糠酪恵舎「モッツアレッラ」、
新札幌乳業「小林牧場物語手づくりブルーチーズ」、岩見沢農業高等学校「フィバスの瞳」