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特集記事

2023_07_20 | 2023年 7・8月号 北海道の林業・木材産業の今 連載 | , , | 編集部イーハトーブ

北海道の林業・木材産業の今②
上川管内の林業・木材産業

北海道の森林面積は554万㌶あり、総面積の71%を森林が占めています。日本全体でみれば22%を占め、全国で一番の森林面積を誇り、林業・木材産業がマチの基幹産業として発展してきました。今回は上川管内の林業・木材産業を特集します。北海道上川総合振興局林務課の小林嗣明さんに管内の特徴を聞き、代表する企業や団体を紹介します。

管内の森林の現状

―管内の林業・木材産業の特徴を教えてください。

小林

管内の森林面積は約80万㌶で、管内総面積の約76%を占めており、全道の森林面積の約14・6%です。
内訳は国有林が57・5%、道有林が14・6%、一般民有林が27・5%となっています。管内の一般民有林を林種別・樹種別にみると、天然林はナラ、カンバ、イタヤなどの広葉樹が多く、人工林はカラマツ、トドマツなどの針葉樹が多くなっています。
管内には13の森林組合があり、それぞれの地域の森林で植林、下草刈り、除間伐などの山づくりや木材の生産販売などの事業を実施しています。また、製材、合単板、集成材などの加工場が約70社にのぼり、全道有数の生産拠点になっています。さらに、公共施設などに木質バイオマスボイラーを導入し、エネルギーの地産地消を進める取り組みが拡大しているほか、上川産森林認証材の利用促進に向けた取り組みも進めています。
一方、管内のきのこの生産量は全道の35%を占めています。中でも、「なめこ」や「えのきだけ」については、管内産が90%以上を占め、全道一の生産量となっています。

 

北海道上川総合振興局 産業振興部林務課 小林 嗣明 さん

 

林業や木材産業従事者の現状

―林業や木材産業の従事者の現状を教えてください。

小林

管内の常用林業従事者数は、令和3年度の調査で556名、60歳以上の高齢者の割合が約27%と高齢化率が高い状況で、若年層の新規就業が課題となっています。担い手確保に向け、林業の仕事の紹介など、普及やPR活動を行っています。
また、管内には旭川農業高校の森林科学科があることから、ドローンを使った森林測量の実習や北の森づくり専門学院で模擬授業を受講する「林業学習会」や、企業ガイダンスを行う「山の仕事説明会」・「林業・木材セミナー」を開催し、生徒たちに林業への関心や理解を深め、林業に就職してくれる人が増えるような取り組みを行っています。さらに、管内の林業事業体の若手職員で構成した「上川林業ワカモノ会議」での研修会も開催しています。

 

林業・木材産業のシンボルとしての旭川駅

―管内の交通の要衝である旭川駅は、木をふんだんに使い、林業・木材産業が盛んな管内を象徴していますね。

小林

現旭川駅は第4代目駅舎で、平成23年に開業しました。大雪山の麓に多くの川が流れる「川のまち旭川」、豊かな森林と家具づくりの盛んな「木のまち旭川」イメージしたデザインになっています。
駅舎の内壁や天井に、木目が美しい道産ヤチダモの内装材をふんだんに使用。巨大な木質空間が駅舎内だけでなく、全面ガラスのカーテンウォールを通して駅外にも木の良さを伝えています。
また、改札内側の壁面のヤチダモ材には、「旭川駅の名前を刻むプロジェクト」に全国から応募・協賛した1万人の名前がレーザー加工により印字されています。さらに、駅舎から列車ホームに上がるエスカレーターと風除室には、道産ヤチダモの木製ルーバーが取り付けられ、鉄骨とガラスで覆われたホームの雰囲気を和らげています。そして、コンコースや待合室には、道産カラマツ材を用いたベンチやデザイン性の高い旭川家具を設置しています。

 

旭川駅舎改札内側の壁面には道産ヤチダモ材を使用

 

下川町が先進地といわれる理由

―管内でも林業や木材産業の先進地である下川町の取り組みを教えてください。

小林

下川町は全町面積が64420㌶で、その約90%が森林です。森林面積のうち国有林が約85%の48540㌶、民有林が8389㌶の森林に囲まれ、そして森林・林業とともに歩んできた町です。
下川町では積極的に国有林を取得し、町有林として町が経営を行ってきました。それにより町内で完結する持続可能な林業経営を実践しています。
毎年、40~50㌶の町有林を伐林・造林することにより、森林組合の育成強化につながっています。事実、平成元年以降のUターン、Iターン者18名が森林組合に就職し、森林管理の仕事についています。また、森林整備のコストを下げる面からも、路網整備は重要で、林道・作業路の開設・改良が、地元建設業界に与える経済効果も高い。さらに、法律により、国有林が木材生産重視から公益的機能重視に改められたため、林産業界は収穫量が大幅に減少し、従来以上の原料確保が難しくなりました。しかし、町有林の経営面積を拡大することにより、地元林産業界へ原材料を町有林から安定的に供給を図っています。
それでも、厳しい現状ではありますが、厳しいときほど基盤を大切にし、地道で長期的な取り組みが必要であると思っています。

 

―今日はお忙しい中ありがとうございました。

 

●北海道上川総合振興局産業振興部林務課

TEL:0166・46・5951

2023_07_20 | 2023年 7・8月号 北海道の林業・木材産業の今 連載 | , ,